戻る<<

雨宮処凛がゆく!:バックナンバーへ

雨宮処凛がゆく!

100428up

あまみや・かりん北海道生まれ。愛国パンクバンド「維新赤誠塾」ボーカルなどを経て作家に。自伝『生き地獄天国』(太田出版)のほか、『悪の枢軸を訪ねて』(幻冬舎)、『EXIT』(新潮社)、『すごい生き方』(サンクチュアリ出版)、『バンギャル ア ゴーゴー』(講談社)、『生きさせろ!〜難民化する若者たち〜』(太田出版)など、著書多数。現在は新自由主義の中、生活も職も心も不安定さに晒される人々(プレカリアート)の問題に取り組み、取材、執筆、運動中。非正規雇用を考えるアソシエーション「PAFF」会員、フリーター全般労働組合賛助会員、フリーター問題を考えるNPO「POSSE」会員、心身障害者パフォーマンス集団「こわれ者の祭典」名誉会長、ニート・ひきこもり・不登校のための「小説アカデミー」顧問。雨宮処凛公式サイト

雨宮処凛の闘争ダイアリー
雨宮処凛の「生存革命」日記

※アマゾンにリンクしてます。

沖縄デモと生前葬とメーデー。の巻

沖縄デモにて

 4月24日、新宿で開催された「沖縄を踏みにじるな!」デモと、総評会館で開催された「塩見生前葬」に参加してきた。どちらもテーマは「沖縄」だ。デモは名前を見ればわかるが、塩見生前葬の方はちょっと説明が必要だろう。

 まず「塩見」さんとは、元赤軍派議長の塩見孝也氏。塩見さんと出会ったのは私がまだ20代前半の頃で、当時の私は何か世の中に文句があるらしい「右翼」とか「左翼」といった人々に興味があった。その上、60〜70年代の「政治の季節」にも並々ならぬ憧れがあり(自分もいろいろ暴れたかったため)、「赤軍派議長」で獄中20年の塩見さんはある意味で「伝説」のような人だった。しかし、会ってすぐ、そんな「憧れ」はなくなった。持論を一方的に喚くオジサン。それが第一印象。しかも90年代の日本で真顔で「革命」とか言っている。この人とかかわったら、人生が何かトンデモない方向にいってメチャクチャなことになる。そう思った私は初対面の塩見さんに「北朝鮮に行こう!」とかなり強引に誘われ、ふたつ返事でOKした。人生はトンデモない方向にいってメチャクチャになった方が面白いからだ。

 あれから10年以上。結局私は北朝鮮には5回通い、そのせいでガサ入れにも見舞われた。なんかよくわかんないけど塩見さんのその時々の思いつきだと思われるいろんな運動にも巻き込まれてきた。更に「話がある」と「革命の作戦会議」みたいな感じの二人飲みに誘われるたびに、1円単位までワリカンにされた(奇数の時は1円だけ奢ってくれる)。そんなふうに「被害報告」には枚挙にいとまがないが、なんだかんだ言いながらこの10年以上、ずーっと塩見さんとはかかわってきたわけだ。03年のイラク戦争前には塩見さんも含めた30数人でバグダッド入りを果たし、最近ではメーデーなどにも参加してくれている。そんな塩見さんは現在「9条改憲阻止の会」で活動しながらシルバー人材センターの仕事で駐車場管理人として働いている。20代で革命家となったわけだが、60代(70代?)にして初めて「労働者」となったわけである。

 で、そんな塩見さんは今回、普天間飛行場の沖縄県外移設を求め、「生前葬」をブチ上げたのである。ここで沖縄問題をアピールし、生前葬に集まった「香典」をカンパしようということらしい。ちなみにそのお金は沖縄の人たちが上京して鳩山首相に直訴するための交通費などとして使われるらしい。

塩見生前葬にて。塩見さんが演説。シルバー人材センターの衣装で登場。

 今までハイジャックを計画したり「世界同時革命」とか言ったり軍事訓練をして大量の逮捕者を出したりといろいろ世の中に迷惑をかけまくる方向で生きてきた塩見さんだが、生前葬のテーマが「沖縄」。これは何か筋が通っているのでは、と思い、私も「葬儀委員」の一人となったのであった。

