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癒しの島・沖縄の深層

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おかどめ やすのり 1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。HP「ポスト・噂の真相」

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オカドメノート No.036

ブッシュ大統領のイラク電撃訪問で思った日米関係と沖縄

 沖縄のキャンプ・ハンセンから飛んできたと思われる銃弾が金武町伊芸の民間の駐車場のナンバープレートに突き刺さっているのが発見された。このキャンプ・ハンセンでは、都市型ゲリラを想定した軍事訓練が頻繁に行われており、実弾が民間地に飛んでくる銃弾事故はこれまでも数限りなく起きている。この銃弾が発見されたのも、実弾訓練の通告が地元の自治体にあった期間中の出来事だった。たまたま、筆者もこの実弾訓練の最終日に辺野古よりさらに北上するカヌチャにいたが、銃弾発射による地響きは無気味で実に不快な気分になった。この銃弾に関しては,弾の大きさ(長さ4・5センチ、直径1センチ)から重機関銃の類ではないかと見られ、沖縄県警が調べているというが、米軍側に反省はまったくゼロ。訓練とはいえ、実戦を想定してぶっ放した実弾が民間地まで飛んでくるという危険と背中合わせの日常。死傷者が出ないと実弾発射訓練中止は無理なのか。いや、死傷者が出ても米軍はおそらく知らんぷりだろう。

 いずれイラクかどこかの戦場に送られる兵隊たちの実弾訓練である。平和のはずの沖縄の米軍基地内は「常在戦場」みたいなものなのだ。米国は他所の地で勝手にやればいいが、地元の人たちにすればとんでもない大迷惑である。同じく、米軍の実弾訓練場である鳥島は長年の実弾破壊で島の形が大きく変形しているという。最近、ようやく久米島町役場が返還要求の意思を打ち出したが、戦時中に米軍の艦砲射撃で徹底的に破壊された硫黄島みたいなものなのだろう。鳥島の実弾訓練により、この海域一帯では漁業も一切できないのだ。何たる米軍の傲慢さなのかと思うが、これを戦後一貫して容認・推進してきたのは紛れもなく歴代の自民党政権と外務省、防衛省の役人たちであったという事実を忘れてはなるまい。

 イラクを電撃訪問したブッシュ大統領がマリキ首相と並んで記者会見している時に、イラク人のテレビ記者に靴を投げつけられるというシーンがあった。ブッシュが瞬間的に身をかわしたカウボーイらしさ(?!)にも笑えたし、靴を投げつけたイラク人記者の大胆な行動にも笑えた。しかし、イラク人記者としては、あれこれイチャモンをつけたあげく、戦争を仕掛けてきた米国によって国土が徹底的に破壊され、多くの生命を奪われた恨みをブッシュに感じたのだろう。いまだに、イラクは治安も社会経済も不安定なままだが、米国はイラクからの2011年の撤退をすでに宣言している。人の国に土足でツカツカと入り込み、最後は汚したままで清掃もせずに引き上げるみたいなものである。

 米国のいいなりでしかない日本は、あれだけ国際貢献の必要性を主張しておきながら、さっさとイラクからの撤退を決めて引き上げてしまった。日本国の憲法も国民の意思も、政府・霞ヶ関はおかまいなしなのだ。あくまでも米国のための派兵であり、撤退もしかりだったということである。来年一月に大統領に就任するオバマはイラクからは撤退し、アフガンへはさらなる介入を宣言している。自民・公明が、インド洋での給油活動継続に執念を見せて可決したのも、米国への忠誠心である事は見え透いている。それにしても、労働者派遣法改悪の元凶も公明党ではないか。この党は政権欲しさに、平和も弱者の味方も投げ捨てて、もはや節操も理念も失ったのか。

 このイラク人記者も、世界に向けて絶好のアピールの場という計算があったかもしれない。それでも、ジャーナリストである前に生身のイラク人であるアイデンティティがブッシュを目の前にして爆発したのではないか。沖縄県民も立て!である。あ、これじゃ、共謀罪か(苦笑)。

 今や、ほとんど存在感を失ったブッシュが、大統領として最後の仕上げだと考えているのが、このイラク戦争の決着とテロ国家指定を解除した北朝鮮核問題の解決だった。しかし、北朝鮮の核開発放棄を文書で確約させるという6カ国会談は完全決裂した。内政においても、ビッグスリーといわれる米国の威信の象徴でもあった自動車産業も倒産の危機に瀕している。こうした失政の元凶も、ブッシュ政権の金融市場主義、新自由主義、戦争主義の破綻である。その米国にひたすら媚を売る外交しかできない政府・霞ヶ関にキャンプ・ハンセンにおける危険な実弾訓練をやめさせることなどありえない。それを打開する唯一の残された可能性は沖縄県民の実力阻止闘争か、日本に新たな野党政権を誕生させて霞ヶ関を徹底的に解体・再編した上で、新たな陣容でオバマと徹底交渉する体制をつくるしか術はない。まずは沖縄の原点にもどり、日米地位協定の抜本的改革から始めよ!である!

人々が当たり前に暮らす、「平和」であるはずの場所に、実弾が飛来する。
想像しがたいそんな「日常」を、
私たちはいつまで沖縄に押しつけ続けるのでしょうか?
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