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2011-01-19up
松本哉ののびのび大作戦
第27回:悪魔のファシスト集団との大乱闘! ヨーロッパツアー(3)
辛うじて集まった連中が足早に現場へ向かうマヌケな光景
みなさん、あけましておめでとうございます。今年も貧乏人のひと騒動で、金持ち中心社会を懲らしめていってしまおう!
さて、今年は新春早々、高円寺で貧乏人デモが発生しており、これまた相当面白い事態に発展した! いや、あれはすごかったね! 新年らしく、その報告からスタートしたいところだが、前回予告した通り、フランス作戦の報告の最終回が残ってるので、新春作戦の報告はまた次回。 ってことで、恐怖のファシスト集団との地獄の決闘から2011年はスタート! うん、これはこれで、またいいね!
フランスのRennes(レンヌ)という街のスクワットでイベントをやったとき、イベント後に飲んでいると、Antifa(反ファシストの運動)の人から「土曜の朝に反ファシストデモをやるから来ないか?」と誘われた! イベント中にも「ちょっと、一言いい?」と、土曜のデモの宣伝で大アジテーションするわ、飲んでる時も、いかつい奴らが“Antifa hooligans(Los Fastidios)”という歌を、ものすごい人数で絶叫しまくってるし、こいつは大変なことになってきた。いや、ついにファシスト征伐か! これは恐ろしい!! ま、断って、日本人のへっぴり腰ぶりを知らしめたいところだが、飲んでる勢いもあり「もちろん行くよ」と快諾!!
「よし、朝9時15分に集合だ。少し早いがファシストとの戦いだから頑張ろう」みたいな事を言っていた。聞くと、その日の朝にファシストの集会があるとの事で、それに対する戦いだと言う。なんと、直接対決か! しまった、また安請け合いしてしまった!! やばいやばい! ヨーロッパの右翼といえば、日本のような大仏ヘアスタイル&演歌とは違って、スキンヘッド&超巨大&笑わない&すぐ殴る、というやる気満々の連中で、愛嬌が一つもない。おい、果たして生きて日本に帰れるのか!?
前日の夜、有名なアナキストBARで日本勢のライブイベントがあった。その時もAntifaのバッチを胸につけた重鎮パンクオヤジ(どの町にも必ずいる)がいたので、「Antifaいいですね~」と話しかけると、「そうだ。明日はデモがあるぞ」という。行きますかと聞いてみると「いや~、行きたいけど朝早すぎるから難しいな」という。挙句の果てには「行けたら行く」と、日本人みたいなことを言い出して、大量の酒を飲みまくっている!
早くも雲行きが怪しくなってきた。
で、翌朝。なんとか起きて行ってみたものの、こちらも飲みすぎているのでもちろん遅刻。30分以上遅刻して10時近くになっていたのでもう無理かと思ったが、そこはさすがフランス! まだ10人ぐらいしか集まっておらず、昨日の夜は相当強そうだった、やたら黒い服を着た兄ちゃんや、パンクス兄ちゃんなどが「さむいさむい」と、小さくなって震えながら待っている。到着すると、モヒカンの重鎮パンクオヤジ2(昨日とはまた別の人)などが「おおー、よくきたな!」などと大喜び。で、「コイツは、クラストコアのとんでもないバンドでギター弾いてるんだぜ! 最強だ!」などと人を紹介してくれたりするんだけど、その当人は「う、うん。いや~、さむいさむい」などと震えている。説得力ゼロ。
パラパラと少しずつ仲間も集まっては来るんだが、どうも集まりが悪いので「とりあえず、お茶を飲もう」ということに。一向に始まる気配がないなと思っていたら、10時半ごろになってやっと、主催者の兄ちゃんが完全に寝起きの顔で登場! さあ、いよいよファシストと大乱闘か!? 大変だ大変だ、救急車を呼べ! と思ったら、その兄ちゃんもカフェに入ってきてとりあえずお茶を一杯。ワインを飲みだしてる奴もいる。おい、ファシストの集会終わっちゃうんじゃないのか?
