改めて考えてみると、日本国憲法9条は、私にとって人類の崇高な理念、人間の文明度が低ければ決して守り切れない、純潔で脆いものでした。敗戦から平和を願う気持ちが強い日本人に、神が人類に贈ったプレゼントであり、日本人が選ばれて平和を堅持する“選民”のように目に映りました。しかし、日本人はその約束を破ろうとしています。
一部の知識人を除いて、多くの中国人は日本国憲法9条の存在を具体的には知らないと思います。ただ、戦後、日本が軍隊を持たない、他国に先制攻撃をしないというような法律があることは何かの形で知られているようです。その理念は、日本人が過去に起こした間違った戦争を深く反省したことから、新しい国、新しい考えを持つ人間に生まれ変わったしるしとして、戦争、そして戦争を可能とする全ての条件を放棄したと理解しているのです。
しかし、今回の衆議院選挙における自民党の圧勝で憲法改定はますます現実的なものとなりました。日本国民は、小泉首相の独走、戦争への道へゴーサインを示したようなものです。
一応、日本の民主主義を踏まえた選挙なので民意の反映というのでしょうか? しかし、民主主義が政治やマスメディアの誘導や政治家の意識的な操作によって民族主義と結びつくと、誤った方向へ傾倒する可能性もあります。
60年前、南京攻略成功の時、日本各地で提灯行列が行われました。当時の社会の雰囲気が人々を無意識のうちに誤った方向へ導いたのです。海外派兵、9条改憲と小泉自民党は日本をますます戦争への道へ誘導しています。彼を支持する追い風は、多くの日本の先輩が語ってくれた南京攻略の話を思い出します。
もちろん、今回の自民党衆議院選の圧勝には様々な要因があると思いますが、少なくとも小泉自民党が進めているのは、対外派兵、軍備拡張、アメリカ対外武力戦争への協力、対内的には郵政改革を代表とする合理化、能率主義の強調といった、いわゆる“力を崇拝する政策”の是認でもあります。
我々人類はこれまで、力に頼った弱肉強食という人間の本能的なもの、国家の欲望をそのまま走らせる戦争の歴史を繰り返してきました。
第2次世界大戦は、力による人類最後の野蛮な殺戮であり、もう世界戦争を引き起こさないよう国連が設立され、そして戦争を起こした日本に9条という宝物が贈られました。しかし、好戦的なブッシュ大統領が再びパンドラの箱を開けたとき、小泉首相はすぐ追随し、9条という宝を捨てようとしています。
今回の衆議院選の自民党圧勝は、一般の中国人に不思議に思われたと同時に、ショックを与えたことでしょう。それが日本人に対する誤解を増幅することになったら怖いと思います。まさに民主選挙のはずですから、小泉自民党の路線が国を挙げて支持されていると思われているのです。「自民党支配のなかで長年行われてきた党利党略のための小選挙区制という現行の選挙制度が、はたして大多数の民意を反映できるか」という疑問は今の中国人には知られていません。
日本流の民主主義は限界にきていると感じます。