日本の核保有を歓迎するアメリカのネオコン
かつてブッシュ大統領のスピーチ・ライターを務めていたデビッド・フラム氏は、10月10日付アメリカ『ニューヨークタイムズ』紙に寄せたコラムで、日本の核保有が中国や北朝鮮に対する“お仕置き”的な役割を果たすだけでなく、イランに対しても、アメリカとその友人(日本)たちが武力をもって核保有の試みを断念させることができると書いている。 唯一の被爆国(日本)が、それを落とした国(アメリカ)に従って、他国(イラン)に核攻撃をちらつかせる――悪夢のようなシナリオだ。 現在、アメリカン・エンタープライズ研究所の研究員であるフラム氏は、2002年のブッシュ大統領の一般教書演説原稿に「北朝鮮、イラン、イラクは悪の枢軸」というフレーズを入れた張本人である。日本のテレビや雑誌では「(核保有論議が)中国へのプレッシャーになった」とフラム氏の論理を踏襲するような論者が少なからず登場した。中川氏の発言も、ネオコンのお墨付きをもらっていたのかもしれない。 だが、先のアメリカ中間選挙で共和党は敗北し、イラク戦争を仕切ってきたラムズフェルド国防長官は辞任した。ブッシュ政権内部におけるネオコンの影響力は低下し、それに従って、アメリカ政府の北朝鮮に対する姿勢は軟化している。安倍首相は「北朝鮮が核保有国として6カ国協議に戻ってくることは容認できない」という主旨の発言を繰り返していたが、その点は曖昧なまま、6カ国協議も再開される見通しだ。先日、ベトナムの首都ハノイで開かれたAPEC(アジア太平洋協力)の会議では、安倍首相とブッシュ大統領の親密ぶりがアピールされるも、日本が求めていた北朝鮮非難案は宣言には加えられず、口頭の議長声明にとどまった。これは中国の意向だった。 国際社会は――日本国内で知たり顔して口角泡を飛ばす評論家が思っているほど――甘くないのではないか。日本政府はアメリカ政界のトレンドを“一周遅れ”で追走し、国際社会での存在感を失っているように思えてならない。そうした失策を重ねる政治家が、教育基本法を改定して「もっと国(=政府)を愛せ」という。さらには憲法改定を目指し、その理由が「他国(アメリカ)に押し付けられたものだから」と公言するにいたっては、批判よりも、精神分析が必要な人々といわざるをえないだろう。