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あまみや・かりん北海道生まれ。愛国パンクバンド「維新赤誠塾」ボーカルなどを経て作家に。自伝『生き地獄天国』(太田出版)のほか、『悪の枢軸を訪ねて』(幻冬舎)、『EXIT』(新潮社)、『すごい生き方』(サンクチュアリ出版)、『バンギャル ア ゴーゴー』(講談社)、『生きさせろ!〜難民化する若者たち〜』(太田出版)など、著書多数。現在は新自由主義の中、生活も職も心も不安定さに晒される人々(プレカリアート)の問題に取り組み、取材、執筆、運動中。非正規雇用を考えるアソシエーション「PAFF」会員、フリーター全般労働組合賛助会員、フリーター問題を考えるNPO「POSSE」会員、心身障害者パフォーマンス集団「こわれ者の祭典」名誉会長、ニート・ひきこもり・不登校のための「小説アカデミー」顧問。「週刊金曜日」「BIG ISSUE」「群像」にてコラム連載。雨宮処凛公式サイトhttp://www3.tokai.or.jp/amamiya/
東京地裁前で「折口ちょっと来い!」。なんか一人だけリゾート気分ですいません。
8月23日、この連載でも何度か紹介している「グッドウィルユニオン」が、データ装備費の返還を求めて集団訴訟を開始した。とうとうワーキングプアの逆襲が本格的に始まったのだ!
ということで駆け付けて来ました、東京地裁。この日は第一次提訴。第二、第三と続々と続くようだ。第一次は26人の原告が、455万4600円を請求して提訴した。原告の中でもっとも多くデータ装備費を取られていた人の総額は、なんと40万円以上にものぼる。提訴当日、東京地裁前には「折口ちょっと来い!」という横断幕のもとに、原告をはじめとするグッドウィルユニオンのメンバーが集まり、「ピンハネをやめろ! 」「俺たちをモノ扱いするな!」と叫んだのだった。
その後、厚生労働省で記者会見が行われ、原告として立ち上がったナイスガイたちが発言する。「データ装備費は任意と言いながら強制だった。それを『返せ』というのはおかしいでしょうか」「自分たちがやってることはごくマトモなことだと思います」「(折口は)すごく金持ちなのに日雇いの人から200円取るなんて。こんなセコい人に会ったことない(笑)」。そうしてグッドウィルの違法派遣の実態などが語られる。この訴訟の弁護団がまた凄い。中野麻美弁護士、棗一郎弁護士、小川英郎弁護士と、労働問題マニアとしては思わず「萌え!」と叫んでしまいそうなメンツではないか。
グッドウィルユニオン立ち上げからわずか5ヵ月。本当に集団訴訟が実現したことは感慨深い。グッドウィルで働くたくさんの人達が怒りに燃えて立ち上がったことにはとても励まされるが、同時に、なぜ裁判まで起こさなくてはならないのか、という気持ちも否めない。裁判とか、組合作るとか、そういうことまでしないと生きていけないような時代。だけどこの日、原告の人達の言葉にはとても勇気づけられた。この日揃った5人の原告はみんな30代。「今、もっと困ってる人達の助けになればと思って」集団訴訟に参加することを決意したという。本当に大変な状態の人は運動なんかできない。裁判になんかかかわれない。だからこそ、今、少しでも余裕がある人たちにこそ期待したいのだ。決して他人事ではないはずだ。今、もし正社員で経済的には余裕があるとしても、学生時代にグッドウィルで働いたことがあったりするでしょ? データ装備費取られてるでしょ? グッドウィルで日雇いで働くという生活がずーっと続いている人達もいる。それはもしかしたら自分だったかもしれない。そう思うと、やはりちっとも他人事じゃない。
さて、そんな提訴の翌日は、「刑事告発」と「人権救済申し立て」だ。北九州市で「おにぎり食べたい」という言葉を残して52歳の男性が餓死した事件で、「生活保護問題対策全国会議」が8月24日、北九州市の福祉事務所長を「保護責任者遺棄致死」と「公務員職権濫用」で刑事告発したのだ。告発人は364人。私も告発人の一人にさせて頂いている。同時に、福岡法務局北九州支局に対し、人権侵犯救済申告書を提出。
