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2011-03-09up

松本哉ののびのび大作戦

第40回:商店街活性化に未来はあるのか!?

 さあ、たまには景気の悪い話。
 前にも言ったかもしれないが、去年はヨーロッパに行ったり韓国に行ったり、日本各地を回ったりとウロチョロしていたせいで、本業のリサイクルショップの経営が傾き始めた(毎度のパターン)。ということで、最近はわりと真面目に高円寺に落ち着いて、店をやっている。それに、うちの店のある高円寺北中通り商店街の副会長という超地味な役職を仰せつかっていることもあり、街についても考えることも多い。…まあ、そんなわけで、今回は商店街の活性化について書いてみよう!

 高円寺の北中通り商店街に素人の乱が店を出してから、もうすぐ6年が経とうとしている。当初はどんどん引退して閉店していく店が続出しており、完全にシャッター商店街への道を進んでいた。ところが、当時の商店会長も相当器のでかい人で、どんどん空き店舗を紹介してくれたし、素人の乱も調子に乗って次々に出店したりしてたら、気づいたら新しいお店がどんどんオープンするようになってきて、空き店舗は埋まるし、人通りも増えてくるし、なかなかいい感じになってきた。
 ところが!!! こうして商店街ににぎわいが戻ってき始めた矢先に起こったのが…、なんと建て替えラッシュ! 北中通り商店街のあたりには戦前の建物もたくさんあり、中には大正時代に建てられたかなりかっこいい店まであった。ところが、こういう建物が次々と取り壊され、パネルを張り合わせたような仮設住宅みたいな建物がどんどん建っていく。で、そういうところは新築だし見栄えだけはキレイだから家賃が以前の倍近くになってしまう。何を隠そう、素人の乱5号店(リサイクルショップ)のうちの店の一つも、以前は8万円で借りていたところが、建て替わって一回り大きくなったものの家賃が16万8千円まで跳ね上がってしまった! う~ん、こりゃヒドイ! もちろんこれはうちに限らず、そんなところが続出している。いや、むしろ日本中で聞く話だ。
 いまはまだ、そこまで激しくはないが、このまま商店街の活性化が進んでいけば、さらに建て替わったり家賃が上がってきたりするかもしれない。そうなったら、貧乏な個人商店はいられなくなってきて、コンビニだとか大手チェーン店しか入れないような街になってしまうかもしれない!
 仮にそうなったとき、貧乏商店はどうすればいいかというと、その物件を買っちゃうか、ほかの寂れたところに移動するしかないってことになってしまう! おいおい、それじゃ活性化の意味がないぞ! 買えるほど儲かってりゃいいが、そう簡単にいくもんでもないし、じゃあ、転々としているのも大変だ。それに、仮に寂れたところを盛り上げて回ることができたとしても、その地域の家賃を上げてチェーン店だらけの街並みに変えてまた去っていくんじゃ、単なる迷惑者だ。そんなので喜ぶのは土地持ちと不動産屋だけだ。これじゃしょうがない。

今は亡き“味二番”。名前のインパクトもあって高円寺のランドマークの一つだった

 …で、そんな事情をわきまえてなさそうな行政側ではしきりに「商店街の活性化を!」とか言いやがる。補助金もどんどん出してくる。まったく、何も考えてないね~、金出しゃ街が活気づくと思ったら大間違いだよ。再開発とかもそうだが、誰が店員かわからないようなチェーン店なんかが増えたら、地域のつながりもなくなってきて、それこそ街が死んじゃう。そんなのだったら、空き店舗を行政で借り上げちゃって、むやみな賃上げや建て替えから守ったり、べらぼうに高い保証金や礼金の負担を軽減してくれたほうがよっぽどためになると思うけどね。
 あ、ついでに言っとくと、空いてるけど面倒くさいから貸さないっていう物件も問題だね。これ、地方都市なんかによくあることだが、「別に金に困ってるわけじゃないので、変にトラブルとかが起こるぐらいだったら物置にでもしといたほうがいいよ」という大家さんが多く、空き店舗を貸さずに放置している例がよくある。ま、確かに年取ってまで面倒なイザコザなんか嫌なのもわかるが、これじゃ、地域活性化もヘッタクレもない。これも行政でもいいし商店会や自治会とか、地域の組合でもいいけど、誰かが間に立って面倒なところを取り除いてやらないと、一向に貸さなそうだ。ただ、やはり行政の場合だと、上から謎の都市計画の方針なんかが下りてきたら、一瞬で裏切りかねないので、やっぱり地元の自治組織のほうがいいとは思うけど…。
 まあ、いずれにしろ、土地持ちと不動産屋が結託して、土地から取れるだけの金を生み出そうというもくろみを野放しにしておいたら、商店街なんか活性化するわけはない!!

ちなみに、いま味二番跡地はこんな感じ!

 さてさて、そんな感じではあるが、じゃあ金持ち連中に都合のいい奴隷と化して、金もうけのしやすそうな街づくりをするかっていうと、そうは問屋がおろさない。行政のテコ入れなんかを待ってたら一体いつになるかわからないので、自力でもいろいろやってみよう。
 まあ、ひとまず「ここで正攻法で金儲けをするのは無理だ!」と金もうけ連中に思わせなきゃいけない。それに当然、地主や不動産屋の中にも意外といい人はたくさんいるので、その辺の人々と仲良くしつつ「もういいよ、この辺は。好きにやって」とあきらめさせるように持っていこう!
 じゃあ、どうすんだ!? ということで、最後に例をあげてみよう。

  • 商店街で七輪でサンマを焼いてみる
  • むやみに近所の人と立ち話をしている
  • 部屋着やパジャマ、ノーメイク、どてらなど、完全に油断した格好で街をウロつく(ヘアカーラーをまいたおばちゃんやステテコに腹巻のオッサンなどgood!)
  • 明らかに儲かってなさそうな店がなかなか潰れずにケロっとしている
  • 銭湯通いの奴が多い
  • 道でご飯を食べてる奴がいる
  • 酔っ払いが多い
  • 路上で将棋を打ってみる
  • 商店街放送でレゲエがかかっている
  • 蕎麦屋の出前自転車がコケて大惨事になり、近所の人が集まってみる
  • 泥棒を追いかける
  • 学校帰りの小学生を集めてインチキな教材を売ってみるがあまり売れない
  • ボケ老人が歩いている
  • やたらでかい荷物を持って歩いてる奴が多い
  • もちつき大会でオッサンが本気で餅をつき続ける
  • くだらないケンカが多い
  • マンホールによく落ちる

…などなど。 諸君! 健闘を祈る!!!

 
【スケジュール】

3月14、21、28日
のび太のカルトPUNKROCK&HIPHOP講座
ドイツから遊びに来ているルーカス氏(通称のび太)が持ってきた大量のカルト音源を一挙に披露!
→なんとかBARにて

 

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大手チェーン店やコンビニばかりが立ち並び、
キレイだけど画一的でさっぱり面白くない。
全国がそんな商店街ばっかりにならないよう、
値上げ、建て替えの拝金主義に対抗して、
こんなマヌケで地道な「闘い」を!?
さて、まずは何から始めましょうか。

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松本哉さんプロフィール

まつもと・はじめ「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、編著に『素人の乱』(河出書房新社)。「素人の乱」公式ホームページ

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