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2011-05-16up
松本哉ののびのび大作戦
第59回:バンザーイ! バンザーイ! 原発ゼロ祝賀パレード挙行!
今回は前回お知らせした香港での東アジア大バカサミットがよかったので、その報告をしたいところだけど、日本に帰ってからすぐに高円寺でひと騒動起こってしまったので、今回はちょっとそのことに触れてみよう。
さて皆さんご存知の通り、5月5日、あの超危険物体=原発がひとまず全部停止した。いや〜、これはめでたいめでたい! タバコの煙やら道に落ちてるチリ一つで大騒ぎする超神経質社会の日本で、原発が大爆発して汚染物質がバラまかれたもんだからもう日本中大パニックで、一瞬で全部なくなるのかと思ったけど、なかなかしぶとかった。金と権力を持ったやつらのしぶといことしぶといこと…。普通に考えたら、「地震だ! 火を消せ!」と子供の頃から教わったように、飛び上がって驚いて一瞬で全部止めると思うんだが、結局1年2ヶ月もかかってしまった。でも、とりあえず止まったには止まった。
よく考えてみたらなんと、全原発が止まった明るい未来への記念すべき日はこどもの日!!! そ、そうか。そうだったのか! 野田首相! そんな粋な計らいを考えていたとは…。そうか、突如として大飯原発再稼働の動きを見せてみんなをヒヤヒヤさせるというサプライズまで用意して、この祝福すべきこどもの日を演出してくれたのかもしれない…。いや、そうに違いない! う〜ん、泣かせるねえ。
野田首相バンザーイ! みんなで自民党に入ろう! あれ、野田首相って政党どっちだっけ? ええい、もう似たようなもんだ。どっちでもいいや。みんなで両方に入ろう!!! …と、粋な計らいに感謝したいところだが、よくよく考えてみると、首相のおかげではなかった。やっぱりやめた! 自民党に入るのはやめだ! こりゃ、どう考えても民衆の勝利だ。原発事故が起こってからすぐに、被災者追悼の自粛ムードのドサクサでお上に楯突いちゃいけないような雰囲気が生まれ、さらに電気が足りないというデマまで流れ、また例によって沈黙のうちに政府が勝手なことをやり始めるのかと思ったら、今回ばかりは違った。去年の4月10日の高円寺デモを皮切りにとんでもない数のデモが巻き起こり、著名人から飲み屋のオヤジまで、いろんな人が「原発よくない」と表明しまくり、大きな世論が動き、約80%の人が「原発はなくなった方がいい」と言うに至っての、今回の全停止だと思う。世論が動かなかったらさっさと再稼働しまくっていたかもしれない。う〜ん、すごいすごい! 日本の歴史を見ても珍しいんじゃない? これ? さあ、そうなったらもう祝うしかない!
もちろん、原発って止めたからなくなるってもんじゃない。大量の核廃棄物も山積みだし、汚染されてしまったところの問題もあるし、そもそも廃炉作業自体が大変。つまり、これからが原発ゼロへの長い道のりのスタートってことか。いやー、よくもまあこんな厄介なものを後世に残してくれたもんだね、本当に! でも、そんな時に当の原発が動いてちゃ話にならない。今回全原発が止まったことで、ついに次のステップに行けるってもんだ。…ということで、そういう意味でも今回の原発停止は相当におめでたい節目の出来事! 今回祝わなかったら、全原発・全廃棄物の処理が終わるのは下手したら数万年後! おいおい、そんなの待ってらんねえよ! 人類だっているかわかんねえ! 冗談じゃねえ、祝わせろ!! さあ、第1段階クリアの超巨大祝賀パレードの開催だ!!!!
で、こうなったら史上最大のわけのわからない会議=「脱原発杉並」でも提案してみないと、ってことで、会議に行ってみた。本来はかるく「こんなのやろうと思ってるんですよ~」と、提案するぐらいに思ってたんだけど、町の長老やら、ママさんやら、店のオッサンやらが「いや、そうと来たらみんなで6日にやったほうが面白いんじゃないか?」ってことになり、なんと総力戦で6日に祝賀パレードをやることに!!! 当初13日に反原発デモを行うことで決まっていたにもかかわらず「臨機応変にやらないとデモの意味がない。それに、急に変えるところがまたいいでしょ!」ってことで、直前にもかかわらず本当に予定変更!! 軽い! すばらしい!
さて、めでたい祝賀パレード前日! つまり、5月5日のまさに原発が止まろうとしている時、「さー、いよいよ明日だな~」と思って、店番をしながら「いや~、明日はめでたいから紋付袴で行きたいな~。誰か持ってないかな~。買ったらメチャクチャ高いしどうにかならないかねー」などと雑談をしていたら、ちょうどそのときお店に買い物に来ていた近所のおばちゃんが「そんなの買うことないわよ! 私が何とかしてあげるから!」と話しかけてきた。おお、すごい! で、「お祝い事? 結婚式かなにか?」というので、「いやー、ついに原発がゼロになったから、明日は祝賀パレードがあるんですよ」と答えると…、「まかしときなさい!」と、おばちゃん。おお、ノリが異常にいいね!!
で、早速方々に電話かけてくれたりして動き始めた。おお、すごいすごい。結局、手に入る可能性があるのは、明日の中野の骨董市ということになり、「明日の朝電話するから!」と、去っていった。いやー、心強い!
