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日本における核兵器保有についての論議や政治家の発言は、
欧米のメディアでも報道されていますが、どのように語られているのでしょうか。
ドイツとアメリカの新聞記事に注目しました。

第31回
アメリカ外交を一週遅れで追走する日本
ほうち たかゆき 1962年東京生まれ。
大学卒業後、会社勤めを経て、東ベルリン(当時)に留学。
東欧の激変、ベルリンの壁崩壊、ソ連解体などに遭遇する。
帰国後はシンクタンクの調査マン。
著書に『ぼくたちは革命の中にいた』(朝日新聞社)
『ハルビン学院と満洲国』(新潮社)など。


ドイツ『ヴェルト』紙による日本の核保有能力

  11月13日付ドイツ『ヴェルト』紙 は「日本と核の誘惑」と題する記事を掲載した。北朝鮮の核実験が日本に核兵器保有を促しているという趣旨である。
「(私は)核武装は反対だが、議論は必要」という中川政務調査会長や、それを後押しする麻生外相の発言がいかに詭弁であるかは、「今週のキィ」でキィ氏が指摘したとおりだが、『ヴェルト』は、日本の核保有の潜在能力(日本国内53基の原子力発電所における核兵器転用可能なプルトニウム43.1.t、使用済み燃料が有するプルトニウム100tは、3000〜4000個の核弾頭に相当し、日本がやろうと思えば数週間のうちに核兵器を製造できる)がアジアに脅威を与えている点を指摘。政府高官の発言は日本のアジア外交にとって何ら好ましいものではなく、安倍氏が首相就任後、友好関係の再構築を目指して訪問した中韓両国と関係を、中川氏と麻生氏が引き裂いたと論じている。
 アメリカが(核保有論議を)どう見ているのかについて、『ヴェルト』は、アメリカ政府がアジアにおける核の連鎖を懸念する一方、日本の核保有が有益な効果を上げるとみるアナリストもいるという。
 前者の代表は、先月訪日し「日本はアメリカの核の傘の下にある」と言って日本政府にやんわり釘を刺したライス国務長官だろう。後者のそれは「北朝鮮に最も影響力のある中国に対して、(もし中国が)北朝鮮に核を放棄させることができなければ、“いずれ日本、韓国、そして台湾も核武装するぞ”という脅しになる」として肯定的にとらえるネオコンを示唆している。

日本の核保有を歓迎するアメリカのネオコン

 かつてブッシュ大統領のスピーチ・ライターを務めていたデビッド・フラム氏は、10月10日付アメリカ『ニューヨークタイムズ』紙に寄せたコラムで、日本の核保有が中国や北朝鮮に対する“お仕置き”的な役割を果たすだけでなく、イランに対しても、アメリカとその友人(日本)たちが武力をもって核保有の試みを断念させることができると書いている。
 唯一の被爆国(日本)が、それを落とした国(アメリカ)に従って、他国(イラン)に核攻撃をちらつかせる――悪夢のようなシナリオだ。
 現在、アメリカン・エンタープライズ研究所の研究員であるフラム氏は、2002年のブッシュ大統領の一般教書演説原稿に「北朝鮮、イラン、イラクは悪の枢軸」というフレーズを入れた張本人である。日本のテレビや雑誌では「(核保有論議が)中国へのプレッシャーになった」とフラム氏の論理を踏襲するような論者が少なからず登場した。中川氏の発言も、ネオコンのお墨付きをもらっていたのかもしれない。
 だが、先のアメリカ中間選挙で共和党は敗北し、イラク戦争を仕切ってきたラムズフェルド国防長官は辞任した。ブッシュ政権内部におけるネオコンの影響力は低下し、それに従って、アメリカ政府の北朝鮮に対する姿勢は軟化している。安倍首相は「北朝鮮が核保有国として6カ国協議に戻ってくることは容認できない」という主旨の発言を繰り返していたが、その点は曖昧なまま、6カ国協議も再開される見通しだ。先日、ベトナムの首都ハノイで開かれたAPEC(アジア太平洋協力)の会議では、安倍首相とブッシュ大統領の親密ぶりがアピールされるも、日本が求めていた北朝鮮非難案は宣言には加えられず、口頭の議長声明にとどまった。これは中国の意向だった。
 国際社会は――日本国内で知たり顔して口角泡を飛ばす評論家が思っているほど――甘くないのではないか。日本政府はアメリカ政界のトレンドを“一周遅れ”で追走し、国際社会での存在感を失っているように思えてならない。そうした失策を重ねる政治家が、教育基本法を改定して「もっと国(=政府)を愛せ」という。さらには憲法改定を目指し、その理由が「他国(アメリカ)に押し付けられたものだから」と公言するにいたっては、批判よりも、精神分析が必要な人々といわざるをえないだろう。

日本国内のメディアだけからは伺うことができない、
国際社会における日本外交の見られ方があるのではないでしょうか。
政治家の言葉や政策が、どんどん内向きになっていくことに、
強い危機感を抱いてしまいます。
みなさんのご意見、お待ちしています。
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