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癒しの島・沖縄の深層

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おかどめ やすのり 1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。HP「ポスト・噂の真相」

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オカドメノート No.058

「嘉手納・アメリカ・フェスト」に行って考えた

 いうまでもなく、沖縄には極東最大の米軍基地が占拠している。その象徴が嘉手納基地である。沖縄市、北谷町、嘉手納町にまたがって建設された嘉手納基地の広大さは、実際に基地の中に入ってみるとよく分かる。この7月4日はアメリカの独立記念日でもあり、年に一度だけ基地の一部が公開される日でもあった。01年の米国同時多発テロ以降、治安上の理由で一時中止されたこともあり、それ以降としては3回目だった。題して、「嘉手納・アメリカ・フェスト」。数ある基地のゲートのうち、二箇所から自由に基地内に入れるのだ。身分証明書の提示もなしだった。ただし、広大な基地の一角につくられたフェスタの会場入り口だけは、米兵が金属探知機を持って身体、持ち物検査を行なっていた。  そこをクリアーして中に入ると、15、16機くらいの軍用機が展示されていた。会場で最初に目に付いたのが、米軍の最新ステルス戦闘機F22だった。敵のレーダーをかいくぐる、超音速巡航飛行が可能という性能が注目され、日本の自衛隊も次期主力戦闘機として購入したいという強い希望を持って米国と交渉している機種だ。しかし、今のところ「F22は生産中止する予定なので、売る事はできない。どうしても欲しければF35ではどうか」というのが米国のゲーツ国防長官の回答だ。F35は米、英、豪、加,伊,蘭などが共同開発をすすめる次世代戦闘機だ。空前の経済危機を抱えた米国もオバマ大統領が軍事費削減を打ち出しており、その方針に基づいて「F22」にはこれ以上の開発費を投入するわけには行かないというわけだ。現在、米軍が保有するF22は187機といわれ、輸出用の仕様にすればさらに特別な改造や開発のための費用が必要なためだという。それでも、米国議会の一部には日本への輸出を行うべきという主張もある。まだ流動的ではあるが。

 そこには、米軍としても最高の軍事技術が海外に流失することを防ぐという軍事的意味あいも大きいのだろう。一機あたり、本体価格だけで140億円、内装備関係を加えると187億円になるという。このF22は敵方の機体が見えない50キロ以上の距離で空中戦をやれば圧倒的に強い戦闘機だとされる。これが日本の自衛隊に導入されれば、韓国や中国にたいしても多大の影響力を与え、軍事バランスを崩す可能性も出てくる。日本に売れば、当然のようにイスラエルも要求すると思われ、中東地域の軍事バランスにも影響が出るはずだ。そのせいもあって米国は日本の自衛隊に対してもF22に関しては特別な機密扱いにしている。仮に、米国がこのF22を日本に輸出するとすれば、一機あたり270億円以上になるという見方もあり、商売としては十分に旨みがあるはずだ。逆に、このF22の生産が打ちきりになれば、米国内で7万人の失業者が出るという試算もあり、それだけのリスクがあっても生産中止するというのは、核廃絶をぶち上げたオバマ大統領なりの見識だと思いたいところだが、それとは違う思惑もあるのではないかという見方もある。

 F22に関しては、売却するならば、すべて米国側がメンテナンスも含めてやりたいとの意向があり、その条件が日本側と折り合わなかったというものだ。もし修理や改造を日本の軍需産業である三菱重工あたりにやらせれば、機密漏洩から独自の改造まで進められる可能性があるという危惧のためだ。かつて、米国が最新鋭の機密性の高いイージス艦を日本に売却した時、自衛隊は米国のものよりはるかに進化した使い勝手のある改造を施したという話もある。戦艦本体というよりも搭載するソフト部分で改良を重ねたというのだ。米国もその辺の事情をわかっているのだろう。さらにいえば、軍事技術は絶えず進化して行く習性を持つ。いずれは無人のステルス戦闘機の開発という局面も出てくるだろう。そうなれば、F22には飛行時間が比較的短いために、事故・故障が多いという欠点もあって、いずれは時代遅れの戦闘機になる可能性を米側も考慮しているのかもしれない。

 話が機密性の高いF22に集中してしまったが、「嘉手納・アメリカ・フェト」の会場にはF15、F16、KC-135R、E-3AWACS、HH-60などの空中空輸機、輸送機なども展示されていた。F22以外の戦闘機には一般人も自由にコックピットに入れたし、機内散策もできた。大型空輸機にはさすがに、軍人たちの汗の臭いや、戦闘をかいくぐってきただろうイメージが染み付いているように感じた。今回のイベントは、米軍が沖縄の人々に感謝し、基地に対して理解を求めるという趣旨だったが、この嘉手納基地が昼夜を問わず凄まじい轟音を発して、地域住民を苦しめていることなど「関係ない」ということなのか。この広大な敷地を自由自在に使って、基地外でも日常的に事件を起こす米軍に、いくら「両国民がお互いに尊敬、感謝しあうことに貢献できるものと感謝します」(第18航空団司令官・ウィリアムズ准将)といわれても、基地のない平和な島・沖縄ははるか遠い将来の話である事をつくづくと実感させられた。このステルス戦闘機F22にしても、嘉手納はあくまでも一時滞在のはずで、拠点はあくまでも米国本土所属であることを忘れてはなるまい。

「基地と周辺地域の交流を深める」ことを目的に掲げるアメリカフェストですが、
米軍基地が人々の土地を奪い、
平穏な生活を脅かしている事実はどこへ?と思ってしまいます。
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