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癒しの島・沖縄の深層

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おかどめ やすのり 1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。HP「ポスト・噂の真相」

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オカドメノート No.034

泡瀬干潟埋め立てをめぐる判決のその後

 前回書いたように、すでに進行中だった泡瀬干潟埋め立て工事に対して、那覇地裁が「経済的合理性がない」「これ以上の公費投入を禁じる」という画期的判決を出した。最近は反動の代名詞のようになっている裁判所がよくぞここまで踏み込んだ判決を書いたものだとカンシンしていたのだが、結局沖縄県も沖縄市も控訴して高裁で争う方向になった。その経過が、いかにも沖縄的という感じなので、ぜひ報告しておきたい。

 まず、沖縄県の対応だ。県知事は自民・公明党推薦で当選した仲井真知事なので当然ながら泡瀬干潟埋め立てを推進する国と共同歩調をとる事は想定の範囲内。しかし、今年6月の県議選で与野党逆転が実現したため、県議会で控訴を否決される可能性があった。そこで、県知事と県庁側が考え出したのが、泡瀬干潟埋め立て反対の原告に県議4人が入っていることに目をつけて、「地方自治法107条によれば、議員に直接の利害関係がある場合、対象となる議員は除斥され、議事に対する討論や裁決は認められなくなる」という見解を打ち出したのだ。地元紙にリークして記事にさせたものの、この苦肉の策は野党側の猛反発を買って、不発。

 それがうまくいかないとなると、次の策略として「控訴するかしないかに関しては、県議会の議決は必要ない」との説をもっともらしくメディアにリーク。司法が反対なら行政力で対抗するという小役人の悪知恵にカンシンする。県庁に限らず霞ヶ関の役人が利権、天下り、予算などの既得権益を守るためには、いかにあの手この手で自分たちの言い分をゴリ押しするかということは、行政支出総点検会議の指摘に抵抗する霞ヶ関の姿勢でもよく分かる。漢字を読めないだけではなく、実は経済も行政もよく知らないのに知ったかぶりをするバカ総理をだますことなど、役人連中にとっては朝飯前なのだ。腑抜けなマスコミは、そのバカ総理や行政の言い分を検証もせずに日々垂れ流すのだから始末が悪い。支持率が危険水域に入ったバカ総理のミエミエのパフォーマンスを垂れ流すよりも、いかに国民の深刻な危機感とズレまくっているかという事に対して、もっと鋭く突っ込んで批判せよ!といいたくなるではないか。

 そういう状況を踏まえれば、社民党議員から沖縄市長になった東門美津子市長が、泡瀬干潟問題では行政の長としてのリーダーシップを発揮できないのもムベなるかな、である。市長選では泡瀬干潟工事を見直すという公約を掲げ、反対派の支援を受けて当選したというのに、国や県の圧力、市議会の多くが工事推進派という包囲網の前に完全にペシャンコ状態である。ようするに、決断力も政治力もない人物をかついだ沖縄市民も見る目がなかったということだろう。東門市長は判決から日をおかずに控訴すると発表したが、県よりも早く決断したということじたい、苦渋の選択でもないという証明だろう(苦笑)。すでに進行している第一区域工事を「状況的にやむなく容認」という苦渋の判断をした時に比べれば、もはや支持した沖縄市民に対する裏切りであり、開き直りである。

 今さらいっても詮無い話だが、裁判所の判決をいいきっかけにして「工事はいったん全面停止して、今後の方策を考える」と決断する方法もあったのではないか。沖縄市議会が反対するならば、泡瀬干潟埋め立ての是非をめぐって再度市民の判断を選挙で仰ぐという、岩国市長方式だってあったのではないか。要は政治姿勢の問題であり、退陣も辞さずという覚悟の問題ではないか。社民党・福島瑞穂党首、どうよ!土井たか子元委員長ではないが、「ダメなものはダメ」というのも沖縄の将来のためではないのか。

 ついでに、ひとこといえば、自民党政務調査会の無駄遣い撲滅プロジェクト(PT・園田博之座長)の内閣府担当班(主査・河野太郎)で、沖縄科学技術大学院大学や沖縄振興開発金融公庫のあり方が議題に取り上げられた。大学院大学は再検討の必要があり、沖縄公庫はいずれ日本政策金融公庫との統合というものだが、沖縄振興委員会はさっそく反対の意思表示を示している。しかし、沖縄で嫌われ者になろうとも書いておくが(苦笑)、特に大学院大学に関しては、大槻義彦早稲田大学名誉教授とも沖縄で話したことがあるが、二人とも疑問だらけという見解で一致した。世界最高の頭脳を集めるという理念は崇高だが、ノーベル賞物理部門の日本推薦者でもある教授が絶対無理と判断しているのだから、間違いあるまい(苦笑)。しかし、すでに土地造成は始まっているのだから、これを見直すには泡瀬干潟埋め立て同様に、一度動き出したら止まらないという日本型行政の悪幣との戦いが大前提になる。しかし、要は政治的リーダーシップ、決断力の問題である。実は、簡単な話なのだ。

やはりというべきかどうか、「工事の中止」は淡い期待に終わってしまったよう。
高裁ではどんな判断が下されるのか、しっかり経過を追っていきたいと思います。
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