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雨宮処凛がゆく!

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あまみや・かりん北海道生まれ。愛国パンクバンド「維新赤誠塾」ボーカルなどを経て作家に。自伝『生き地獄天国』(太田出版)のほか、『悪の枢軸を訪ねて』(幻冬舎)、『EXIT』(新潮社)、『すごい生き方』(サンクチュアリ出版)、『バンギャル ア ゴーゴー』(講談社)、『生きさせろ!〜難民化する若者たち〜』(太田出版)など、著書多数。現在は新自由主義の中、生活も職も心も不安定さに晒される人々(プレカリアート)の問題に取り組み、取材、執筆、運動中。非正規雇用を考えるアソシエーション「PAFF」会員、フリーター全般労働組合賛助会員、フリーター問題を考えるNPO「POSSE」会員、心身障害者パフォーマンス集団「こわれ者の祭典」名誉会長、ニート・ひきこもり・不登校のための「小説アカデミー」顧問。「週刊金曜日」「BIG ISSUE」「群像」にてコラム連載。雨宮処凛公式サイトhttp://www3.tokai.or.jp/amamiya/

生きさせろ!
雨宮処凛の闘争ダイアリー

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政治家の言動を
徹底監視することを誓う。の巻

フリーター全般労組のガソリンスタンドユニオン祝勝会にて。
労働審判で解雇撤回を勝ち取ったのだ!

 夏風邪をこじらせている・・・。
 そんな中、更に風邪をこじらせるような番組に出演してきた。
 「たかじんのそこまで言って委員会」だ。

 東京では放送されてないのだが、関西の方は御存知だと思う。また、昨日イベントで北見に行き、北海道でも放送されていることを知った。どんな番組か説明するのは難しいが、一部では「右翼番組」とも言われているという・・・。

 で、大阪まで行って番組に出演してきたのだが、なんというか、非常に落胆したのだった。私以外のパネラーは、鴻池祥肇氏、森本敏氏、田嶋陽子氏、 桂ざこば氏、原田眞人氏、勝谷誠彦氏、宮崎哲弥氏。で、テーマは、若者の雇用問題などを軸に置きながらも「左翼」。
 労働/生存運動って、右とか左以前の問題だと思うのだが、それを「左翼」とくくってしまうところになんとなく意図を感じる。しかも「希望は戦争」と語る現代の若者の思想とは、みたいな、なんだかあまりにもごちゃ混ぜな感じだ。

 そういう前提から始まっているので、こちらがいくら「生存が脅かされている」系のことを話しても通じない。というか自民党の鴻池氏に至っては、本当に本当にまったく全然言葉が通じないということをひしひしと感じた。氏は現在、参議院予算委員長。派遣法の改悪によってワーキングプアが大量に産み出され、年収200万以下の人が1000万人、という現状に責任がないはずはない氏は、それでもこの問題を「ふらふらしてフリーターやってるだけ」「兄ちゃん姉ちゃんがぐちぐち言ってるだけ」「甘えている」などと、まったく政治と切り離して若者バッシング。なんだか非常に、わかりすぎるほどよくわかってしまった。ここまで露骨な意見を自民党の国会議員から聞くと、本当に、悲しくなってくる。そうして「愛国教育」系のことを言う鴻池氏。愛国心を持って、「正しい」歴史認識を持てば、「ふらふらしたフリーター」にならないというのだろうか?

 90年代から続いてきた若年層を見捨てるような雇用政策は、まったくの無関係だというのだろうか?正社員を非正社員に置き換え、多くの非正規雇用者を使い捨てにすることによって暴利を貪ることを容認してきたのは、一体どこの誰なのか?どこの政党なのか?
 若年貧困層の窮状を「自己責任」「やる気がない」「ふらふらしてるだけ」とバッシングだけしていれば、国は政策の失敗を問われることなく、その上一円の予算も使うことなくこの問題を「個人の心の問題」に矮小化できる。そんなやり方を本当にやっている国会議員を目の前にして、改めて心の底から落胆したのだった。

 それにしても、愛国心系のことを言うのであれば、次世代を担う若年層の雇用を切り崩し、その貧困を放置することほど「愛国」に反することはない。このままいけば年収200万以下の層は更に激増し、少子化も進み、消費も伸びず、将来的には生活保護受給者が増えることが目に見えているのに、先のことなどどうでもいいようである。本気で「国」のことを考えるなら、真っ先に手がつけられるべき問題なのに、ずーっと「だらしない」と言い続けるのだろうか。ちなみに鴻池氏は長崎で起きた男児誘拐殺人事件の際、「親を市中引き回しの上、打ち首にすればいい」と発言した人である。こういう人の「愛国心」とは、一体どんな形のものなのだろうか。そして一体、誰がこの社会の不安定化を進め、そしてそれをわざと「若者のだらしなさ」などを強調する形で「政治的に」隠蔽しているのか。一人一人の政治家の発言をしつこくしつこく覚えておき、そして伝えたいと思う。
 それにしても、不況の中で政治的に見捨てられ、今度は非常に政治的意図を持ってパッシングされ、その中でそのバッシングを本気に受け止めてしまう若者たちにはたまらない。時にそのバッシングは彼らを「殺す」ほどの暴力となるのに、自殺でもすれば「弱い」「甘えている」などとまたバッシングされるのだろう。とにかく、私は鴻池氏の発言を絶対に忘れないし、これからも執拗にチェックし続けるつもりだ。みんなもあらゆる政治家を徹底的に「監視」しよう。

 さて、その番組が放送された日、私は北見でトークイベントに出演してきた。北海道・北見の若者たちが呼んでくれたのだ。その中には、時給720円で1日中じゃがいもの皮をものすごく高速で剥き続ける仕事をしている女の子がいた(ローソンのおでん用のじゃがいも)。就職活動を始めようにも世に蔓延する「若者バッシング」に身動きできなくなっている人がいた。仕事で事故に遭い、手の指を失ってしまった若者がいた。友達が派遣で本州の工場に行っているという若者がいた。みんなとっても誠実で真面目で、必死に働いて生きていて、一体鴻池氏は若者たちと会い、話したことがあるのだろうかと思った。たぶんないんだろうな。彼の頭の中に「脳内若者」イメージができていて、彼らにはどんな仕打ちをしてもいいことになっているんだろう。とにかく、またひとつ、この国の政治家に心の底から失望したのだった。

同じく祝勝会にて。本日はドイツパーティーということで、ドイツっぽい食べ物が振る舞われる。超美味! 何をするにもブルーシートが基本です。

鴻池氏の「打ち首」発言もそうですが、
どんな政治家の問題発言も、メディアを一時的に賑わすだけで、
あっという間になかったことのようになってしまうのがいつものパターン。
どの政治家が、何をどう考えて行動しているのか、
しっかりと自分たちでチェックし、記憶していく必要があります。

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