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癒しの島・沖縄の深層

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おかどめ やすのり 72年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。HP「ポスト・噂の真相」

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オカドメノート No.009

沖縄県議会選挙の行方

 相次ぐ失策で支持率が低迷して、今や「死に体」の福田内閣だが、解散総選挙も総辞職、内閣改造もまったくやる気が見えない。これだけ国民の不満や怒りがたまっているのに民意不在ぶりは極限状態にあるといっていい。権力亡者たちが党の幹部をつとめる自民党としては、今すぐ選挙をやったら負けて政権を失う可能性が高いし、ポスト・福田の損な役回りなど誰も引き受けたくないので、お互いに牽制しあっているのが現状なのだろう。福田総理にしてみれば、政治力学からくる不幸中の幸いという、崖っぷちの一時小康状態である。しかし、こうした無気力かつ空虚な空気が支配する政治の下においては、国民こそが最大の犠牲者であり、一番ほくそえんでいるのが霞ヶ関の官僚たちであることだけは忘れてはなるまい。

 代議制民主主義政治においては最終的に数の論理がすべてを決するし、それが必ずしも民意を反映しないということも紛れもない現実である。野党側が、福田総理の問責決議案を出して解散総選挙をいくら迫っても、衆議院で圧倒的な議席数を持つ自民・公明政権が「NO!」という限り、民意を問うためという大義があっても総選挙は実施できない。まして、政府自民党や霞ヶ関があらゆる手段を使って衆議院解散阻止の世論操作を仕掛けた場合、大手メディアはまんまと乗せられてしまう可能性が高い。いや、すでにそういう体制がつくられていると思っていい。メディア側に決定的な洞察力や批判力が欠如しているせいもあるが、それ以上に長年の権力との癒着構造の下に置かれているためである。「自民党も問題だが、野党にも対案がない。どっちもどっち」という論調こそ、そうした構造から来るマスメディアの自己保身の表れといっていい。

 それはそれとして、沖縄では衆議院選挙を前に、まず今月30日に公示される県議会議員選挙がある。すでに、県内あちこちに県議選候補のポスターが貼られ、街宣車が街を走り回るという前哨戦が始まっている。沖縄には在日米軍基地の75%が集中しているため、地方選挙といえども国政レベルの政治課題を抱えているという他府県とは違う事情がある。そのため、自民・公明から地元政党である社会大衆党以外の各野党も党首クラスをすでに投入している。自民・公明の支持で当選した仲井真知事だが、沖縄でも中央政治と同じ逆風状況があるだけに、必死の態勢だと伝えられている。年金記録消失問題、後期高齢者医療制度、ガソリン税などの暫定税率復活といった問題が県議選にも影響を及ぼして、与野党逆転となった場合には県政が混乱するという世論操作が仕掛けられている。

 しかし、仲井真知事は当選以来、公約はほとんど実現できていないという大きなマイナス材料がある。「噂の真相」的にいえば、つい最近、沖縄の建設業者の団体が地元政党の「そうぞう」の下地幹郎衆議院議員を呼んで会合を開いたら、仲井真知事サイドから激怒の抗議があったという話も流れている。下地議員はもともと自民党議員だが、現在は反自公の立場に立って国民新党と統一会派を組んでいるため、知事側は保守支持層の切り崩し工作と受け止めて危機感を強めているのだろう。参議院じゃないが、沖縄県議会も与野党逆転した方が、間違いなく県政の論議が活発化するのではないのか。

 そんな中、県議選応援のために沖縄入りした民主党の鳩山幹事長が地元紙のインタビューに答えて、日米地位協定改定に向けた国会決議案の参議院本会議への今国会提出に意欲を見せ、普天間基地はグアムか県外に移設することを民主党が掲げる「沖縄ビジョン」のマニフェストに盛り込むことを表明した。こうした方針は官僚に牛耳られっぱなしの自民・公明には絶対できないことだし、そうした政党に支えられた仲井真知事では不可能だろう。民主党など他の野党側は、こうした沖縄の基地のありようを含めて、中央政府に対抗する形で新しい方向性を県民の間に広くアピールしていけば、県議選だけではなく次の衆議院議員選挙での与野党逆転に必ず繋がるはずだし、そうしなければ沖縄の未来はないだろうというのが筆者の見解である。

内閣不支持率が6割を超えるという状況ながら、
衆議院解散・総選挙への道のりは不透明なまま。
そんな中で行われる沖縄県議選は、どんな結果になるのか。
注目したいところです。
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