自衛隊がイラク駐留を続けるか否かよりもさらに重要なのは、憲法改定に関する議論だと思います。1947年の制定以来、一度も変えられていない憲法の大幅な改定が準備されています。とりわけ9条の改定が議論されているにもかかわらず、与野党ともに選挙戦の重要なテーマとして採り上げませんでした。60年間変わらなかった憲法がいかに変えられるのかという問題は、たとえば郵政改革よりもずっと大事なことでしょう。選挙戦は将来の憲法について議論する絶好の機会でしたが、各党のマニフェストも大きくは取り扱わず、世論でもこの問題が優先事項にされることはありませんでした。
同じようなことはドイツでもあります。今年、フランスとオランダでEU憲法批准の是非を問う国民投票が行われ、否決されました。EU憲法は、EUの将来の発展のために非常に重要なテーマです。多くのドイツの国民は、どうしてドイツでは国民投票が行われず、EU憲法について十分な説明がなされないのか疑問に思っています。今回の選挙で、このテーマを重要課題に挙げる党もありません。
しかしながら、EUにおける協力はドイツ外交にとって最も重要なファクターです。EU諸国はドイツにとって最大の貿易パートナーであり、欧州統合はドイツのあらゆる生活分野の発展に影響を与えます。国民が重視する経済発展は、EUの発展にかかっているのです。
両国の選挙で注意を払われなかった日独の憲法に関わるテーマに注目することは、すべての政党と国民の課題だと思います。
日本の衆議院では自民党と公明党が3分の2以上の議席を獲得し、憲法改定への道は容易になりました。野党や国民はすぐにでもその問題に関する議論を始めるべきでしょう。民主党の新代表、前原氏は外交の専門家でもありますし、外交、そして憲法9条改定に関する議論を進めるつもりだと思います。
ドイツの選挙では新しい政権づくりが難航しています。結局、外交は選挙戦で大きな役割を演じなかったのかもしれません。キリスト教民主同盟とドイツ社会民主党の大連立政権が生まれそうですが、この場合、野党は非常に小さな勢力となるので、国民はより積極的に政治の議論に参加し、自分たちの意見を表明しなければなりません。
|