しばらく歓談が続き、11時ごろになってようやく「そろそろ行くべえ」ということになる。遅い遅い。
その頃には30人程度になっており、辛うじてカッコがつくぐらいになってきた。さて出発してみると、今度は早い早い。寒いもんだからパッパパッパと歩き出し、口々に「ファッキン・コールド!」とか「アンチ・ウインター! アンチ・ソーラーシステム!」などと意味不明なことを口走りながら歩いていく。
さあ、いよいよ敵の集会場まで到着し、ファシストと遭遇!!!!!!!
ところが! なんとファシストの連中はたったの3人! しかも集会場といってもただのカフェでお茶を飲んでいる! どうやら、敵も寝坊してようやく集まったんだろう。ありゃ、こりゃ拍子抜けだ。こちら側のモヒカンやら黒やら革ジャンやらの30名もの、やる気満々だった連中も「おや?? これだけ?」って感じに。
せっかくなので、この恐怖のファシスト3人の様子を紹介してみよう。まずはボス格と思われる、少しガタイのいいスキンヘッド男。そして子分風でちょっとオドオドした髪モジャ男。さらに、中堅風のモミアゲ男。様子から察するに、ジャイアン、のび太、スネ夫のポジションと思われる。非常にマヌケな3人組だ。
ところがAntifa側の血気盛んな奴は、「てめえ、コノヤロー!」と、駆け寄り、いきなりモミアゲ男(スネ夫)につかみかかる(スキンヘッド男じゃないのがポイント)! こちら側でも、そいつに続いて店内に駆け込んでファシストを怒鳴りつける奴もいれば、「いやいや、もういいよ。そんなことやったってしょうがないよ」となだめる奴、お腹が空いたのか、その辺の店をウロウロし始めるやつなど、Antifa側はまったくまとまりがない! 「やっちめえ!」とか「やめろやめろ、かわいそうだ!」とか、いろんな怒号が飛ぶ。で、勝手に押しかけた割に、こちら側でザワザワしていると、カフェの店主のオッサンも駆けつけてきて「まあまあ」と仲裁に入る。悪魔のファシスト集団もさすがに退散することになり、とりあえず会計を済ませようと、スキンヘッド男が向こうを向いた隙に、誰かがそのボウズ頭に思いっきりゲンコツを2発お見舞い!! よほど痛かったのか、スキン男も飛び上がって驚き、のび太はのび太で、自分に矛先が来ないように空気のようによそよそしい顔で真正面を向き、微動だにしない! で、ああだこうだと揉め事が続いた!
さて、そうこうしているうちにバカバカしくなってきたのか、引き上げることに。
後で詳細を聞いたら、最近どうもRennesにファシストが登場して、サルコジの政策に抗議するゼネストに反対したり、移民排斥を訴えたりと、くだらないことをやらかし始めたという。さらにはAntifa側の一人がファシストに殴られたりした事件も起きたとのこと。それで、ファシストを台頭させないための行動だったという。なるほど、ファシスト台頭を許さないためには重要な行動だが、しかし実にマヌケな戦いでもあったな・・・。
まあ、とりあえず、こんな感じで1カ月にも及ぶヨーロッパ作戦は終わった。当然、報告しきれないぐらい色々なことがあったわけだが、やはりいろんなところに行くと勉強になるね! 環境の違うところには、どんどん顔を出していったほうがいい。皆さんも、むやみやたらとウロついてみてくれ! 貧乏人ネットワークをたどっていけば、たいしてお金もかからないはずだ!
さて、そうこうしてるうちに、そろそろ高円寺の店が傾き始めているころなので、ちょっとしばらくは高円寺にいるようにしよう! …ってことで、みなさん、今年もよろしく!!!
【今回の戦闘結果】
地獄のファシスト軍団:3人
アナキスト勢:約30人
戦闘時間:約5分
成果:タンコブ2個
1月28日(金)
「六カ所村核再処理場」が
試運転の今、もうやらかしてること
永田文夫/鶴見済/松本哉
18:30~ 素人の乱12号店にて
1月24日(月)
「なんとかBAR」店番
20時ごろから!
http://www.shirouto.org/nantokabar/
*
海を越えた向こうでも、
なぜかどこかマヌケに脱力、の「のびのび大作戦」。
ともあれ、無事の帰国、何よりです!
次回以降、地元・高円寺からの久しぶりのコラム、お楽しみに!
松本哉さんプロフィール
まつもと・はじめ「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、編著に『素人の乱』(河出書房新社)。「素人の乱」公式ホームページ
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