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癒しの島・沖縄の深層

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おかどめ やすのり 72年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。HP「ポスト・噂の真相」

オカドメノート No.001

沖縄発・オカドメノート連載開始!

 『噂の真相』を休刊してまもなく4年が経つ。沖縄に拠点を移してからは、約3年半が経過した。この間、「ポスト・噂の真相」というホームページで連載してきたブログ日記が、『幻視行日記』として七つ森書館から単行本化され、最近発売されたばかり。本のサブタイトルには「東京新宿『噂の真相』編集部発沖縄行」とあるように、休刊して東京から拠点を沖縄に移してあれこれ感じたことをつれづれなるままに書き続けた日記である。今回、単行本化されたことでこの日記もひと区切りついたため、あらたな気持ちで沖縄生活を再出発したいと思っている。そのスタートにあたり、昨年秋から依頼されていたこの連載を引き受けることにした。それがささやかながら日本の平和と基地の島・沖縄の将来の展望につながればとの思いを込めて、である。

 沖縄が抱えている問題は、日米両政府の現実的関係性をストレートに反映したものであり、政府・自民党が日本をどういう方向性に持って行こうとしているか、そのメルクマールでもあり、矛盾の集約点ともいえる。より具体的にいえば、沖縄問題を仕切っている外務省、防衛省、内閣府といった中央官庁の姿勢は、沖縄の米軍基地を存続させるために如何に県民を巧妙に騙してコントロールしていくかという対米追従の行政的視点が頑固なまでに貫かれている。それに対抗する手立ては、権力チェックのスタンスから絶えず日米両政府に情報公開を迫り、時に隠された事実をこちらからスッパ抜いていくことが、沖縄の将来のためにも決定的な絶対必要条件になるのではないか。政府の嘘を見抜く視座から絶えず問題提起し、日本政府のお粗末な行政の手口を沖縄から撃ち続けていきたいと思う。前置きはこのくらいにして、さっそく本論に入りたい。

 沖縄における海兵隊の少女暴行事件が発端となって、米軍に抗議の声をあげるための県民大会は今月の23日の開催に決まったものの、自民党県連は不参加の意思を表明している。自民党沖縄県連は少女が告訴を取り下げたことも不参加の理由のひとつにしていたが、その前から県民大会には乗り気でなかったのだからこれは言い訳でしかないのだろう。ホンネとしては、野党との対決構図が待ち構えている次の衆議院議員選挙、6月の県会議員選挙に向けての思惑があるようだ。自民党の言い分としては、超党派の県民大会は野党が有利になるだけという計算が働いているという。セコすぎるぞ、自民党沖縄県連! 

 仲井真県知事本人はまだ参加するかどうかを表明していないが、沖縄県庁まで謝罪にきた米軍トップに対する媚びへつらった態度から見ても、おそらく不参加になるだろうと思う。沖縄の自民党も県知事も繰り返される米兵の犯罪をなくすことよりも、政府との対立を避けることで、辺野古新基地建設や基地振興資金、補助金が欲しいだけではないのかといいたくなる。ここに県民じたいの総意がなかなか形成されない沖縄の悲劇の構図がある。ありていに言えば、基地撤去の平和主義派と、基地容認・補助金欲しさの保守派との分断、対立である。背景には日本政府の基地推進政策に協力しなければ、補助金を交付しないという恫喝政策がある。歴史的な日米両政府による世論・マスコミ操作による基地対策のためのコントロールがあることも見逃せない。しかし、沖縄の基地にまつわる問題点が、72年の本土復帰以降もまったく改善されていない現状を思えば、こうした党派的思惑は今回の被害者少女だけではなく、心ある県民全体への裏切り行為といっていい。

 さすがの仲井真知事も今回ばかりは日米地位協定の改正を言い出している。それが、政府に対して「絶対に譲れない沖縄の姿勢」として打ち出されればいいが、いずれ懐柔されて腰砕けになるとすれば、沖縄はまたしても米軍基地政策の歴史的な転換のチャンスを失うことになる。今のところ、仲井真知事と沖縄選出の自民党議員との間の日米地位協定に対する認識にはかなりの温度差がある。この際、仲井真知事がいっさいの党利党略を捨てて県民党的立場で日米地位協定の抜本的な改正を超党派で主張すれば、沖縄の米軍基地政策は大きく変わる可能性がある。「運用の改善」で十分としか認識していない無能な自民党幹部や外務省、防衛省に対して堂々と喧嘩を売ってみたらどうか。今までと違って、野党が逆転した参議院は基本的に味方するだろうし、理は当然のごとく沖縄側にあることが国民にも理解されるはずである。

 基地があるために幾度となく繰り返されてきた米兵の犯罪をなくするためには米軍基地撤去がベストだが、それがすぐに実現できないのであればせめて日米が対等な関係性を維持するための日米地位協定改正は緊急の課題ではないのか。基地外に住む米兵の実態すら把握せずに放任していたとは驚きである。仲井真知事が県民大会には参加しない局面になったとしても、その分だけ沖縄県政のリーダーとして日米地位協定に向けてリーダーシップを発揮してみたらどうか。米軍基地をかかえる自治体と手を組んでもいい。どっちの方法もとれない優柔不断の県知事なら、沖縄県民にとってはもはや無用の長物でしかないし、任期を待たずに即刻辞任すべきである。仲井真知事よ、どうよ!

南の楽園、癒しの島といったイメージに隠れた、沖縄の深層について、
岡留さんのまなざしには、どう映るのでしょうか?
新宿の事務所から完全移住した沖縄の地より、
『噂の真相』の編集発行人による、
新コラムを、不定期連載でお届けいたします。
お楽しみに!
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