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松本哉ののびのび大作戦:バックナンバーへ

松本哉ののびのび大作戦

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これまで「高円寺一揆」や、「クリスマス粉砕デモ」など、
数々の脱力系にして最強の「運動」を繰り広げてきたカリスマ店主、
松本哉による待望のコラム連載がスタートです。
来るべき世界恐慌には、この作戦で立ち向かえば、怖くない?。

まつもと・はじめ 「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、編著に『素人の乱』(河出書房新社)。「素人の乱」公式ホームページ

『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)

※アマゾンにリンクしてます。

第4回「長野大作戦! ~長野の山中にブルース・リーを見た!~」

 長野の山中にとんでもないリサイクル屋があるっていう話を前回ちょっとした。
 以前、買い付けがてら立ち寄ったことがキッカケで知り合った、この店の店主=ジローさんが高円寺に遊びに来たとき、「うち、いま倉庫片付けてるからほしいもの分けてあげるよ。ついでに素人の乱のイベントもやろう」との誘いを受け、買い付けがてら、ドキュメンタリー映像の『素人の乱』を上映することになった(ちなみに、この店の名はいまだに不明。入口の看板には「なんとなくリサイクル あ~あ~、果てしない~♪」と書いてあり、店名の可能性あり)。
 ってことで、長野遠征が行われてしまった。買い付けとイベントのついでに、高円寺の倉庫に山のように積まれた廃材を捨てに行くこともできる! 長野で薪ストーブの燃料にするのだ。おお、これは一石三鳥だ!

 2月20日早朝、我が素人の乱5号店の誇る伝家の宝刀=2tトラックに廃材と高円寺のヒマ人を満載して、北へ向かった。そして、雪道を避けるために関越道に乗り、少し走ると…、なんと、我が最終兵器=2tトラックが黒煙を噴いて停車!! 早い! まだ埼玉だ! これはまずい…。ただでさえ引越しシーズンで不用品がでまくっており倉庫が満杯なので、このまま荷台に満載したゴミを持って帰るハメになったら一大事だ。店がゴミ屋敷になる!
 でも大丈夫。我々にはJAFがついている! やつらは何とかしてくれるはずだ! すぐにJAFに「助けてくれ!」と電話し、すぐに来てくれたのが、まったくやる気のないオッサン。来て早々、車もほとんど見ずに「ムリっすね。」とぬかし、自動車工場に運ぶ準備を始めやがった。おい、お前、決断が早すぎるぞ! 金返せ、コンチキショー!! 無料だからっていい気になりやがって!
 と、埼玉の工場に修理で入ることになり、早くも出発直後に主目的が失われ、我々は路頭に迷いかけたが、まあこうなったら仕方がない。素人の乱・長野作戦に徹するしかない。実は軽自動車も一緒に向かっていたので、そちらに全員乗り込み(乗車人数は企業秘密)、北へ向かった。

 さて、到着すると、さすが「なんとなくリサイクル」。相変わらずの意味のわからなさを発揮しており、いつものように無意味に「南無阿弥陀仏」という看板が掲げられている。店内にはリングが組まれている(格闘技好きのジローさんの完全な趣味)んだが、その上に映画の撮影で使ったという約6mほどの魚雷がおいてあった。店内には所狭しと細かい雑貨なんかも並んでいるんだが、10円とか20円で売ってる壊れた人形のパーツにまでちゃんと解説付きの値札がついている! おお、この執念はうちの店を越えている! さらには、徒歩で日本一周しているという、鹿児島の兄ちゃんが1ヶ月ほど滞在していた。 う~ん、相変わらずこの店は遊ぶことしか考えてない!
 夕方に着いたんだが、店の庭で作った料理が次々と出てきて、営業時間にもかかわらず店内で飲み会が始まった! 近所のおばちゃんなんかも集まってきて、にぎわって来たが、突如ジローさんが「環境のために1時間だけ電気を消してローソクだけにしよう」とか言い出して、「いや~、田舎だからほんとに真っ暗だろう。この時間には毎日やってるんだよ。これで飲む酒がいいんだよねえ」などと言いながら店の電気を全部消してしまった! なんだなんだ、営業中に真っ暗にしちゃったら店やってるかわからないんじゃないか? 案の定、1時間後に電気をつけるとすぐ、来ようとしていた近所のおじいさんが「なんだ、ココだったか~。何度も通り過ぎて探してたんだよ…」と入ってきた。ほらみろ、言わんこっちゃない!
 さて、いよいよ映画の上映会が始まった。店の庭に6畳間ほどのプレハブ小屋が建っており、ココにプロジェクターが設置されていて、ここが会場。ここに、10数人が入って、「寒い寒い!」と石油ストーブを焚きまくっていたので、酸欠になり、ほぼ全員が寝てしまう中、上映会は終わった(これ、やった意味あんのかね…。というか、危ない)。

 結局、トラックがないので高円寺のゴミも処分できず、長野買い付けもできず、映画も寝ていたので、何をしに行ったんだかよくわからない!
 まあ、仕方ないから見学でもして帰ろうと思い、翌朝、ジローさんについて行ってみた。すると、車でどんどん山の中に入って行き、燃えたような車の残骸に冷蔵庫とかが詰まっているという、悪の砦の入り口としか思えない目印があるところを入って行った。そこが、売ることができないガラクタを集積する作業場になっていた。そこに格闘家風の男たちが集まり、焚き火をしながら家具などを叩き壊したりしているではないか! そう、子どもの頃インチキなカンフー映画でみた、地獄のマヌケ特訓の光景そのものだ! これはすごい!
 で、そのゴミをよく見てみると、都市部では人気の60~70年代の昭和レトロ家具・雑貨を、カンフーマスター達が巧みなキックで粉砕しているではないか! おい、もったいない!! これは救済せねば! ってことで、一緒に行った素人の乱のバイトの兄ちゃん(前々回に新宿駅前で人間筆をやってのけた村上くん)を、修行兼買い付けがてら、長野に置いて帰ることになった。ちなみに、人選の理由は、前日の飲み会でたまたまジローさんの隣に座っていて、気に入られたこと。まあ、村上くんも大喜びだったので、10日間ほど丁稚奉公に出すことになった。彼はたくましくなって帰ってくるに違いない!

 さて、そんな感じで帰ってきたわけだが、当初の目的はまったく果たせなかったものの、今回の長野作戦によって、都会で出た廃家具などが長野の薪燃料になり、田舎で出たガラクタ家具が東京で復活するという、新たなリサイクルが誕生してしまった! さらには、都会のせせこましい鬱屈した空気に嫌気が差したら、気軽に長野山中でブルース・リー級のウサ晴らしもできる。
 おお、これはなかなかいい流れができてきたね! やはりリサイクル業は奥が深い!!

なんだかわけの分からないうちに、
一石二鳥どころか「三鳥」の新・リサイクルシステムが誕生!
大作戦、ますます絶好調で拡大中、のようです。
春に向けて、次は何が起こるのか? ご期待ください。
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