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国会ツアー
6月1日
衆議院「憲法調査特別委員会」&
「本会議」の傍聴に行ってきました!
〈その1〉



傍聴は裏口から出入りするので、おなじみのこの国会議事堂の正面入口は、外側をぐるっと半周しないとたどり着けない。議事堂はかなり大きいので、正面に回るのも一苦労。

 6月1日の衆議院本会議(13時開会)で、与党と民主党からそれぞれ提出された国民投票法案が審議されるという情報が入りました。
 国民投票法案は、憲法改正(正しくなくても改正?)を視野に入れたヒジョーに際どいものであるため、成りゆきを注目すべく、傍聴に行ってまいりました。午前9時から「日本国憲法調査特別委員会」でも国民投票制度に関する審議が行われることがわかり、この特別委員会から見学することに。



朝の委員会のテーマは、「国民投票法と意見広告」

 当日、待ち合わせの場所に集合したツアー参加者約10名は、厳重なボディチェックに戸惑いつつ、特別委員会が行われる第十八委員室に9時過ぎに到着。今日の議題は、国民投票が行われる場合、特にテレビでの意見広告はどう扱われるべきかというもので、参考人としてコラムニストの天野祐吉氏と日本民間放送連盟の山田良明放送倫理小委員長が招聘されておりました。

 我々一行が傍聴席に着いたときには、最初の天野氏の発言が終わったところで、民放連の山田氏が放送事業者としての観点から説明中。簡単に彼の意見を要約すると、意見広告の取り扱いは基本的に各放送事業者が判断すべきだが、CMの放映回数が資金力などに左右されることのないよう、民放連などでルールを設けるべく検討しているとのこと。

 もう一方の参考人である天野氏は、意見広告は放送各社に任せるのではなく、大枠のルール作りが必要としながらも、その真意は現時点では時期尚早というニュアンスをにじませているように感じられました。彼のユーモアに包みながらも、時として与党を批判する忌憚のない発言には、ときおりあちこちから笑い声が上がっていましたが、同行した国会傍聴通に言わせると、こんなにわかりやすくかつ面白く進行した委員会の場も珍しいとのこと。

 こちらも天野さんの話に、途中何度も、「そのとーりっ!」と思わず合いの手を入れたくなりましたが、傍聴席は声をあげたり拍手をしたりは一切できないので、ぐっと我慢の子なのでありました。

 天野氏は、意見広告が及ぼす影響の一例として、米民主党のジョンソン大統領の再選がかかった選挙CMについて触れました。ひなぎくの花びらを1枚ずつ摘みながら、カウントダウンをしていく少女。「ゼロ」と言ったときに、少女の瞳にズームインされ、その瞳には爆発後のキノコ雲が沸き上がる様子が映る。そして「こうならないためにも、民主党に投票を」というテロップが流れる、というものだったそうです。そのCMは1回放送されただけで共和党の猛烈な講義を受け、中止になったのですが、結果的に中止になったという出来事事態が、大きな反響を呼び、そのおかげかどうか、結局ジョンソンが勝ったそうです。

 CMというものは、直接的なことばでのメッセージだけでなく、さまざまな演出が加えられます。こんなCMはいいけれど、こういうのはダメ、という基準を設けるのは不可能に近いというのは、容易に想像がつきます。そのへん、これからどう折り合いを付けていくのでしょうか。

 CMの中身に対する公平な物差しは難しいが、CMが放映される秒数や回数、時間帯など、同じ機会は与えるべきだと天野氏は結びました。


天野祐吉さんが指摘する、現法案の疑問点とは?

 それにしても、天野氏の発言は、専門家でない私にとっても、わかりやすいものでした。たとえば、投票の7日前から放送による意見広告が禁止になるという法案に対して、
「1週間前からだまれというのは、テレビCMは悪影響を及ぼすという前提で考えられていることの証拠。法案になぜ1週間かという説明がないのがわからない」と指摘。山田氏も、7日前から禁止されるという規定に違和感を覚える、と発言しました。

 本来、参考人からは委員会に質問できないことになっているのですが、ふたりの発言を受けて、中山太郎委員長が自ら「なぜ7日間前から禁止するのか」について、次のように説明しました。

