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昨年9月に発足した安倍内閣を、
“参院選挙までは深く潜行して波風を立てない”
潜水艦にたとえていた森永さん。
さて、その「サブマリン内閣」のその後は?
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昨年10月の本稿で、私は安倍内閣は、「サブマリン内閣」だと書いた。参議院選挙までは、大人しくしておいて、参議院選挙で勝利すれば、2年間は国政レベルの選挙がないことをよいことに、国民生活を破壊する増税や戦争に一気に突き進んでいくだろうと、内閣発足時点で予測したのだ。その考えはいまだに変わっていない。
臨時国会で、教育基本法案と防衛庁を防衛省に昇格させる法案を成立させ、国民投票法案も今国会で成立させるべく、審議が着々と行われている。これだけの大きな変化が生じているのに、国民の多くは戦争の危機感を持っていない。サブマリン戦略は見事に成功しているのだ。
それだけではない。最近、もう一つのサブマリンが行われている。従軍慰安婦問題だ。今年1月末、米国の7人の議員が従軍慰安婦に関する対日非難決議案を提出した。06年9月13日に可決された日本政府に慰安婦の責任を求める決議よりも、さらに厳しい内容の決議案だ。決議案は「日本政府は、1930年代から第二次世界大戦にかけてのアジア・太平洋地域の植民地支配と占領の時代に、日本帝国軍への性的役務に従事させることを唯一の目的として若い女性を集めることを委任した」と、日本政府が慰安婦の募集に積極的にかかわったとして、この事実を認め、公式に謝罪し、この事件を繰り返さないように事実を教育すべきだとしている。
安倍総理は、3月5日の参院予算委員会で、この対日非難決議案について、「決議案は客観的事実に基づいていない。決議があっても謝罪することはない」と述べて、決議案には同意できないことを強調した。
安倍総理は同時に、従軍慰安婦問題に関して1993年の河野洋平官房長官談話を継承していくと明言している。河野官房長官談話とは、「慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった」として、慰安婦問題への日本軍の関与を認め、政府として謝罪した談話だ。
しかし予算委員会答弁で安倍総理は「官憲が家に乗り込んで人さらいのように連れて行くような強制性はなかった」と述べて、広義の強制はあっても、狭義の強制性はなかったという見解を示したのだ。
私が驚いたのは、4月2日放送のTVタックルの収録で、自民党と民主党のほとんどの議員が、「本当は強制的な連行はなかったのだけれど、河野談話の出された当時の対韓外交を円滑にするために、妥協の産物として河野談話は出されたのであり、旧日本軍の関与はなかった」と主張したことだ。共産党の議員は反論をしたが、与党と民主党の議員から、日本軍による強制はなかったという意見への反論はまったく出なかった。
日本の裁判でも、強制的に慰安婦にされた事実が認定されているので、狭義の強制がまったくなかったというのは事実に反すると思うが、どれだけの規模で慰安婦の強制連行があったのかは、正直言ってよく分からない。
しかし、本質的な問題は、軍による強制がどの程度あったかではなく、日本人を含めた慰安婦の人たちが、慰安所の劣悪な環境なかで心や体を蝕まれ、生命を失う人がでるほど、悲惨な生活を強要されたという紛れもない事実だ。
そしてそうしたことが起こった最大の原因は戦争にあるのだ。慰安婦問題は戦争という狂気のなかで生じている。もちろん、慰安婦の方々への謝罪は必要だが、最大の反省は二度と戦争をしないという不戦の誓いをすることだろう。
ところが、いま安倍内閣は憲法改悪に向かってまっしぐらに走り続けている。そのこと自体が、従軍慰安婦について、安倍総理が何の反省もしていない何よりの証拠だろう。慰安婦問題で本当に心を痛めているのであれば、戦争は放棄するけれど、戦力は保持するなどというおかしな憲法を作ろうとはしないはずだ。
政府は、3月30日の閣議で、7月末に期限が切れるイラク復興支援特別措置法を2年間延長する改正案を決定した。アメリカの議会がイラクからの撤退を決議するなかで、日本はどのような支援がイラク国民に最も役立つのかをろくに検討もせずに、戦地での自衛隊の活動継続を決めたのだ。
安倍サブマリン浮上への助走は確実に進んでいる。にもかかわらず、国民の多くがそれに気づいていない。私はそれが最大の「平和ボケ」なのだと思う。
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着々と、「サブマリン浮上」への準備を進めていく安倍政権。
気がついたときには、完全浮上してミサイルを撃ちまくっていた――
そんなことにもなりかねません。 |
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