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癒しの島・沖縄の深層

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おかどめ やすのり 72年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。HP「ポスト・噂の真相」

オカドメノート No.002

暴風雨の中の抗議県民大会

 その日、沖縄気象台が午後一時半に本島地方に大雨・洪水・強風・雷雨注意報を発表した。北谷町の北谷公園野球場前広場で開催された「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」当日の開会30分前のことである。この気象条件が影響したとはいえ、昨年9月29日の教科書検定問題で10万人以上を集めた県民大会に比べれば、主催者発表6000人の参加者は少なかったという印象を免れない。理由はいろいろ考えられる。この大会開催のきっかけとなった海兵隊所属の米兵による少女暴行事件で、被害者少女が告訴を取り下げたこともあって、事件そのものがウヤムヤな印象で終わったこともあるだろう。被害者少女がこれ以上のセカンドレイプを避けたいという気持ちだっただろうことは十分に理解できるし、同時にこの手の米兵による犯罪の数々が泣き寝入り状態になっているだろう、基地の島・沖縄の現実も示唆してくれた。

 問題は自民党沖縄県連とその支持を受けて当選した仲井真知事が、このことを逆手にとって不参加の理由にあげたことだ。そのことでこの県民大会は超党派による沖縄の怒りを総結集できなかったともいえる。仲井真知事本人は最終局面まで参加するかどうか迷ったフシもあるが、最後は自民党沖縄県連の強い反対の意志に押し切られた形となり、日米両政府の得意技である沖縄の分断・統治政策が功を奏した結果となった。仲井真知事自身は、日米地位協定の抜本的改正の必要性を訴えていたが、カンジンの沖縄選出自民党国会議員が政府の「日米地位協定の見直しを米国に求めない」という一言にまったく抗すべくもなかった。情けない連中である。

 横須賀で起きたタクシー運転手殺害事件との関与が疑われる脱走米兵の身柄も米軍当局が拘束したが、これも日米地位協定が日本を植民地扱いしている不平等性の本質が露呈した形である。米軍基地の即時撤退要求が現実的でないとすれば、せめて地位協定の抜本的改正、米国海兵隊の撤退、新基地建設反対といった沖縄の将来に関わる基本政策を県民一体となって実現させるべきである。自民党国会議員といえども、沖縄の歴史と特殊事情を抱えた中で当選した面々である。こうした政府や自民党の姿勢が、「綱紀粛正」や「再発防止」対策をその場しのぎの空虚でむなしい反省ポーズだけにとどめてきた元凶ではないのかということを、自民党の沖縄選出の国会議員たちも国に媚を売る姿勢を捨てて、県民の立場になって厳しく対応すべき時ではないのか。でなければ、先の暴行された少女、さらに基地がある限り米兵に傷つけられるだろう、今後の被害者に対して加害者としての自覚を持つ覚悟を問いたい。貴方たちも結局は、共謀共同正犯、同罪ではないか、と。

 沖縄の置かれている分断・統治の現実を強く感じさせてくれた県民大会でもあったが、地元の沖縄タイムス、琉球新報がそろって一面、社会面でトップ記事扱い、中面見開きで知事の姿勢に疑問を投げかけつつ大会の模様を報じていたことが、筆者的にはせめてもの救いだった。

県外のメディアでは、大きく伝えられることもほとんどなかった今回の県民大会。
けれど、集まった人数の少なさが、怒りの沈静を意味しているわけではもちろんありません。
「功を奏して」しまっている分断・統治政策に、どう立ち向かってゆくのか。
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