 「ヨーロッパの中には、印刷物による意見広告は、期間は限定されていないが、テレビは人間に与える情報の刺激が大きいので、1週間前からは静かに考える時期ということでこのような規定を設けた」と説明しました。

 この説明を受けて、天野氏は最後に、「テレビCMは、新聞やポスター、公報よりも大きな影響を与えていると思う。だからといってテレビCMが危険で有害であるということでもないと思う。これからの時代、政治家はいかに国民に届くことばを、考え出すことができるか。それをテレビで伝えることができるかが、求められていくのでは」と結びました。

 ところで参考人の山田氏、実はもともと「北の国から」や「踊る大捜査線!」など、数々の大ヒットドラマを手がけてきた、超敏腕プロデューサーだったのです。ご存じでした? その後、順調に出世街道を進み、某局の常務に就任。一時はライブドアの社外常務も務めていたために、騒動に巻き込まれもしていました。

 そんなやり手のヒトなのに、参考人招致での発言のなんとお役所的なこと。「さまざまなケースを具体的に考えながら検討していきたい」のような無難な発言に終始していたのは意外でした。やっぱり場所が国会となると、大胆なことは言えないんですかねえ。


会議の出入りってこんなに自由なの?

 とまあ、まだまだ興味深いやりとりがたくさんあったのですが、具体的な委員会の内容については、Webサイト「衆議院TV」のビデオライブラリーで見ていただいた方がわかりやすいので、ここでは現場に行ってわかったことについて、いくつか。

 まず昨年の10月に掲載した『マガ9』ブログにも書かれておりますが、議員の方々の出入りが激しすぎ! この委員会に登録している先生方は50人もいるそうですが、我々が到着した9時10分過ぎには29人。この日の午後からの本会議で、国民投票法案が議題として提出されていたのですが、これは1947年に現行憲法が施行されて以来、はじめて憲法改正に関連する法案が国会の場で議論されるということなのです。だから、ああ、午後からの準備で忙しい議員もいるのだろうから、これから遅れてやって来るに違いない…と思ったのですが、さにあらず。終始、あちこちで出たり入ったりが繰り返され、結局のべで委員会に出席した議員は40人にも満たず。11時40分の散会時には22人しかおりませんでした。中には1時間もいなかった先生も複数名おり、国会にこそタイムカードが必要だと思ったものです。

 最後に、国会内の傍聴では、持ち込み可能なのはほぼ筆記用具くらいで(しかも筆箱すら持ち込めなかったりする)、飲食はもちろん禁じられています。そのためのどが渇いてもじっと我慢しなければならず、それだけに特別委員会で議員のみなさんが飲まれていたお水が大変美味しそうに感じられたました。水差しにたっぷり氷が入っていて、議員がコップに注ぐたびに「カランカラ〜ン」と涼しげな音を立てるんだなあ、これが。 そのうち「国会のおいしい水」として国会内売店で売られていたりして(笑)。

 それはさておき、まだまだ全然詰めが甘い国民投票法案。果たしてこんなので通っちゃうんでしょうか。ひとつひとつについて、つくづく深い議論がこれからたくさん必要だなあと思ってしまいます。だって、憲法をどうするか、ということに関わってくる法律なのですから。にもかかわらず、ものすごく急いで国民投票法を成立させようとしてませんかねえ。

 そしていちばん心配なのが、主権者である国民がこの法案にまだほとんど関心を向けていないこと。共謀罪や教育基本法のどさくさに紛れて、気が付いたら成立していた、なんてことになりかねません。

 まずはどんな法案が出されたのか、国会でどんなことが話されているかを知ることから始める必要があるのではないでしょうか。

 というわけで、誌面が尽きましたので、午後の本会議の模様は次週報告します。
ではまた! (国会ウォッチャーズ・Jiro)


特別委員会終了後、天野祐吉さんは記者会見を開いて、記者たちに報告。「今の国民投票法案では、一定期間、CMはだれでも自由にやっていいことになっている。その点についての規定や制約がまったく見られない。これなら資金力のある方が、圧倒的に有利になる」と、大きな問題点を提示。
*天野祐吉さんは、「この人に聞きたい」に来週(6月14日)登場予定です。さらに、詳しく紹介していきます!

*「衆議院TV」
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.cfm
ライブラリーから特別委員会のビデオを見ることができます。
是非、チェックしましょう。

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