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「マガ」と「ジン」のコラムリコラム
第32回:激動の年が始まった…

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安保条約50周年

マガ  年が明けてまだ20日ほどしか経っていないのに、いろんなことが起きるねえ。激動の年になりそうな予感…。

ジン  今年は2010年だしねえ。日米安保条約が当時の岸信介首相とアイゼンハワー米大統領の間で調印されたのが、ちょうど50年前の1960年1月19日。その意味でも、大事な区切りの年だと言える。

マガ  1960年といえば、あの国民的な60年安保闘争があった年だものね。そのことが、1960年代末から70年へかけての学生反乱にもつながっていった。

ジン  確かに60年代末の若者たちの反乱は、ベトナム戦争反対という全世界的な広がりを持ったものだったけど、日本の場合は特にそれに日米安保の問題が重なっていた。

マガ  日米安保条約は、さまざまな解釈変更を重ねながらいままで続いてきたけど、そろそろ抜本的に見直す時期じゃないの。

ジン  そうだよな。この条約は、全部で10条という短いものだけど、中で重要なのは5条と6条だ。簡単に言えば、5条ではアメリカが日本を守り、そのために6条で日本が米軍に基地を提供することを定める、というものなんだ。しかし、6条で「極東における国際平和と安全に寄与するため」と定められていたのに、次第に「極東」が拡大解釈されて、イラクやアフガンなどとても「極東」などとは言えない地域も活動範囲に入れられてしまった。それが安保の変質と言われる理由なんだ。

マガ  世界の冷戦構造に対処したものだったものが、冷戦がなくなり、いわゆる対テロ戦争に軸足を移したアメリカの戦略に、日本が否応なく巻き込まれていった、ということなんだね。

ジン  いまや冷戦相手は消滅した。ロシアも中国も、アメリカの明確な敵対国ではなくなったこともあって、基本的に安保条約第5条は「日本を守る」ためではなくなった。つまり6条の「極東」が「世界」へ拡大されたことにより、5条がほぼ意味を失ったわけだ。そうだとすれば、6条に規定されている「在日米軍基地」も条約解釈上、不必要になっているはずだ。それなのに、まだ基地をそのまま維持しようとするから、矛盾が生じてくる。その矛盾が露骨な形で現れているのが普天間基地移設問題だと言える。

名護市市長選挙

マガ  普天間基地の移設先とされているのが名護市辺野古。そのため、1月24日の名護市の市長選挙が大きな注目を集めているわけだ。この選挙戦、現状では移設反対を表明している稲嶺進氏が、現職の島袋吉和氏をリードしているらしいね。

ジン  各メディアの事前調査ではそういう結果が出ているようだけど、やはり建設関係の企業票がそうとう巻き返しに出ているというから、結果はまだまだ分からない。

マガ  この選挙結果が、移設問題に大きな影響を及ぼすんだろうね。

ジン  いや、政府関係者の間では、どちらが勝ってももう辺野古への移設は無理だろう、という意見が強まっているよ。辺野古移設賛成派の島袋現市長にしたって、「できれば県外移設が望ましいのは当然」と言い出しているし、島袋氏を推している仲井真沖縄県知事でさえ、県外移設に傾いている。「これ以上の基地は沖縄にはいらない」という県民世論に逆らえなくなっているんだ。もし辺野古移設を強行すれば、沖縄は激高して反対運動は抑えきれなくなるだろう。そんな状況を政府筋も分かっているから、もう辺野古移設は無理と言い始めているわけだ。

マガ  辺野古移設が無理だとすれば、普天間基地は現状のまま、ということになるの?

ジン  それが最も危惧されるところだけど、何らかの普天間基地の被害軽減策がとられるだろうね。そうでなきゃ、沖縄の人たちの感情はおさまらない。

マガ  しかし、辺野古移設の約束を守らなければアメリカが承知しない、と日本のメディアは繰り返しているけど。

ジン  ここに来て、アメリカ政府筋は「日米関係は深化させなければならない。普天間問題が両国関係を壊すことにはならない」と、しきりに言い出している。アメリカにとって、普天間基地はさまざまな外交問題の小さなひとつであって、両国関係にひびが入るほどの重要な問題ではない、という認識を改めて確認したという。普天間問題ひとつで日本を反米に追いやるのはアメリカにも得策ではないわけだからね。

マガ  もし、そういう認識の下で普天間基地が撤去されることにでもなれば、国民世論が日本政府やアメリカまでをも動かす、という画期的な出来事になるね。ぜひそうなって欲しい。

ジン  日本のメディアは、なぜかアメリカの「約束を守れ」との言い分しか報道しないけど、実際にはアメリカ政府内でも「日本の状況にも配慮しなければ」という意見のほうが強くなりつつある。

マガ  ある意味で、鳩山首相のグズグズぶりが功を奏している、ということなのかな。

ジン  そこまで読みきった上での優柔不断だったとすれば、なかなかの役者だね、鳩山さんも。

小沢幹事長辞任?

