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癒しの島・沖縄の深層

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おかどめ やすのり 1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。HP「ポスト・噂の真相」

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オカドメノート No.055

沖縄政策の転換は、政権交代に期待

 民主党の選挙担当の代表代行になった小沢一郎が沖縄にやってきた。代表を鳩山由紀夫氏にバトンタッチしたことで、選挙に強い小沢流地方行脚の再開である。前日の鹿児島での候補者支援から沖縄の南城市で開かれた衆議院沖縄4区の民主党公認候補・瑞慶覧長敏氏の激励パーティにやってきたのだ。ついでにというわけでもないのだろうが、沖縄3区の民主党公認候補・玉城デニー氏の後援者・支援者へのあいさつ回りも精力的にこなしている。さらに翌日は、南の果ての島・石垣島まで訪ね、大浜長照市長、川満栄長竹富町長らと懇談している。これぞ、小沢流の全国ドブ板選挙である。今般のさいたま市の市長選挙では、民主党が支持する清水勇人候補が自民・公明の候補を大差で破り、鳩山新体制は順調な船出を開始したといえる。

 しかし、自民党や霞ヶ関、そしてメディアの小沢アレルギーは予想以上に強いだけに油断禁物だ。これまでの自民党がやってきた霞ヶ関との一体化路線を解体し、官僚や族議員たちによるシガラミだらけの予算づくりを根本から変えて新しい日本の政治をつくろうというわけだから、既得権益を失いたくないという勢力からの反発が凄まじいだろうことは予想できる。しかし、それだけではない。これに御用メディアも加わっているのだ。政治記者を務めて30年、40年などというベテラン政治評論家たちも同じ穴のムジナなのだ。つまり、メディアの中にも小沢嫌いが多数を占めており、何がなんでも小沢を潰すことが、自分たちの権益を守ることだと信じているフシがあるのだ。例えば、民主党は記者クラブを開放する方針を明らかにしている。これも既得権益が侵害される大マスコミは面白くないだろうことは、同じことをやった長野県知事だった田中康夫の時で実証済みだ。

 むろん、不言実行型の小沢の手法や性格に対する嫌悪の感情もあるのだろう。しかし、最大の理由は、これまでの政・官・業に加えてメディアという日本の権力統治機構に小沢流の剛腕による改革の手が入る事に対する恐怖心といった方が正確だろう。秘書の逮捕で始まった「小沢辞めろ!コール」の執拗さ、やめたらやめたで、「鳩山が代表なら小沢院政になる」という批判も検察の意を受けた小沢恐怖心の表れとみれば分かりやすい。検察の国策捜査とそれに無批判に乗っかったメディアによる小沢バッシングも、麻生応援団に読売・ナベツネを初めとしたマスコミの大幹部や元検事総長が雁首を並べたことでもはや舞台裏はバレバレではないか。

 沖縄に移住してもう5年。沖縄政治をそれなりにウォッチしてきたが、霞ヶ関と自民党に任せていたらますますダメになることがよく分かる。米軍基地に対する見返りの公共工事で海は汚染されてサンゴが死ぬといった環境破壊は確実に進んでいる。それでいて、沖縄県民の所得は日本最下位で、失業率の高さも依然として日本一。戦後、米国が長く占領していた島だけに米軍も治外法権の植民地くらいにしか思っていないようで、基地にまつわるトラブルは日常的に発生している。そのたびに沖縄の自治体がいくら抗議してもナシの礫。悪名高き日米地位協定を改正せよという県民の真っ当な要求に対しても外務省は冷酷なまでに知らんぷりを続けてきた。普天間基地の移転先にしても、防衛省は辺野古に近代装備をそなえた新基地を作るために地元に税金をばら撒く作戦で懐柔してきた。しかし、県民のほとんどは県外・国外を主張しているのだ。政権交代の可能性が高くなった民主党は新基地建設をはっきりと否定しているのが心強い。

 ついでにいえば、愚策の極みともいえる泡瀬干潟の埋め立て工事もしかりである。裁判所ですら、「今後の公金支出はいっさい認めない」と言う判決を出したのに、国と県、そして沖縄市の東門美津子市長がヘドロ投入の工事を再開したのは不可解の極みだ。橋下大阪府知事ではないが、「国の直轄事業による地方の分担金はボッタクリ」みたいなものなのだ。いずれ泣きをみるのは沖縄市民なのだ。むろん、当然ながら民主党はこの泡瀬埋め立てにも反対している。

 とにかく、沖縄が大きくいい方向で変わるきっかけをつくるのは、政権交代による霞ヶ関官僚たちの反沖縄性を徹底的に解体することである。今の保守系の仲井真知事も霞ヶ関との仲介役でしかない沖縄選出の自民党国会議員に期待することじたいが、しょせん無理な話なのだ。それは、官僚丸投げの麻生政権を見ていれば、バカでもわかるはずだ。霞ヶ関官僚に沖縄政策をまかせていたら、この癒しの島は骨の髄まで食い物にされ、取り返しのつかない事態になる。移住5年目の筆者が見た、これが沖縄の深層の一端である。

「鳩山民主党」で政権交代は成るのか、
そしてそれによって、沖縄をめぐる政策に変化はあるのか。
そのカギを握るのは、私たち自身です。

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