ソフィー・モンシー(Sophie
Moncy)
1967年、フランス・ノルマンディ地方、ルーアン生まれ。 現在、ルーアン市にある米国系化学品メーカーの フランス支社に勤務。 |
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フランスでは1997年末に徴兵制度が廃止され、現在の軍隊は志願兵で成り立っています。
それ以前は、18歳以上の若者はまず3日間、兵役に就く理由・場所・方法など、兵役に関するガイダンスに参加し、最後に試験を受け、それに合格してから1年間の兵役を始めるというシステムでした。現在は、若者(男女を問わず)は「国防のための心構えの日」として1日入隊し、国防と国防軍の意義について学ばなければなりません。
国防軍における生活については定期的にテレビやラジオで宣伝されているものの、入隊する若者の数は年々減っているようです。ただ、私は、徴兵制度よりも志願兵だけで成り立つプロの軍隊の方がベターだと思います。ベストなのは軍隊をもたないこと。フランスだけでなく、世界中が。ユートピアに聞こえることはわかっていますが、軍隊の放棄こそが暴力の連鎖を断ち切るのです。
しかし、第2次世界大戦直後は「戦争は2度とごめんだ」という声が上がったものの、イスラエルとパレスチナ、あるいはカシミールにおけるインドとパキスタンとの紛争など、その後も紛争や暴力がなくなることはありませんでした。
隣国に武力で威嚇されるなかで、1国だけが軍隊を放棄しても、その国は生き延びていけません。非常に残念なことですが、軍隊はその国の立場と力を誇示するひとつの手段であり、現在、それを放棄する国はないでしょう。
たとえば、テレビで、アフリカや旧ユーゴスラビアのコソボに展開する武装した国連軍兵士を見るとおかしな気持ちになります。平和を維持するためにそれ以外の手段はないのか、暴力や脅しに対抗するには暴力しかないのか、と考えてしまうのです。
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フランス政府はイラク戦争に反対しました。私を含め、ほとんどのフランス国民にとってその決定は喜ばしいものでしたが、参戦拒否は人道的な理由からではなく、フランス政府がイラクに対する政治的、経済的な利害をもっていなかったからだと思います。多くの国民はフランス政府の決定を誇りに感じているものの、反米的な気分からアメリカが早々に勝利宣言をしたときには幻滅し、その後、米軍がイラクで問題に直面するのを見て「いい気味だ」と思っているような印象が私にはありました。
フランスのメディアは、イラクの捕虜収容所で起きた米軍兵士による捕虜虐待について大々的に報道しましたが、自分たちがかつてアルジェリア戦争(1954〜1962年まで続いたフランスの植民地支配に対するアルジェリアの独立戦争)で行ったことを忘れているように思えます。他者を批判するのは簡単ですが、私たちはまず自分たちの歴史を見据えなければなりません。フランス政府はいまだ公式にアルジェリア戦争について語ろうとせず、あれは「騒乱だった」とか「結果的に(フランスが)アルジェリアを解放した」などという人もいます。
第2次世界大戦中、フランス国民全員が反独レジスタンスであったわけでも、ドゴール支持者だったわけでもありません。ドイツ人全員がナチスではなかったように。そもそも道徳を唱えられる国など世の中にあるのでしょうか。
第2次世界大戦時の日本の行為に関する解釈を巡って日本と中国が対立していることについて、フランスのメディアは中立的な立場でシンプルに報道していますが、「新しい歴史教科書が日本の果たす役割を縮小させたのではないか」というニュースを読んだことがあります。私は多くの新聞をフォローしているわけではありませんので、それ以上はわかりませんが、歴史とは、現在あるいは将来の世代を非難するものではないと思います。隣国との未来の共通基盤を築くためには、過去に起こったことを忘れることなく、歴史の事実に忠実であることで、よりよき共存を目指すべきだと思うのです。
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