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まつざき・きくや 戯作者 1953年、大分県別府市生まれ。劇団民芸の演出家を経て、88年、社会風刺コントグループ「ザ・ニュースペーパー」に参加。99年独立。現在、風刺コントの台本を書きつつ政治風刺ライブを展開中。TBSラジオ荒川強啓デイキャッチ・毎週月曜日の名物コーナー「あの人の独り言」で、権力者になりすます爆笑一人芝居を生放送中。『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでコラムを執筆。著書に『一瞬の沈黙』『巷は勘違いに満ちている』『男が捨てられた夜』(いずれも三五館)、『コメディアン』(実業之日本社)、『松崎菊也のひとり天誅!』(毎日新聞社)など。
安倍内閣の大臣は「仮に」と発言することが多い。
「仮に~とすれば」を最も多用するのは総理である。国会で、民主党の菅直人とやりあった際に、「仮に格差社会というものがあるとすればですね、是正をしていかなくれはならない」
と答えた。即座に「仮にじゃなくて、格差社会は厳然としてあるんです」とやり込められたが、まずいと思ったか、それ以上答えなかった。
行政のトップに虚実の境目が無いと、「仮に~とすれば」という発言が多くなる。虚実の境目が分からないんだろうな、というのは総理の眼を覗き込めば分かる。キョトキョトと落ち着きが無く、神経質そうに視線が宙を泳ぐ。相手をジッと見つめることがない。相手の眼を見ずに、なにやら夢見るようなツラをして連れ合いと二人、手を握り合ってタラップを降りてきて、何を言ったかと思えば今度は「美しい星」だもの。こらもう末期である。
さて、そんな総理の次の座を狙う外務大臣が、5日の参議院外交防衛委員会において、大田昌秀委員の「在日米軍が出撃する際に日米において事前協議をする、という取り決めをイラクへの出撃をはじめ今まで米軍は一度も果たしていないが、出撃する際の事前協議をするのはどんなときか?」という質問に答えた。虚実の境目が分からない、想像力の欠如した大臣が「仮に~とすれば」と発したのは、次のうちのどれか?
正解は3番。5日参議院インターネット審議中継より。
質問した大田委員の地元は沖縄である。しかも、(ここが最も重要な点なのだが)沖縄は先の日米戦で侵略された地である。それがいかにむごたらしい苦難に満ちた経験か、という想像力が麻生には無い。
イラクへの出撃でどれだけ多くの民間人を殺すことになろうとも、日本に対して事前に「出撃するからね」と、協議はおろか、通告もしてこないのが米軍である。それを、「まあ、事前にしてくるとすれば、仮にね。仮にだけど、沖縄が爆撃されたときかもね」と言っちまう大臣である。
それは、とりもなおさず、「仮にね、おたくの地元がやられた仕返しなら事前に言って来るでしょ」と吹いたことになるのである。「自分の地元を例に挙げるのは、そりゃ支持者の手前はばかられるわな。仮に質問したあんたの地元がやられたとすれば納得する?」だト。それが沖縄であろうとも。
麻生よ、おまえの感覚はどうなっとるんだ?
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