マガ  その鳩山首相も、小沢一郎幹事長の扱い方には困りきっているようだね。

ジン  小沢さんは幹事長職を辞任するんじゃないか、という観測が飛び始めているね。このままではとても7月の参院選を戦えない、と参議院民主党議員たちから不満が出始めている。それを察して、小沢幹事長は東京地検特捜部の事情聴取に応じる意向だという。特捜部にはそれなりの説明をして、それを踏まえてもう一度国民向けの説明をする。その上で、世論がどう動くかを見極めてから、自身の進退を決めようということだろう。その前にまず、選挙戦の指導をきっちりと行う。世論がそれでも強く幹事長辞任を求めるようであれば、参院選が迫ったころに辞任して、民主党の自浄能力をアピールしてから選挙に突入する。そうすれば、選挙を指導して党内に力を見せつけることもできるし、さらに自らの辞任を選挙戦勝利につなげることで、党内における権力を以後も保持できる。そう考えているんじゃないかな。

マガ  うーん、そこまで考えるか。政治家ってしたたかなもんだなあ。転んでもタダじゃ起きない。

ジン  始まったばかりの国会だけど、まともには動かない。経済危機が叫ばれている時期に、こんなことで右往左往するのはみっともないのを通り越して、もう情けない。

マガ  それにしても、民主党もあまり自民党と変わらないということが、世の中に分かってしまった。結局、金の力が権力の裏づけだった、ということがね。

ジン  まさにその通り。そういう意味で小沢一郎という人物は、自民党的体質を色濃く残している政治家だった。そこに自浄能力を発揮しなければ、民主党にもあまり期待できないことになる。

マガ  自民党的体質が国民から見放されているのは、世論調査にもはっきり表れているね。民主党がこれだけガタガタして支持率を落としているのに、自民党の支持率もさっぱり上がらない。どの調査を見ても、支持率は10%台。民主党にはややガッカリだけど、だからといって自民党を支持する気にはなれない。自民党はもう終わっている、というのが国民の多くの感覚みたい。

ジン  そうなると、またしても国民の政治離れが起こってしまうかもしれないな。

ハイチ大地震と緊急災害援助隊

マガ  政治なんかに関心はない。世の中、事件や事故がいっぱい起こって、それどころじゃない、って感じだもの。例えば、1月12日に起きたハイチの大地震。とても他人事だとは思えない。

ジン  もの凄い被害らしいね。死者は10万人とも20万人ともいう。世界各国から緊急援助隊が駆けつけている。日本も少し遅れたけれど、18日に医療チームがようやく現地入りした。こういう国際貢献なら、大賛成だよ。

マガ  そうだよね。インド洋で無料ガソリンスタンドなんかやるより、こっちのほうがずっといい。僕は、自衛隊を改組して、緊急国際援助部隊をその中心にするべきだと考えているけど、緊急時にはそういう恒久的組織があれば、もっと素早く対処できる。本来の国際貢献、国際協力ってそういうことだと思うんだ。

ジン  国際貢献の中身を、ほんとうにきちんと検討する必要がある。戦争や紛争に関与するのではなく、そこで生まれる被害者や難民、そして今回のような自然災害の被災者などを救う努力こそが、それこそ人道的国際貢献だね。

マガ  災害が起きるたびごとに、援助隊を組織するんじゃなく、いつでも出動できるような恒久的大部隊を作って訓練しておくことが必要なんだよ。なにしろ、東海大地震や首都圏大地震が20年以内に起きる可能性が80%以上だと、研究者たちは指摘しているし、政府だってそれを認めている。その時になって慌てるんじゃなく、いまからそれに備えた大規模救援組織を作っておくのが当然のはず。石原慎太郎都知事みたいにオリンピック招致に何百億円も使うより、地震対策に金は使うべきだよね。「都は財政的に余裕があるから、招致費なんて屁みたいなものだ」なんて嘯く慎太郎知事の頭の中を疑うね。

