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あまみや・かりん北海道生まれ。愛国パンクバンド「維新赤誠塾」ボーカルなどを経て作家に。自伝『生き地獄天国』(太田出版)のほか、『悪の枢軸を尋ねて』(幻冬舎)、『EXIT』(新潮社)、『すごい生き方』(サンクチュアリ出版)、『バンギャル ア ゴーゴー』(講談社)、『生きさせろ!〜難民化する若者たち〜』(太田出版)など、著書多数。現在は新自由主義の中、生活も職も心も不安定さに晒される人々(プレカリアート)の問題に取り組み、取材、執筆、運動中。非正規雇用を考えるアソシエーション「PAFF」会員、フリーター全般労働組合賛助会員、フリーター問題を考えるNPO「POSSE」会員、心身障害者パフォーマンス集団「こわれ者の祭典」名誉会長、ニート・ひきこもり・不登校のための「小説アカデミー」顧問。「週刊金曜日」「BIG ISSUE」「群像」にてコラム連載。雨宮処凛公式サイトhttp://www3.tokai.or.jp/amamiya/
「武装より女装」を掲げるドラァグクイーンと不思議な人々。
5月19日、福岡に行ってきた。フリーターユニオン福岡が「五月病祭」を開催。集会に呼んでくれたのだ。彼らはフリーター労組と同じく「誰でも一人でもフリーターでも入れる労働組合」。ちなみにニート、ヒマ人、貧乏人、パンク、アナキスト、非国民、負け組なども入れるらしい。以前から「福岡は面白い」と聞いていた。プレカリアート運動と一口に言っても、その地その地で様々な特色がある。昨年、東京から数人が福岡のデモに参加し、いたく衝撃を受け、感激していたのだが、もっとも衝撃を受けていたのは、「これからデモをやるというのに焼き鳥を焼いていた」ということだった。デモ後の酒のつまみを大切にするその姿勢は、ぜひとも見習いたいものである。
さて、飛行機で福岡に行き、会場についた瞬間、目の前にいたのはピンクのドレス姿のドラァグクイーンだった。その手には「武装より女装」というプラカード・・・。他にもナース服、ロリータなどなど、みんな変な格好をしている。その辺に置いてあるチラシを手に取って、思わず噴き出した。「東アジア反日物騒戦線『猫の肉球』」・・・。ごめん、わかる人にしかわからないネタだろう・・・。
気を取り直して、3時からフリーターユニオン福岡・執行委員長の小野さんとトーク。トークのテーマは「生きづらさの変容」だ。以前は「豊かだけど生きづらい」社会だった。それが今は「生きづらいし貧しい」ということになっているのではないのか、という問題提起だ。このことは、私にとっても大きなテーマであり、そして私は、そのことに去年まで鈍感だった。生きづらさの取材をしながら心の問題のみを見て、その背景、生活状況に目を向けず、昨年やっと事態がここまでひどくなっていたことに構造として気づいた。その瞬間から、私の問題意識は大雑把に言えば「貧乏な上に生きづらい」に変わった。貧乏と生きづらさの背景にあるのは、これまた大雑把に言えば経済のグローバル化、そしてネオリベラリズムだろう(詳しくは「生きさせろ!」で)。
路上を思いきり奪還する人々。
小野さんとトーク前、雑談していて気づいたことがある。それはこういったフリーターや非正規、貧乏の問題に積極的に取り組んでいるのが皆74年、75年生まれということだ。現在31、2歳の人々だ。私も小野さんも、「素人の乱」の松本哉さんもそうだし、「フリーターにとって自由とは何か」を書いた杉田俊介さんもそうである。また、赤木智弘さんも。なぜここまできっちり同じ年、学年を生きた人々がこの問題に取り組むかは、バブル崩壊以降に就業年齢を迎え、今までの価値観や学歴ではまったくもって生きていけなくなったことを身を持って体感した第一世代だからではないか。だからこそ、この世代にとってフリーター問題はいくら脱フリーターをしても他人事ではなく、また、自分がどんなに金持ちになっても終わるものではない気がするのだ。なぜなら同じ年の身近な人々がどういう境遇にあるかを知ってしまうからである。小野さんも皆が同じ年であることには興味を持っていたようで、是非一度、この辺の人達で何かやりたいものだ。「怒ってる巨大なわんこ」も登場。「赤巻紙青巻紙黄巻紙!」という意味不明な早口言葉シュプレヒコールもありました。
デモ終了後は、やはり公園で乾杯。最近、私は店より公園で飲む機会の方が多い気がする。その後は事務所にて、夜中まで今後についての楽しい「共謀」が行われたのだった。 フリーターユニオン福岡が面白いのは、「労働組合」だけでなく「生存組合」という言葉も使っていることだ。「生存」のための組合。具体的な取り組みとしては、金がない人に米をあげたりしているらしい。こう書くと大したことには聞こえないかもしれないが、これはすごいことである。あなたが米を買う金すらなくなった時、米をくれる人がどれだけいるだろう? くだらない説教をせずに、そしてそんな状況に陥ったあなたにちっとも「引かずに」くれる人が。あなたが「米をくれ」と言える人が。「組合」をつくり「交流」すること。
既存のイメージとは異なる、真の意味で生きることを
支えあい、交流するユニオンが、必要とする当事者から、わき上がっています。
さて、雨宮さんが名誉会長を務める「こわれ者の祭典」のイベント情報はこちらから。
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