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癒しの島・沖縄の深層

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おかどめ やすのり 1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。HP「ポスト・噂の真相」

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オカドメノート No.032

那覇市長選から見えたこと

 東京ではほとんど関係なかったのだろうが、沖縄では県庁所在地である那覇市の市長選で自民・公明両党の推す現職の翁長雄志氏が3選を果たした。筆者的にはガッカリである。たかが市長選ともいえるが、鳩山由紀夫幹事長が応援に来たくらいだから、次の衆議院解散総選挙や二年後の県知事選にも影響を及ぼすという意味では、何としても勝つべき選挙だった。対立候補は、民主、社民、共産、国民新党、社会大衆党、そうぞうが推薦した平良長政氏(元社民党県会議員)。翁長氏の約7万票に対して,平良氏は約5万5千票で、その差は約1万5千票。那覇市の有権者は約24万人だから、投票率は53パーセントと記録的な低さだった。これでは、資金力、運動力に勝る自民・公明が勝つのは、ある意味当然だろう。

 沖縄では、今年の6月の県議会議員選挙で、仲井真知事の与党である自民・公明が過半数割れして、与野党逆転となった。国政における参議院みたいな状況が生まれたのである。これをネジレ現象といってネガティブにとらえる向きもあるが、健全な民主主義が機能するためにはむしろ一歩前進の動きというのが筆者の見解。実際、仲井真知事の訪米に関して、野党側は「在日米軍再編の推進」という訪米目的にクレームをつけて、予算案の承認を見送ったのだ。県議会では、辺野古新基地建設反対が多数派なのだから当然だろう。これこそが民主主義の健全な機能というやつである。

 それはともかく、沖縄はいまどき全国でも珍しい、保守対革新という対立構図が成立する地方である。沖縄にしか存在しない、社会大衆党やそうぞうという地域政党もある。1972年の本土復帰まで、沖縄が米軍政下に置かれた事情が反映していることはいうまでもない。問題は、保守の側は政府からどれだけ補助金を引っ張り出して公共事業をやらせるかという経済と雇用策を最優先し、革新側は基地反対、環境破壊反対、福祉対策充実という二極対立で語られる事が多いことだ。極端に言えば、「基地・平和問題か経済政策か」という保守側の選挙戦術に革新側は3期連続知事選において負けているのだ。明らかに保守側の作戦にしてやられた!という感じ。筆者にすれば、どちらもやるのが政治というものだろう。というのも、革新側には平和と基地反対を叫んでいれば、「いずれ正義は勝つ」という信仰心に近い思いでことたれりとしているところがあるからだ。

 これじゃ、自民・公明に勝てないし、現世利益のためにはなりふりかまわない公明党を少しだけ見習うべきかもしれない。麻生総理の「定額給付金」2兆円のバラマキに代表される選挙対策のための大盤振る舞いも元はといえば、公明党の単なる思いつき。「100年安心年金」も後期高齢者医療制度も公明党ではないか。かつての平和の党は新テロ特措法も、消費税値上げも結局はOKなのだ。カリスマ宗教家に支えられた政党は権力維持のためには何でもありで恐いゾ。

 麻生政権が末期症状を呈している中、沖縄の南西諸島海域では原子力空母「ジョージワシントン」を中心とした日米共同軍事演習が行われている。そのため本土の自衛隊機が那覇空港で待機。ホワイトビーチでは原子力潜水艦「オハイオ」から二人の日本の海自幹部が降艦するシーンが日本テレビのスクープ映像で明らかになっている。麻生政治の迷走の陰で、田母神前幕僚長のようなトップのいる自衛隊は、国民の知らない間に日米軍事同盟を着々と推し進めているのだ。末期症状で頭の回らない麻生総理の隙間、米国のブッシュからオバマへの政権交代の政治空白を狙って、日米軍事同盟は中国、北朝鮮、ロシアといった仮想敵を想定して(たぶん)、今日も戦闘訓練中だということをゆめゆめ忘れてはなるまい。

「基地反対か経済政策か」。
当たり前のように聞かれる二者択一のフレーズですが、
本来その二つは、必ずしも対立するものではないはず。
岡留さんも指摘するように、「どちらもやるのが政治」なのでは?
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