フランスではすでに数回、国民投票が行われています。最近のEU憲法批准の是非に対する国民投票では、反対票が過半数を超えましたが、私自身、フランス国民が批准自体に反対なのかどうかはわかりません。多くの有権者の「ノン」は、批准を進めようとするフランス政府のやり方に対するものだったと思うからです。
新しいEU憲法の草案は膨大かつ詳細で、多くの有権者は読むことができない、あるいは読もうとしませんでした。そのため政府はテレビやラジオ、新聞などを通して、世論を形成しようとしましたが、国民の多数は、新しい憲法が――中央集権化といったような――何らかの問題をもたらすのではないか、と思ったのです。
私たちは何のために投票するのか? EU憲法批准の賛成派、反対派を問わず、それをきちんと説明した政治家はいませんでした。(国民投票の実施は現与党が)次期大統領選を念頭に置いたものだともいわれ、国民はこの国民投票に関心をもてなかったのです。
国民投票とは、自国だけでなく、諸外国にとっても重要な争点に対して国民が自らの意思を表明することです。政府は、国民投票を行うにあたって、その意味を丁寧に説明する義務があります。なぜなら投票後は後戻りできないのですから。
私は、国民投票を行うのであれば、政府が「争点について十分説明し、ウイであろうと、ノンであろうと、国民の判断を遵守し、それに正当性を与えるとした上で、国民投票のテーマに関する議論を準備する」ことが不可欠だと思います。
とはいえ、選挙もしくは国民投票の結果は常に読みがたいものです。大事なのは有権者が一票を投じること。EU憲法を巡るフランスの国民投票では、過半数が「ノン」と言いましたが、同時に多くの人々が棄権しました。選挙権のある国でどうしてそれを行使しないのか。投票しなかった人が、後で何かを言っても、どうしようもありません。