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あまみや・かりん北海道生まれ。愛国パンクバンド「維新赤誠塾」ボーカルなどを経て作家に。自伝『生き地獄天国』(太田出版)のほか、『悪の枢軸を尋ねて』(幻冬舎)、『EXIT』(新潮社)、『すごい生き方』(サンクチュアリ出版)、『バンギャル ア ゴーゴー』(講談社)、『生きさせろ!〜難民化する若者たち〜』(太田出版)など、著書多数。現在は新自由主義の中、生活も職も心も不安定さに晒される人々(プレカリアート)の問題に取り組み、取材、執筆、運動中。非正規雇用を考えるアソシエーション「PAFF」会員、フリーター全般労働組合賛助会員、フリーター問題を考えるNPO「POSSE」会員、心身障害者パフォーマンス集団「こわれ者の祭典」名誉会長、ニート・ひきこもり・不登校のための「小説アカデミー」顧問。「週刊金曜日」「BIG ISSUE」「群像」にてコラム連載。雨宮処凛公式サイトhttp://www3.tokai.or.jp/amamiya/
行くとこなくて、金もなくて、日雇い派遣のあと、マクドナルドで時間を潰すぶっち。所持金は1000円と少し。この後、漫画喫茶の5時間パックでなんとか仮眠をとってまた翌日の日雇い派遣へ。死ぬぞ。
そんな彼の周りには、厳然たる「格差」が存在する。大手レコード会社に就職した元同級生。正社員としてバリバリに働く彼は、ぶっちに「努力が足りない」と言う。その彼は、「2万人その会社を受ける人がいたら自分が一番やっていた」と豪語するほど、就職活動に命を賭けた。なんと彼は、エントリーシートに10万円もかけたのだ(・・・)。高級な紙を使ったり、紙にその会社のマークの「透かし」を入れたり。そうやって彼は「会社」に猛アピールし、正社員の座を手に入れた。ここまでくるとカルトだ。
かたや、ぶっちと同じくキヤノンの工場で働く派遣の若者は「正社員になりたい」「ボーナスがほしい」と肩を落とす。「なんか、派遣の人って顔が暗いよね」とぶっちと語り合う同僚は、元理容師。しかし、理容師でやっていけるかという不安から派遣に来たらしい。なぜなら、彼の両親も理容師だが、それだけでは食べていけず、清掃のアルバイトをしているからだ。
同じく日雇い派遣のワンシーン。日雇い派遣の仕事内容は引っ越しや製本工場、東京ドームの案内係などなど。現代日本でフリーターにお世話になっていない人など誰もいない。もっと激しく感謝し、時給も上げるべきだ。
日雇い労働で過ごす23歳のクリスマスイブ。その夜、一人で食べる牛丼。マクドナルドや漫画喫茶、路上で明かす夜。キヤノンの工場のロッカールームには、派遣社員はキヤノンの工場のゴミ箱を使うなという貼り紙が貼られている。世間で言われる「フリーター問題」とか「格差社会」とか「若者の貧困」とか、そんなこととは関係なく、映画の中には、ただ、必死で生きる23歳のぶっちがいる。「不幸で貧しい派遣労働者」というレッテルを貼られながらも、彼は真摯な試行錯誤のただ中にいる。
私も含め、多くの書き手やマスコミが不安定な若者の姿をとらえてきた。その当事者からの逆襲が、このドキュメンタリー映画だ。格差とかフリーターとか負け組とか生涯賃金とか、それらモロモロに「うるせぇ、俺は生きてるぜ!!」と逆ギレしたぶっち。貧乏で、未来がわからなくて、不安で、生きづらくて、だけど無性にエネルギーには満ちていて、だけどそのエネルギーをどこに向けていいのかわからなくて、そんな「超青春映画」に、私は猛烈に感動し、泣いた。※7月20日、18時30分より、東京ボランティア市民活動センターにて「遭難フリーター」完成試写会を開催します。
※6月8日、赤木智弘さん、杉田俊介さんをゲストに「フリーターの『希望』は戦争か?」というトークライヴを開催します。詳細は以下。
http://j-academy.dreamblog.jp/blog/106.html
働いても働いても、手持ち300円で野宿する青年。
「遭難フリーター」を生み出す、こんな日本で本当にいいのか?
「当事者からの逆襲」である「超青春映画」、見に行こう!
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