 そうして当日、新宿の「沖縄を踏みにじるな」デモに参加してから駆けつけた。ちなみにこのデモ、途中で抜けたので後半がどうなったのかはわからないのだが、歌舞伎町を沖縄民謡を奏でながら行進し、先頭の車には沖縄の映像が映し出されているというもので面白かった。が、私の印象としては、なんというか沿道の反応がイマイチだった気がする。あまりにも反応が良すぎたキャバクラユニオンの歌舞伎町デモの直後だからそう思うのかもしれないが、ある意味で「沖縄」問題に対する関心の薄さを感じたのだ。テレビの中だけで騒いでいる、自分とはまったく関係ない「沖縄」問題、という感じで。私も人のことなんか言えた義理ではない。だからこそ、この日のデモに参加したとも言える。

 さて、そうしてデモを途中で抜けて生前葬へ。会場は既に宴となっていて、ラッパーもどきな若者が『俺は駐車場管理人』という塩見ソングを歌っている。歌詞はと言えば「切羽詰まった普天間問題 切羽詰まった塩見の寿命」とか「捨てたゲバ棒 拾った武士道 インターナショナルは伝統芸」とか「ジュゴンも塩見も絶滅危惧種」とか、素晴らしいものだ。そうして生前葬のラストは当然ながら元活動家たちによる「インターナショナル」! この歌の大合唱を私は生まれて初めて聞いた。その勢いで二次会へと流れ込み、そうして二次会の締めもお好み焼き屋で「インターナショナル」! 塩見さんの代わりにこの場を借りて、あの時あのお好み焼き屋さんにいた他のお客さんに謝りたい。演説や突然の合唱で迷惑をかけてすみませんでした・・・。

同じく沖縄デモ

 ということで、ホントにもうちょっとでメーデーだ。そんな中、テレビで報じられているのは、自民党議員たちの新党立ち上げやゴタゴタなど。そこでは、彼らが現在の貧困問題に対して多大な責任があることなどには何も触れられない。そういうものを見ていると、本当に「政治の責任」なんて問われることはないんだな・・・と愕然とする。政権交代は、彼らが長年続けてきた「貧乏人は迷惑かけずに勝手に死んでくれ」的な政策もあっさりと「過去」にした。しかし、今も路頭に迷っている人たちは当然ながらたくさんいる。自民党政権がずーっと「自己責任」として放置し続けてきたことのツケを払わされているのは結局のところ貧乏人=プレカリアートだ。そしてそのツケを払うために、人生を台無しにされたり命を失っている人がいる。だけど、そんなことさえ忘れられ、「なかったこと」にされている。これをこのままで済ましていいはずがない。

 「自由と生存のメーデー」は毎年、各政党にメーデーへの参加要請を送っている。今年ももちろん送るつもりだ。その一文を紹介しよう。

 「私たちは、選挙によって選ばれ、高い理念と決意に基づき政治を行っているであろう皆様方に、メーデーイベントへの参加を強く求めます。また、悪政に加担し人々に多大な苦しみを与えてきたという自覚のある方も、振り返りの場として頂くことで、私たちの行動と理念に共感し、共に活動して頂きたいと思います」。

 元自民党の人とか、この呼びかけに応えて誰か来てくれないだろうか。来てくれたらちょっと見直すんだけど・・・。

 さあ、今年もメーデーが始まる。2日の集会では私も出演して話す予定だ。「セーフティネット???」と題したトークでは、生活保護やベーシックインカム、第2のセーフティネットなどを話し、「いらない仕事???」と題した2部では水商売や介助、警備、IT、カメラマン、NPO職員などの当事者が「業界のルール」と「夜の常識」が低賃金と悪条件を自己責任にする実態について語る。そして3日のデモはなんと二本立て! 午後5時に新宿中央公園からスタートする第一弾が始まり、6時半からはアルタ前から「リスタート」となる。私はコーラーをする予定だ。

 それでは、「自由と生存のメーデー」で会おう! そして「棄民」として逆襲しよう!  ついでに「パンドラの箱」を開けてしまおう(それはデモでのお楽しみ)!

「自由と生存のメーデー10 -- PRECARIAT-Z --『逆襲の棄民 パンドラの箱が開く』」 ※引き続き賛同を募集しています!

実話ブブカタブーにて「ニート・初男」と対談。スーパースターになるらしい。

←前へ│次へ→│

なんだかいろんな意味ですごい「生前葬」には、
約150人が集まったとか。
そしていよいよメーデー。
「パンドラの箱」とは何か? 熱い季節がやってきます。

ご意見フォームへ

ご意見募集

マガジン9条