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雨宮処凛がゆく!

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あまみや・かりん北海道生まれ。愛国パンクバンド「維新赤誠塾」ボーカルなどを経て作家に。自伝『生き地獄天国』(太田出版)のほか、『悪の枢軸を訪ねて』(幻冬舎)、『EXIT』(新潮社)、『すごい生き方』(サンクチュアリ出版)、『バンギャル ア ゴーゴー』(講談社)、『生きさせろ!〜難民化する若者たち〜』(太田出版)など、著書多数。現在は新自由主義の中、生活も職も心も不安定さに晒される人々(プレカリアート)の問題に取り組み、取材、執筆、運動中。非正規雇用を考えるアソシエーション「PAFF」会員、フリーター全般労働組合賛助会員、フリーター問題を考えるNPO「POSSE」会員、心身障害者パフォーマンス集団「こわれ者の祭典」名誉会長、ニート・ひきこもり・不登校のための「小説アカデミー」顧問。「週刊金曜日」「BIG ISSUE」「群像」にてコラム連載。雨宮処凛公式サイトhttp://www3.tokai.or.jp/amamiya/

生きさせろ!
雨宮処凛の闘争ダイアリー

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リアリティツアー逮捕を検証する院内集会。の巻

院内集会にて。左から亀井静香氏、私、鈴木宗男氏。うーん、すごい組み合わせだ。

 11月13日、衆議院第一議員会館にて、「麻生邸拝見リアリティツアーの警察による強権的な逮捕を検証する!」と題した集会が開催された(きてくれた人ありがとう!)。

 この集会の「世話人」は、警察OBであり、国民新党代表代行の亀井静香氏、そして新党大地代表の鈴木宗男氏、そして私。いったいどういう組み合わせなんだ?ということで、まずはこの時空が歪むような「組み合わせの説明」から集会が始まった。

 今回の不当逮捕の件で、鈴木宗男氏が内閣に質問主意書を出してくれたのは前の原稿に書いた通りだ。その経緯は、逮捕してすぐに鈴木氏が逮捕時の動画を見てくれたことが発端だった。そして質問主意書が提出され、集会2日前には内閣から答弁書が返ってきた。鈴木氏は主意書で「逮捕されてから弁護士との接見をなかなか認めなかった」件などに関して質問してくれたのだが、返答は「警視庁によると、そのような事実はないとのことである」などの無味乾燥というか、通り一遍な内容。しかし、麻生邸を見に行こうとして逮捕された件に関する質問主意書に答えているのが「内閣総理大臣 麻生太郎」本人、という、かなり珍しい、というか不思議な答弁書だった。

 そうして鈴木氏が警察OBの亀井静香氏に今回の逮捕の件を話してくれて、この集会が実現したのである。鈴木氏とは勉強会にゲストで呼んでもらったり、と何度も御会いしたことはあるが、亀井氏と会うのは初めて。大役にビビりながらもこの日、司会をつとめさせて頂いた。まずはフリーター労組から今回のツアーの企画意図が話され、逮捕時の映像が上映される。そして逮捕された3人のうち2人も参加、逮捕の時の様子について語ってくれた。いきなり警察に襲いかかられて何がなんだかわからないうちに引き摺られていたこと。そのまま交番に連れて行かれて手錠をかけられたこと。弁護士と接見ができないうちに取り調べが始められていたこと、たまたま持っていた日記を勝手に警察に読まれ、精神的にダメージを与えるようなことをネチネチ言われたこと、などなど。

 私もガサ入れされた経験があるからわかるが、「警察に日記を勝手に読まれる」って、ものすごい嫌なことだ。しかも私の場合、ガサ入れに来たのがかなり年輩の弱気な人で、日記を読みながら「こういうふうに御自分のお気持ちを書けるってことは、やっぱり才能がおありなんですねぇ」って誉められてしまったのだ! そんなことどうでもいいから早く帰れよ! つかお前、絶対「趣味」として見てるだろ! その上、人のアルバムとかも全部見て「いやー、交友関係が広いんですねぇ」とか喜んでいる。お前、うちに遊びに来た友達気取りで寛いでる場合じゃないだろ!ということの繰り返しで、ガサ入れ終了後はあまりの恥ずかしさに部屋中をのたうち回ったのだった。ちなみにガサ入れが入った理由は、私が過去に5回も北朝鮮に行ってた件絡み。これもひとつの見せしめだろう。

 ハッ、話がズレてしまった。戻そう。今回の逮捕に関して、亀井氏は「やりすぎでは。逮捕しなければ暴徒化するとも思えない。やってはいけない職権行為をしたのでは」と話し、この件で警視総監に電話して叱り飛ばしたことを語ってくれた。また、鈴木氏は「若者が豪邸を見に行こうというのはあっていい」と語り、自らの家にもたくさんの人が見に来て写真をたくさん撮っていった経験などを話してくれた。また、逮捕に関しては警察側が明らかに仕掛けていることなども指摘した。

 この日の集会は「麻生邸見学逮捕の3人、野党議員と会合」「麻生邸逮捕事件、亀井静香、鈴木宗男議員からの異議あり!」などとテレビなどでも大きく報じられた。

同じく。

 10月26日、麻生の家を見に行こうとして逮捕者が出て、それからすぐに不当逮捕に抗議する賛同の輪がどっと広がっていった。救援会は寝食も忘れて走り回り、私も文化人賛同集めやマスコミ界隈の対応に追われた。その間に逮捕の映像はYou Tubeなどで話題となり、14万回という視聴回数がニュースとして報じられもした。3人は無事11月6日に釈放され(それでも11日間もブチ込まれたなんてトンデモないことだ)、そして国会で亀井氏、鈴木氏とともに集会、警視総監は亀井静香氏に怒られる、ということとなった。

 警察は、「貧乏人を3人くらい逮捕しても何の問題もない」と思っていただろう。いや、そのこと自体が場合によっては支持されると思っていたのかもしれない。声を上げたワーキングプアなど潰してしまえ、という考えを持つ人が悲しいけれどいることも事実だ。だけど、この不当逮捕は、様々な人に「いくらなんでもおかしい」という気持ちを起こさせ、そして大きな問題となって広がっていった。

 私たちが麻生の家に向かって歩いた渋谷の街では、電気屋さんや薬屋さんが大音量の音楽を流し、拡声器で宣伝しまくり、道端ではサラ金の広告などのプラカードを数千円の報酬で1日中持ち続けている人がいる。そんな「商業活動の自由」が大手を振る中、私たちは電気屋さんの呼び込みよりよほど小さな肉声で「麻生さんの家に行きませんか」と言い、プラカードを掲げることもできずに歩いた。誰かが言っていた。サラ金のティッシュは配れても、反戦ビラを配れないことこそに「政治」がある、と。

 そんな言葉を今、身をもって感じている。

 さて、11月29日、30日の「反戦と抵抗の祭〈フェスタ〉08」の本番はもうすぐだ。いろいろ準備しなくては。

雨宮さんに亀井静香さん、鈴木宗男さん。
たしかになんだか「すごい」組み合わせですが、
それもこの一件の、あんまりにあんまりな「おかしさ」ゆえ?
「サラ金のティッシュは配れても、反戦ビラは配れない」、
そんな社会には暮らしたくない! と、強く強く思います。

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