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もりなが・たくろう経済アナリスト/1957年生まれ。東京都出身。東京大学経済学部卒業。日本専売公社、経済企画庁などを経て、現在、独協大学経済学部教授。著書に『年収300万円時代を生き抜く経済学』(光文社)、『年収120万円時代』)(あ・うん)、『年収崩壊』(角川SSC新書)など多数。最新刊『こんなニッポンに誰がした』(大月書店)では、金融資本主義の終焉を予測し新しい社会のグランドデザインを提案している。テレビ番組のコメンテーターとしても活躍中。
7月25日放送のテレビ朝日系「朝まで生テレビ」に出演した。総選挙を前にして、各政党がどのような政策を採ろうとしているのかが、主要なテーマだった。そのなかで、特に注目を集めたのが、総選挙後に政権を獲得する可能性が高いと言われる民主党の政策だった。
民主党の経済政策は、これまで自民党が採ってきた企業活動を活性化することを中心とするものとは異なり、あくまでも生活者の視点から、国民が安心して暮らせるようにするものを打ち出している。月額2万6000円の子供手当て、高校の実質無料化、最低賃金を全国平均で時給1000円に引き上げ、パート・契約社員を正社員と均等の待遇、高速道路料金の無料化、ガソリン税などの暫定税率廃止、農業者戸別所得補償制度など、財源の問題はあるものの、政策の方向性としては、基本的に正しいと私は思う。朝まで生テレビには民主党を代表して細野豪志氏が出席していたが、彼の説明は真摯で、論理的で、民主党の政策がしっかりと考えられたものであることを印象づけた。
ただ、民主党の政策で一番問題なのは、安全保障の問題だ。細野氏は「内政は大胆に変更し、外交は継続性を重視して徐々に変える」というものだった。その話を聞いて、私は最近新聞報道されているように、細野氏もいわゆる「現実路線」に転換しているのだろうなと感じていた。だから、インド洋での給油活動についても、「現実路線」を採るために継続するのだろうという思いで私は彼の話を聞いていた。ところが、細野氏の話は意外なものだった。来年1月の新テロ特措法の期限切れを機に、インド洋での給油からは退きたいというのだ。この考え方は正しい。憲法違反かどうかを議論する以前に、もはや、インド洋でのテロ対策に日本がかかわる本質的な必要性はなくなっているからだ。「アルカイダはアフガニスタンからパキスタンに拠点を移した」という説もあるし、給油の活動回数もかつてほど多くないし、何より一度テロ特措法の期限切れで自衛隊が撤退したため、日本が参加しなくても問題がないことが明らかになっているからだ。
ところが、細野氏が続けたのは、インド洋での給油を止めて、ソマリア沖での海賊対策に力を入れたいということだった。私は細野氏に、「日本の国益のために海外に自衛隊を派遣するということは、自衛隊を軍隊であると認めることではないのか」と聞いた。細野氏はそうではないと答えたが、私には、なぜそうなのかを説明する細野氏の話がよく理解できなかった。
ただ、民主党の代表が小沢一郎氏から鳩山由紀夫氏に代わって、防衛に関するスタンスがかなり変化した可能性があることは確かだと思う。小沢氏の防衛論に関して、私は全面賛成ではないが、議論がきちんと整理されていて、分かりやすかった。それと比べて、いまの民主党の防衛政策は、分かりにくくなっている。だから、私は、民主党が危険な方向に走る可能性は十分あると思うのだ。民主党が具体的にどんな政策を打ち出してくるのか、十分な注意が必要だ。
森永さんも指摘する、民主党の安全保障政策の「危うさ」。
「民主党政権誕生」が現実味を帯びてきた今、
「分かりにくさ」にごまかされず、
その方向性をきっちりと見極める必要がありそうです。
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