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癒しの島・沖縄の深層

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おかどめ やすのり 1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。HP「ポスト・噂の真相」

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オカドメノート No.051

地元住民無視で進む沖縄の「米軍再編」

 宜野湾のキャンプ瑞慶覧内から排出された廃棄物にアスベスト(石綿)が含まれていたことが地元紙でスクープされた。本来は、米軍から防衛省を通じて地方自治体などに通知する取り決めがあったにもかかわらず、それもいっさいなしの頬かむり。アスベストは基地内住居の空調ダスト撤去作業の過程で排出された模様だ。読谷村内の廃棄物集積内のコンテナから有害物質が検出されたのは、基地内での工事関係者の告発があったためである。アスベストを吸い続けると人命に危険が及ぶ強力な毒物となるため、日本でも大問題になったのは周知のとおり。沖縄にいると、日々基地にまつわるこうした事件や事故を地元紙で知らされる。米軍はイラクやアフガンで命を賭けた戦いに従軍しているために人命の尊重や安全第一などという配慮は二の次三の次という、殺人行為を生業とする軍隊自身が持つ宿命的なメンタリティが背景にあるのだろう。米軍は国策として戦争をやっているのだから自業自得かもしれないが、米軍基地の島に住む沖縄県民はたまったものではない。

 そんな中、「在沖米海兵隊のグアム移転に関する協定」が衆議院外務委員会で自民・公明の圧倒的多数で可決された。今後、参議院でいったん否決されても、結局は衆議院で数を頼みの法案通過となる。海兵隊8000人の移転数に関しても、政府の答弁は「実数はわからない」ととぼけたもの。普天間基地をかかえる宜野湾の伊波市長によると、「沖縄の海兵隊員は1万8千人だから、8千人グアムに移っても1万人が外から兵隊と家族が移ってくる」と米国大使館から説明を受けたという。話が違うではないか。だいたい、この近代戦争の時代に海兵隊の存在価値があるのかどうか、疑問視する向きもあるというのに、である。しかも米軍の基地移転費用のうち28億ドルを日本が提供するという協定である。これは海兵隊だけでなく空軍や米海軍の施設にも使われるというから、唖然である。グアムの新基地内に建設される米軍住宅に関しても一軒あたりの見積もりもまったく不明。一度はやたらと高額の見積もりが出たが、さすがに非難を受けて撤回した。とにかく、日本も28億ドルくらい出せという、いわゆる掴みカネの要求である事を日本政府も認めているのだから、この大不況下の時代に、国税を乱費する官僚どものヤリクチは、ふざけた話ではないか?

 もっとふざけているのが、沖縄の基地負担軽減のためといいつつ、市街地にあって世界一危険な普天間基地の代替施設として、辺野古に近代装備をそなえた巨額の新基地を建設しようという計画があることだ。キャンプ・ハンセンの基地をベースにして大浦湾、辺野古の海を埋め立ててV字型滑走路、弾薬庫、軍港、ヘリパッドを作ろうというわけだ。その代わり嘉手納基地以南の米軍基地や関連施設を返還するという条件とのバーターである。嘉手納以南の基地はもはや返還しても米軍にとっては痛くも痒くもない。何よりも問題は、沖縄側と直接交渉することなく、日米政府の間だけで何事も秘密裏に進められていることだ。沖縄は振興金や補助金が欲しかったら黙っていろ!というアメとムチによる強制的な基地政策に対しては、移住者の筆者も怒り心頭だ。外務省も防衛省も、もはや沖縄県民の味方ではなく、日米とともにいかに県民をだまくらかすかしか考えていない。霞ヶ関解体を主張し、日米関係は対等であるべきだとして普天間基地の移設は県外もしくは国外を主張する民主党を中心とした野党政権が誕生すれば、過去の旧悪がバレバレになるし、省益も失う。小沢民主党つぶしの米国をバックにした政・官業・メディアの四身一体バッシングの裏には、長期の自民党政権下で培った権益を死守したい霞ヶ関と一体化した勢力との総力戦がある事に、沖縄県民はぜひ気づいてほしいものだ。

地元住民を置き去りにしたまま、急速に進む「米軍再編」。
この流れに、歯止めをかけることはできないのでしょうか?
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