戻る<<

森永卓郎の戦争と平和講座:バックナンバーへ

森永卓郎の戦争と平和講座 第34回

090513up

もりなが・たくろう経済アナリスト/1957年生まれ。東京都出身。東京大学経済学部卒業。日本専売公社、経済企画庁などを経て、現在、独協大学経済学部教授。著書に『年収300万円時代を生き抜く経済学』(光文社)、『年収120万円時代』)(あ・うん)、『年収崩壊』(角川SSC新書)など多数。最新刊『こんなニッポンに誰がした』(大月書店)では、金融資本主義の終焉を予測し新しい社会のグランドデザインを提案している。テレビ番組のコメンテーターとしても活躍中。

こんなニッポンに誰がした
※アマゾンに
リンクしています

小沢代表辞任で日本の平和はどうなるのか

 5月11日に民主党の小沢一郎代表が突然辞任の記者会見を開いた。多くの人が、ある意味でこの事態を予測していただろう。小沢代表の公設秘書、大久保隆規被告が起訴されて以降、小沢代表は自らの進退について、総選挙に勝てるかどうかで判断するとしてきたからだ。私は、大久保秘書の逮捕自体に大きな疑問を持っているが、世間はそうみなかったようだ。読売新聞が5月8日から10日に実施した全国世論調査で、小沢代表の続投を「納得できない」とした人が71%に上っていたのだ。このまま行けば、選挙に勝てないかもしれない。そう思って、小沢代表は身を退いたのだろう。

 本校執筆時点で、新しい民主党の代表が誰になるのかは、明らかになっていない。しかし、誰が代表になるとしても、次期解散総選挙で、自民党中心の政権から民主党を中心とする政権に替わる可能性は、かなり高くなってきた。同じ勢力がずっと権力の座に居続けると、必ずといってよいほど腐敗が起こるから、政権は交代したほうがよいと思う。だが、問題は、小沢氏が退任したあとの、政権政党になる可能性の高い民主党が、どのような防衛政策をとるのかということだ。

 小沢氏は、野党共闘を重視する立場から、国民新党や社民党の主張にも耳を貸してきた。しかし、今後、民主党内部の権力構造によっては、政権交代が平和に結びつくとは必ずしも言えないのだ。

 例えば、すでにソマリアの海賊対策についても、民主党の立場は微妙だ。4月23日の直嶋正行民主党政策調査会長の談話もそれを物語っている。

(以下民主党ホームページから引用)

 国連海洋法条約は、旗国主義の例外として、全ての国に海賊取締りの権限を与えており、各国が主権の枠組みを超えて、連携して対策を講じる必要がある。民主党は、国連海洋法条約に基づく国内法整備の必要性を、以前から指摘してきた。また、貿易立国であるわが国にとって、船舶の主要な航路帯における海上輸送等の安全を確保することの重要性にかんがみ、「テロ根絶法案」において、政府に先駆けて、公海における航行の自由の確保のため、国際社会の取組に積極的かつ主導的に寄与することを規定したところである。

 ソマリア沖アデン湾の海賊対策は、累次の国連安保理決議が発出され、各国に積極的な取り組みが要請されている。同海域に艦船等を派遣して海賊対策にかかる活動を行うことは、わが国のみならず、国際社会に対する貢献である。

 民主党は、わが国における海賊対策は、一義的に海上保安庁の責務と考える。そのため、海上保安庁がしかるべく対応できるよう、体制の整備を図る必要がある。海上保安庁のみでは対応が困難な場合は、シビリアン・コントロールを徹底する見地から、国会が関与する等の仕組みを整えた上で、海賊発生海域に自衛隊を派遣することも認める。また、武器使用基準の拡大についても、海上における警察活動であることから、警察官職務執行法に認められた武器使用に加えて、海賊行為を未然に防ぐための危害射撃を行うことも、やむを得ないと考える。

 しかるに、政府から提出された「海賊対処法案」は、海賊対策は海上保安庁が一義とされながら、防衛大臣が特別の必要がある場合を判断し、閣議を経て、自衛隊を出すことが可能となっており、判断の主体が海上保安庁ではない点に問題がある。また法案提出前に、自衛隊派遣ありきで、海上保安庁では対応が困難なのかという検討を先送りにしたまま、わが国周辺海域を想定し、かつ恒常的活動ではない海上警備行動を根拠として、海上自衛隊を泥縄式に派遣したことは、極めて問題である。

(以上引用)

 ここから明らかなように、民主党は政府がソマリア沖に自衛隊を派遣すること自体に反対しているのではなく、十分な議論なしに派遣したことを批判しているのだ。しかし、ソマリア沖への派遣は、国連のPKOに自衛隊を派遣することよりも、ずっと強い意味を持っている。PKOは国際貢献として平和維持のために自衛隊を派遣するのに対して、ソマリア沖への派遣は、基本的には自国の船舶を護衛するために派遣するのだ。つまり国益のための派遣だから、憲法に抵触するおそれが一層高いのだ。

 民主党のなかには、自民党と同じように、国防政策について幅広い考え方が存在する。しかも与党になれば、それがすぐに国の政策として実施されてしまうのだから、我々は政権交代が行われるか否かという視点だけでなく、民主党のなかでどのような人たちが権力を握るのかということについても、高い関心を持ち続けないといけないのだと思う。

「小沢辞任」で選挙はどうなる? だけがクローズアップされがちですが、
重要なのは「そこからどうなるのか」のはず。
仮に政権与党となったとき、民主党はどんな政策を掲げるのか?
惑わされず、しっかりと見ていく必要があります。
ご意見フォームへ

ご意見募集

マガジン9条