松本哉ののびのび大作戦

　前回報告したように、警官にリンチされたり泥棒にはいられたりと、今年は正月早々なんだか騒がしい。

　ま、こうなったら、せっかく騒々しいこの勢いに乗じて騒ぎを起こし続けていったほうが得だ（？）。
　とりあえずは手始めに元旦の仕返しをしようって言うことで、なんとデモをやってしまうことになった！　いやいや～、今年も景気がいいね！早くも大騒動の開始だ！！

　というわけで、早速デモの準備に取り掛かった。
　まあ、気の早い諸君は「仕返しデモ」と聞いて、新宿でひと騒動起こしたり新宿警察署に殴り込んだりと大騒ぎをしでかすんじゃないかと思うかもしれない…。だが！　もちろん、そうは問屋が卸さない。
　新宿でヒドイ目にあったからといって、新宿でやり返すなどという、力と力のぶつかり合いなんかしても面白くもなんともない。それに、そもそも高円寺の飲んだくれやヒマ人たち総出で戦っても、人を殴る練習ばかりしている新宿署の前にコテンパンにぶちのめされて終わりだ。
　もちろん、そんな血の気の多いことをしても、お互いの感情が悪くなって悪循環に陥るだけで、何の意味もないことは憲法９条や前文を読まずともわかる（←ちょっと読者サービス）。

　じゃあ、何をやるか！？　そう！　みなさんご察しの通り、高円寺路上大パーティー！！！！　祭りだ祭りだ、金持ち出てこいコンチキショー！

　というわけで、早速、我がホームタウンにして世界に名だたるマヌケ署でもある杉並警察署にデモ申請！　とんだとばっちりは杉並署。いつも申請に行くと「何でうち（の管轄）でやるんだよ」と言い出すが、自分らの仲間（新宿署）の悪行がもとなので、これはあきらめてもらうよりない。　いつもデモを届けるたびに「渋谷行ってやって来い」とか「野方なんかいいんじゃないのか？」とか、何とかして杉並外でやらせようとする。以前、中野でデモをやったときも、終着地を高円寺にしていたら「何でこっちに来るんだ！！　せっかく今回はよそだと思って安心してたのに！」と怒られた。まあそうはいっても、国レベルのことでも、ほかのエリアのことでも、とりあえず、ホームタウンで主張するということは大事だと思っているので、まあ天災だとでも思って諦めてくれ、杉並署の諸君！

　いざ、杉並署へ。
　まずは、受付に行って、いつもの窓際族風のオジサン警官に「デモの届けに来たんですけど」というと、「あっそ。じゃあ、そっちで待ってて」と、とても機械的で無機質な対応。いいね～、このいかにも「ちッ、好きでココにいるんじゃねえんだよ。仕事面倒くせえな～。話しかけんなよ」っていう感じ。最近の、うそくさいニコやかさでキモチ悪い市役所の対応なんかとは違って、往年の中国の商店のような感じがなかなか好感が持てる。で、待合所コーナーで待たされる。

これが杉並署の受付前のスペース（写真は以前の申請）。勝手に弁当を買ってくる。ちなみに自らカツ丼を食べる

　デモ受付の担当の人がやってくると、開口一番「ありゃ、また来た！」みたいなことを言い出すが、毎度のごとくちょっとうれしそうだ。
　ちなみに、職業柄、古物商認可やら車庫証明やらの関係で杉並署を訪れることは多いんだが、そのたびに、警備課の人に見つかると、「こら！お前、デモ申請じゃないだろうな！！」と、遠くから怒鳴られたりする。この間なんか、確定申告のときに税務署の前でボッタクリ税金を払うためにしぶしぶ並んでいたら、杉並署のデモ担当の人に遭遇！　確定申告の行列の警備があまりにも退屈だったのか、「おい！　おまえ！　こんなところに何しに来たんだ！！」などとぬかし始めた。こら！　お前らの給料の元手を払いに来てるんだよ、こんちくしょう！！　おまけに「最近デモやってないんじゃないか？」と、ちょっとさみしそうに語りかけてくる。ヒマつぶしにでもなるのか、休日出勤手当てがほしいのか、杉並署の連中はどうもデモをやってほしいらしい。　なんだか妙な連中だ。