さて、これで安心と、店番をしているといろんな人から連絡が来て、「高円寺の駅前でカウントダウンパーティーやってるって本当ですか?」という連絡が入ってくる。どうやらこの日の夜11時に全原発が止まるので、それにあわせてカウントダウンをするのではないかという。そんな話まったく聞いてなかったので「いやー、聞いてないね。それはデマでしょ!」と、次々と追い返していると、なんと「脱原発杉並」の人たちが本当にやってるという! やばい、だいぶ返してしまった! すまん!!!
で、店番が終わってから行ってみると、11時はすでに回っており、カウントダウン自体は終わってしまっていたが、駅前広場に人が集まってビールやらお茶を飲みながら、なんだかバラバラに巨大な横断幕を描いたり、いろいろと準備をしていた。出た!! 脱原発杉並の面々だ! うーん、すでに祭りは始まりつつある感じだ。
しかし、いつも思うが、こういう人々がいる高円寺の町の雰囲気は自由でいい。周りにもスケボーの若い奴らもいれば、普通に集まって飲んでる奴らもいる。いやいや、盛り上がってきたね!!
そして翌朝! 例の紋付袴のおばちゃんから電話が鳴り「見つけたわよー!! いまから持っていくから」と、テンションの高い電話! 早速飛び起きて、店に行き紋付袴を受け取る。おおー、すごいすごい、雑談もしてみるもんだね~。デモと同じで声を出してみるってのはいいことだね、本当に。
で、まったく着方を知らなかったことを思い出し、その場でおばちゃんに着方を教えてもらう。よっしゃ、これで完璧だ! いやいや、景気よくなってきたね!
そして数時間後、祝賀パレード寸前。いよいよ着ようとしたら、着方を全部忘れてしまっていた。しまった! やられた!! しかも襦袢の帯が1本どこかへ行ってしまっていたので、店で使う荷物の梱包用のロープで結んだりと苦戦していたら、今度は町内会のおばちゃんがフラっと現れた。「昼食を食べにレストランに行ったら、満席だったのでちょっとヒマを潰しに来たのよ」という。ああっ、確かこのおばちゃん、たまに着物着て歩いてる! これは千載一遇のチャンス! ってことで、「着物着せてくださいよ!」とお願いすると、これまた快くやってくれる。そこへ、最近できた新しい雑貨屋の「素人の乱・未完成」のフーちゃんが、寝ぼけた顔をして「なにやってるんですか~?」と、タイミングよく現れた。フーちゃんも着物を着るので、また手伝ってもらう。もはや親戚のおばさんとお姉さんに着物を着せられる子供みたいな状態で、完全に七五三以外の何者でもない! ちがうちがう!
最初、袴のサイズが合わないという問題があったときに、商店街中に「袴ないですかね~」と聞いて回ったので、着終わってパレードに向かおうと、商店街を歩いていると、ジイサンさんバアサンやらに「おおっ、ちゃんと着たねー」「よう、似合ってるな!」などと声をかけられまくる。こら! 七五三じゃないんだぞ!!
さて、そんな感じでパレードが始まるわけだが、その報告をいまさらするのも癪に障るのでしない。ただ、デモ後はまた前回の脱原発杉並デモに引き続いて、高円寺を中心に「デモ割」の飲食店が続出! 当日はそのマップまで配られて、またも町ぐるみのデモと化してしまった。う~ん、すごい!
さて、今回また改めて思うが、駅前広場で準備もできるし、「着物が着たい」と言っただけで手に入るわ着せてくれるわで、何とかなってしまうし、こういう人と人のつながりが残っている街っていうのが、「原発やめろデモ!!!!!」にしろ「脱原発杉並」のうまく行ってる根本なのかもしれない…。うーん、今から思うと、去年の4月に超巨大デモが高円寺で巻き起こったのも、明らかにこの人のつながりが作用していた。やはり、日常的にやっている謎の場所作りってのが大事なんだなと再確認してしまった!! いやー、やはり店もしっかりやっておかないとな~。
…ってことで! 次回はついに、その場所作りをやってる東アジア各地の奴らが集まってしまったという香港作戦の報告!! あ、ちなみにこの原稿を書いてる今、なんと台湾にいる。何で台湾にいるかも含めて、また次回!!
警察1、隣人3、大家さん3。この数字が何を意味してるかは次回!
東アジア有象無象サミット
九州大混乱! 報告ツアー
25日 福岡
26日 未定
27日 熊本
28日 鹿児島
★詳細は次回またはブログ「素人の乱5号店・店主日記」をチェック!
6月6日
トークイベント
「潰れそうで潰れない店」
BAR「バグハウス」(下北沢)
6月9日
「松本哉と山下陽光のわけわかんない話」
途中でやめる×素人の乱
神戸
*
補助金のバラマキによって、
多くの地域に分断をもたらし続けてきた「原発」というシステム。
それを思えば、地域社会を「力のある」ものにしていくことも、
ひとつの「脱原発」の形であり、違う社会の仕組みをつくる第一歩、のはずです。
ちなみに今月13日には、杉並のお隣・中野区でも、
「脱原発中野も」(誤字ではありません、念のため)が立ち上がったとの情報。
ここからどんどん「地域発」が広がっていくことを期待します。
そして松本さんの「七五三」雄姿(?)は、
先週の「雨宮処凛がゆく!」でどうぞ!
松本哉さんプロフィール
まつもと・はじめ「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、編著に『素人の乱』(河出書房新社)。「素人の乱」公式ホームページ
「松本哉ののびのび大作戦」
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松本哉さん登場コンテンツ
- 2010-12-22日本で韓国で「のびのび大作戦」
【この人に聞きたい】
松本哉さんに聞いた
- 2008-01-09その1:路上を僕らの解放区に!
- 2008-01-16その2:消費するだけの街から文化は生まれない