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おかどめ やすのり 1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。HP「ポスト・噂の真相」
オカドメノート No.049
沖縄の地元紙に、「アレンさん死去 元米兵の反戦活動家」というベタ記事が掲載されていた。アレンさんというのは、1966年からキャンプ・ハンセンに所属し、翌67年に同基地からベトナムに派遣された経験を持つ元海兵隊員だ。そして96年から毎年沖縄にやってきてベトナム戦争の体験を語るなどの平和運動に取り組んできた人物でもある。米国ニューヨーク在住だったが、死因は多発性骨髄腫だったという。これもベトナム戦争の後遺症でなければ幸いだが、米軍がベトナムで撒き散らした枯葉剤による「べトちゃんドクちゃん」のような遺伝子異常の新生児がいまだに後を絶たないのが現実なのだ。
このアレンさんの死の直前に、米国反戦兵士たちの支援組織の代表であるジェフ・パターソン氏の講演会が那覇市内で開かれた。ジェフさんは、80年代に沖縄に駐留していた海兵隊員で、湾岸戦争への派遣命令を拒否した最初の兵士。2ヶ月間の軍の刑務所生活を経て、90年12月に除隊してからは反戦兵士の支援活動を続けてきた人物だ。このジェフさんによる海兵隊の衝撃的な裏話を聞いた直後だっただけに、アレンさんの死を報じるベタ記事が気になったので紹介してみた。米軍が終戦以来駐留する沖縄には戦時下で錯乱した犠牲者でもあるようなタチの悪い米兵もたくさんいたが、アレンさんやジェフさんのような良心的な兵役拒否の米兵もちゃんといたことだけは知っておきたいものだ。
それはともかく、わが日本は今頃になって北朝鮮との間で戦争でも起こすような仰々しい厳戒態勢をとっている。北朝鮮のミサイルが日本に飛んで来たら「破壊せよ」との防衛大臣の命令が出たためだ。マスメディアも自衛隊の迎撃ミサイルPAC3の防衛省内の配備から秋田、岩手への移動の模様を映像入りで嬉々として放送していた。まるで、戦争でも始まるかのような雰囲気だ。しかし、北朝鮮が発射する今回のテポドン2号の改良型は冷静に考えれば人工衛星である可能性がきわめて高い。北朝鮮側もこれまでと違って期日を指定して人工衛星を打ち上げることを国際社会に向けて公表している。日本としては、この北朝鮮が発射するのはあくまでも長距離弾道ミサイルだとして、万が一の場合に備えて、PAC3の他に日本海の秋田沖や太平洋側に迎撃ミサイルを搭載したイージス艦三隻を配備している。まさに準戦時体制なみの物々しさである。
しかし、カンジンの米国のゲーツ国防長官は人工衛星との認識で迎撃対策は全く準備していない。日本国内に数多くの米軍基地を置く当の米国が迎撃体制を全く取っていないと言うことは、ミサイルであるとの認識はまったく持っていないことの証明だろう。それでも、北朝鮮が打ち上げに失敗した場合、ロケットの破片が日本の国土に落ちてくる可能性もゼロではないだろう。その場合、自衛隊がその落下物を確実に打ち落とせるものなのか疑問だ。仮に打ち落としてもそれが、民間地区に落下して犠牲が出ることもあるのではないか。迎撃ミサイルは一発で20数億円との説もあるというのに、政府高官の中には、「日本の迎撃ミサイルがあたるわけがない」と公言した人物もいるから、驚きである。
こうした諸々の状況を見れば、今回の政府と自衛隊の大騒ぎは、戦時体制の予行練習みたいなもので、国民むけの洗脳を狙ったパフォーマンスの意味が強いのではないか。日本は北朝鮮が長距離弾道ミサイルを打ち上げたら、国連での決議や経済制裁まで主張している。じゃ、ホントに人工衛星だったらどうするのかといいたくなる(苦笑)。人工衛星が悪いという日本政府の論理は傲慢というものである。あきらかに日本の外務省の独断専行でしかない。北朝鮮に核放棄させるための6カ国協議の重要性を思えば、中国、ロシア、アメリカ、さらに韓国も含めて、それをぶち壊すようなヤリクチの日本と同一行動を取るとは思えない。相変わらず分析能力もリーダーシップもない、お粗末でタチの悪い外務省の外交力と言う他はない。
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