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まつざき・きくや 戯作者 1953年、大分県別府市生まれ。劇団民芸の演出家を経て、88年、社会風刺コントグループ「ザ・ニュースペーパー」に参加。99年独立。現在、風刺コントの台本を書きつつ政治風刺ライブを展開中。TBSラジオ荒川強啓デイキャッチ・毎週月曜日の名物コーナー「あの人の独り言」で、権力者になりすます爆笑一人芝居を生放送中。『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでコラムを執筆。著書に『一瞬の沈黙』『巷は勘違いに満ちている』『男が捨てられた夜』(いずれも三五館)、『コメディアン』(実業之日本社)、『松崎菊也のひとり天誅!』(毎日新聞社)など。
桜前線北上にはややブレがあるが、桜爛漫の下で、かぶっていた帽子を空高くブン投げるのが慣わしとなっている卒業式があった。その式典で総理がブレまくった訓示を垂れた。以下の3つの訓示のうち、例によって2つはわたくしの妄想。1つは実際の訓示での発言。あなたは今週、笑える?
戦後生まれ初の総理大臣の、まさに面目躍如ではないか! 防衛に携わる若者たちの前で、晴れがましくもモーニングなんぞ着込んで訓示を垂れることが夢だった男。どっかの都知事にもそういう傾向があるが、思考する力の無い人間に限って晴れがましい訓示に命を燃やす。
なにごとによらず、日頃助けられているのは、部下の役人がさまざまな意見を集約し、調整して物事を決めているからなのであり、それにただ認印を捺して自分が決めた気でいるが、実は物事の本質をまったく理解していない。認印を捺す立場でいられる恩恵に浴している自分の立場をコロッと忘れて、訓辞を垂れるときは「調整は要らぬ。決断せよ!」などと威勢のよいことを言う。これがエリート防衛大生相手だったりすると、もう舞い上がっていけない。
「橋頭堡」という単語を「トウキョウホ」なんぞと言い間違えるあたりに、バカが噴出しているのであるが、いくらなんでもそこまでは言わなかった。
正解は1番。
(18日横須賀市の防衛大学校の卒業式での訓辞。19日朝日新聞朝刊より)
「将来諸君が直面するだろう危機とは、具体的に北朝鮮が宣戦布告をして来た場合」しか想定していないだろうが、そんなときは「右と左を足して2で割ったような結論」、つまり、たくさんの意見の中から中庸を取る、ということでは「真に適合したものとはならない」戦争はできない。いろいろ考えずに言われたとおりにミサイル発射のボタンを押せ。という訓示を垂れたのだ。
「自衛隊の最高司令官である総理大臣が決めたら、トットとボタンを押せ!」
この国の総理大臣が右や左を足して2で割ったような結論に基づいて決断をしてきたから、自分は決してそういう中庸策は取らぬ。ミサイルのボタンを押すと決めるのも、いろいろあっちこちの意見に耳を貸さないからね。と宣言したのである。
耳を貸さないもなにも、もともと思考力の無い人間なのだから、彼はさして考えずにボタンを押すのである。
権力者は、多くの意見をかぎ分けたり噛んだり味見したり、さんざ転がして、最後の最後に結論を得るから権力の座についていられる。
その自覚が無いやつが総理大臣をやっている。人を殺す実感の無い人間が人殺しを始める。似ているなあ、どっかの知事も、総理も。
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