日本の改憲問題を取り上げた『フランクフルター・アルゲマイネ』の記事では、自衛隊の海外派遣が問題の核心だとしています。私自身の個人的な考えは、平和的な外交を基本とする日本国憲法が、どのような条件下であれば自衛隊の海外派遣が可能かを規定しようとしている、民主党と公明党の見解には反対ではありません。日本は世界のなかでも影響力をもつ国のひとつですし、その日本がどのような形であれ国連の平和維持活動に参加することに、世界の多くの国々は期待しているでしょう。しかしながら、日本が――国連決議を経ずにイラクを攻撃したアメリカのように-――ある特定の国の戦争に加担してしまう恐れもあります。そのため9条には「海外における武力行使はできない」と自衛隊の性格を明記すべきだと私は考えます。
侵略戦争の禁止は国連憲章で定められていますが、日本の国是である平和主義はそれよりも進んだものだと思います。平和主義を標榜する憲法は民主国家のなかでさえ非常にまれなのです。軍隊をもたない数少ない国のひとつであるアイスランドには、軍隊も、それに準じた軍事力もありません。それでもアイスランドの憲法に軍隊保持の禁止を定める条項はないのです。
日本とドイツを比べてみても大きな違いがあります。ドイツの基本法(憲法に相当)は平和主義をうたっておりませんが、ドイツ政府の政策およびドイツ連邦軍は、国内外で、平和的であるとみなされています。一方、日本は平和主義を掲げながら、隣国からはしばしば右傾化を非難されます。なぜでしょうか?
実際の政策と憲法が大きく乖離した場合、政治に対する強力な制御が必要になってきますが、日本ではそれが十分に働いていないように見えるからだと思うのです。