ジン  そういえば1月17日は、あの阪神淡路大地震からちょうど15年目だった。あの教訓を活かすべきだ。自衛隊の改組で大規模救援組織を作るというのはいい方法だね。自衛隊の救援活動は素晴らしいけれど、やはりそれは自衛隊にとっては副次的な活動だ。専門に救援活動訓練を行う大部隊を組織して、必ずやって来る大災害に備えようというのは、もっと声を大にして叫んでいい。

地震と原発

マガ  地震については、もうひとつ言いたいことがある。原子力発電所の徹底的な見直しだ。特に東海大地震が来ればその震源地に最も近いとされているのが、静岡県の浜岡原発だ。地震の巣の真上にある指摘する学者も多いこの原発を、早急に停めなければならない。大災害をさらに大きくする放射能災害は、なんとしてでも防がなければならない。僕は大地震が起きるたびにそう思うし、声を大にして主張しているんだけどね。

ジン  日本のような地震多発国では、原発建設はほんとうに慎重に考えなければいけないのに、目先の利益だけを追う企業や官僚たちに、政治家は丸め込まれているとしか思えない。

マガ  今年はもの凄い寒波が世界中を襲っている。ヨーロッパでは、数十人規模の凍死者が出ているし、日本でも新潟県などでは大雪による死者が出ている。こんなときにも、緊急援助隊の活躍があれば助かるわけだし。

日航に会社更生法

ジン  まだ1月だというのに、今年の重大ニュースみたいな出来事が続くね。19日に日本航空が会社更生法を申請した。いわゆるナショナル・フラッグといわれるJALが潰れれば、それこそ日本の航空行政の根本が崩れる。その意味じゃ、なんとしてでも立て直そうとする政府の意図は感じられるけど、またもここに莫大な公的資金が投入される。いつだって企業の尻拭いは国民に押し付けられる。経営陣も、多くの地方赤字空港をムリヤリ誘致して甘い汁をすすった政治家どもも、その責任を明確にすべきだよ。

マガ  かつては、強引に新幹線の駅を田んぼの中に作らせた政治家もいたけど、いまや、空港を地方に引っ張ってきて利権を得たり票集めに利用したりした政治家がいっぱいいる。そんな連中は、責任をとって辞任すべきだよね。

ジン  うーん、気分のいい話はほとんどないな。

浅川マキさんの死

マガ  それに、もっと寂しいことがある。1月17日に浅川マキさんが亡くなった。僕の最も好きなシンガーだった。『夜が明けたら』は凄まじいほどの名曲だったし、『かもめ』とか『ちっちゃな時から』『赤い橋』『ふしあわせという名の猫』など、どれをとっても凄いの一言。

ジン  うん、私も大好きだったな。彼女は目を患っていて、あまり見えなくなっていたとも言われているけど、歌は健在だった。私の友人がかつて彼女のプロデューサーをしていた。その友人が死亡の前日の名古屋でのライブを聴きに行った。「Jazz in Lovely」という店での「浅川マキ・名古屋・三日間」というライブだった。15、16、17日の3日間。でも、17日に店に現れないので不審に思ったスタッフがホテルに訪ね、浴室でぐったりしているマキさんを見つけたとのこと。友人によれば、「16日のライブは鳥肌が立つほど素晴らしい2時間だった」とのこと。

マガ  ライブの途中で逝ったわけだ。シンガーとしては本望だったのかもしれないけど、寂しいなあ…。

ジン  彼女は詩人としても抜群のセンスを持っていた。だから、文章も凄いよ。ところが「文章を書くのはあまり好きじゃない」ということで、まとまった文章はほとんど残していない。その例外が『こんな風に過ぎて行くのなら』(石風社、2003年発行、2000円+税)という本だ。我が友人のプロデューサーも本の中に登場する。言葉が風の中に漂うようで、読んでいて歌が聴こえる気がする文章だよ。そして、この石風社は、我々が尊敬してやまない中村哲医師の本を出している出版社でもある。それもなんとなく嬉しいよな。

マガ  それは知らなかったな。早速、その本を買って読んでみよう。ネットでなら手に入るよね。

ジン  今夜は、浅川さんのCDを聴きながら、お酒でも…。

(放光院+α)

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