　まあ、そんなわけでデモの届けを出したんだが、今回はやたらとすんなり進んだ。おお、いいね！　以前は「デモをするには金がかかる」とか「このコースはだめ」とか、大ウソばっかりついて何とかやめさせようとばかりしていたが、ついに諦めたらしい。
　で、最後にちょっと、今回の申請の実況レポートをしたいんだが、デモ申請ってなかなか行ったことある人も少ないと思うので、なるべく忠実に警察との交渉を再現してみたい。
　ちなみに、今回のデモ責任者は年末の新宿の人間筆パフォーマンスで一番張り切っていたキク君。うちのお店の近くに住んでいるバンドマンで、バンドではベースを担当。最近、とある抽選で当たり、ランシド（というバンド）のメンバーのラーズ本人から、直々に“ＲＡＮＣＩＤ ＰＵＮＸ”とタトゥーを入れてもらったので、大喜びで毎日ランシドＴシャツを着ている、富山出身のバカ者 若者。弱冠２１歳。
　ともかく、以下がその緊迫したデモ申請の始終である！！

　民衆の権利と怒りの主張！　そして！　その民衆の意思を抹殺せんともくろむ、国家権力の黒い陰謀と謀略の数々！　まさに平成の悪代官！　杉並署は今回も善良な区民を斬って斬って斬りまくるのか！？
　来たるべきデモ申請に備えて、心して読んでくれたまえ！！

＊

マヌケ杉並署　「で、今回はなんていう団体名なの？」

デモ側　「『ランシドパンクス喜久』です」

マ　「なんだそりゃ、どういう意味なんだよ」

デ　「いや、その。特に意味ないっていうか、バンドっていうか…」

マ　「まあ、いいや。役職は？」

デ　「ベースです」

マ　「ダメ！　そういう意味じゃない。議長にしとくぞ。いい？　議長で」

デ　「はあ。じゃ、それで」

マ　「で、デモの目的は？」

デ　「強いものによる弱いものイジメ反対デモです」

マ　「ん？　まさか、うちの署に対して言ってるんじゃないだろうな」

デ　「ちがいますよ。もっと悪い奴らがいて、ちょっと年末にイジメに遭ったんで…。そういうのはよくないと思って」

マ　「うん、いいこと言うねキミ。もっともだよ。コースはどうするの？」

デ　「（高円寺一周のコースを提示して）これでお願いします。ちょっと短いですかね」

マ　「長すぎるよ！　キミらはお酒飲んでわーわーやってるからあったかいだろうけど、コッチは寒いんだから！　早く終わろうよ」

デ　「じゃ、せっかくだから、もうちょっと長めにしとこうかな」

マ　「聞かなかったことにする…。あと、最後に参加団体は？　『一般市民』でいいか？」

デ　「いや、今回はヒマな杉並署の人にも来てもらおうと思うんで『及び杉並署員』で」

マ　「だめだ、そんなの」

デ　「いやいや、中には来たい人もいるかもしれないでしょ」

マ　「だめ」

デ　「来たいでしょ、デモ」

マ　「だめだって」

デ　「またまた～。交番の人とかデモ行ってみたいって言ってるよ？」

マ　「だめなの！」

デ　「だって、結局その日は来るんでしょ？」

マ　「いかないよ」

デ　「有給とっちゃいましょうよ。覆面すればわからないし」

マ　「だめ！クビになる」

デ　「そんなことないでしょ」

マ　「はい、また今度ね！　来週また来てね」

デ　「じゃ、また来週」

＊

　以上。　とりあえず、これでデモは決定！！
　いやいや～、ついにまた祭りが始まってしまう！　ということで、読者の皆さんも、２７日はぜひよろしく！
　このデモを逃してしまったら、一生後悔することは間違いなし！！　大変だ大変だ！　騒ぎだ騒ぎだ！！！

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