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ゾマホンという人をご存じでしょうか。アフリカのベナン共和国出身で、テレビ番組の「ここが変だよ日本人」に出演して一躍有名になり、『ゾマホンのほん』(河出書房新社)がベストセラーにもなりました。ベナン共和国はアフリカ西部、大西洋に面した小国で、人口は627万人、一人当たりGDPは600ドルという最貧国です。ゾマホンによると、600ドルというのも過大推計で、実際にはその半分くらいだろうと言います。
ゾマホンは、国費留学生として北京言語文化大学に留学したあと来日し、いまは上智大学で社会学を学ぶ大学院生です。英語、フランス語、中国語、日本語を自由に話す秀才で、ベナン共和国のなかではエリートなのですが、彼にはもう一つの顔があります。それは、世界の平和を守り、ベナンから貧困をなくそうとする活動家だということです。
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ゾマホンは言います。「世界の国の憲法のなかで、日本の憲法ほど正しく、美しいものはない」。確かにいまの日本国憲法は占領軍から与えられたものかもしれません。しかし、経緯がどうあれ、日本国憲法が戦後ずっと日本の平和を守ってきたことは事実です。戦争を放棄し、国軍を持たないという憲法の精神は、世界に誇れる日本の財産でしょう。
さて、ゾマホンは手取りで約2000万円あった本の印税で、2000年から2001年にかけて、ベナンに「たけし小学校」、「江戸小学校」、「明治小学校」という3つの小学校を建設しました。「さかなが欲しい人には、さかなの捕り方を教えなさい」というのがゾマホンの考え方です。自立して食べて行けるようにするためには、まず基礎教育が必要なのです。
また日本からの技術移転が不可欠と考えるゾマホンは、2003年9月、ベナンに4つ目の彼の学校、「たけし日本語学校」を設立しました。ここは授業料も無料です。ゾマホンの稼ぎから運営費も捻出しているからです。
ゾマホンの日本での生活は、1週間が上智大学での勉強、そして次の1週間がビートたけしさんの付き人という繰り返しです。ゾマホンの学校に「たけし」という名前がついているのは、尊敬するビートたけしさんから拝借したものなのです。
たけしさんに聞くと、ゾマホンは稼ぎのすべてをベナンの教育環境支援のために送金してしまうので、下手をすると自分が栄養不足で倒れてしまう。自分の近くに置いておけば、食うには困らないので、付き人をさせているのだそうです。ゾマホンはそんなたけしさんを「神様」と呼んで、とても感謝しています。
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ゾマホンの目下の課題は、小学校に井戸を掘ることです。衛生的でおいしい水が子供たちには不可欠だからですが、アフリカの事ですから、最大150メートルも掘り進まなければならず、コストは日本円で150万円もかかります。
ただ、みなさん、ちょっと考えてみてください。ミサイルは一基1億5千万円もします。それを軍事演習でどんどん撃ちます。その一基で井戸が100本も掘れてしまうのです。それは、十万人以上のベナンの人の命を守ることにつながります。
私は防衛費に税収の1割も使うくらいだったら、そうした井戸を掘った方が、現地の人に感謝され、日本の世界での地位を確立し、そして結果的に日本の安全保障の確保にもつながると思うのです。
日本を「神様」と思ってくれる国が多ければ、ならず者国家が日本を侵略しようとしたときには、必ず声をあげてくれると思うからです。 |