人の命より、公務員のノルマが優先されたことから起きたこの事件。報道によると、北九州市では生活保護の申請書は月に12枚まで、とか、年に5件生活保護受給者を減らす、とかいうノルマがあったという。ノルマを達成できれば、誉められたり給料上がったり出世できたりするのか? そういえば、「死刑執行」にも、一人殺すごとに1万円とかの「手当て」が支給されると聞いたことがある。こういうことはもちろん、現場だけの問題ではない。現場にそんなことを押し付けるシステムそのものの問題だ。でも、「貧乏人は早く死ね」なんて社会が生きやすいはずがない。だから私は生きづらかった者の一人として、自分を生きづらくしそうなモノにはいちいち文句をつけ、暴れたい。
派遣ユニオンが「日雇い派遣」(旬報社)という本を出しました。
グッドウィルとの闘いの様子がよくわかります。
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同じ出版社から「ガテン系連帯」の闘いを描いた
「偽装雇用」(旬報社)という本も出ました。シリーズです。
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オールニートニッポンが本になりました。
「雨宮処凛のオールニートニッポン」(祥伝社新書)という
そのまんまの名前です。読んでね。
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上記ふたつの出来事は、それぞれ重大な憲法違反の問題だろう。働いても生きていけないワーキングプアと、餓死。生存権。
そして同じ日、またしてもトンデモない憲法違反な事件が起きた。「世界陸上」で盛り上がる大阪で、野宿者の強制排除に対して活動していた男性のバイト先に家宅捜査が入り、逮捕されたのだ。逮捕理由は「道路運送車両法違反」・・・。聞いたこともない。なんか、大阪市内では使用しちゃいけないディーゼル車を昨年中に市内で運転したという理由らしい。が、逮捕された男性はこの車を半年以上使ってないそうだ・・・。
なぜ大阪府警が彼を逮捕したのか? それは彼が「世界陸上」の会場である長居公園の野宿者の強制排除に対し、闘ってきたからに他ならないだろう。だからこそ、世界陸上開会式の前日にワケのわからない罪をでっち上げて逮捕したのだ。開会式の日には、「野宿者排除のもとでの世界陸上に抗議する集会」の開催が予定されていた。逮捕後に出された「釜ヶ崎パトロールの会」の声明には、「これは世界陸上開会式への抗議の声を圧殺しようとする予防拘禁に他なりません」と書かれている。(詳しくはこちらで)
世界陸上のためなら野宿者を排除し、それに反対する人は容赦なく逮捕してブチ込む・・・。憲法十九条「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」、二十一条「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」を出すまでもなく、今回の原稿だけでどれだけの憲法違反があるんだろう・・・。私たちは、私たちを生きづらくさせるものに対して、黙っている必要などまったくない。
※9月21日午後7時、反撃の一貫として「生きさせろ! 集会」を新宿紀伊国屋ホールで開催します。出演は、小熊英二さん(慶應義塾大学総合政策学部教授) /松本哉さん(貧乏人大反乱集団/高円寺ニート組合/素人の乱) /大平正巳さん (フリーター全般労働組合) /河添誠さん (首都圏青年ユニオン) /関根秀一郎さん(派遣ユニオン) /池田一慶さん (ガテン系連帯) /今野晴貴さん (POSSE) /冨樫匡孝さん (自立生活サポートセンター・もやい) /雨宮処凛 (作家) 。詳細はまたお知らせします。
「生きづらさライオット」というイベントにて。「暴動だ! 生きづらい人、全員集合! 」とのかけ声で、生きづらい社会にキレたニート、ひきこもりなどなどが集結。ここにも反撃の狼煙が。
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