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日本の憲法9条のこと、海外からはどう見られているのでしょう。
日本とドイツが現在置かれている「国際貢献のための派兵」の問題に対し、
フランクフルト在住の編集者、ギドー・ケラーさんが語ります。


第2回
ドイツ
「敗戦国・ドイツと日本にとっての憲法の意義」ギドー・ケラー
ギドー・ケラーGuido Keller
1964年生まれ。「アンコール出版」編集者、日本語翻訳者。
フランクフルト在住。
“ANGKOR VERLAG”(www.angkor-verlag.de)
徴兵制のあるドイツ その実情とは?
 ドイツでは徴兵制が敷かれていますが、いまでは制度自体が緩くなっています。実際に兵役に就くのは2人に1人。兵役を拒否する者は代わりに社会奉仕活動*につきます。私は1964年生まれですが、私の時代には、良心的兵役拒否に対する思想信条の審査がありました。時と場所は違うものの、マッカーシー**時代のアメリカを連想させられたものです。
(注)* ドイツでは兵役は18才以上の男性に義務付けられている。期間は9ヵ月。思想信条を理由に拒否した場合〔良心的兵役拒否者〕は10カ月の奉仕活動で代替できる。海外の場合は12カ月)

(注)** ジョセフ・マッカーシー。1950年代、米国共和党上院議員だった彼を中心に、共産主義者に対する過激かつ狂信的な攻撃・追放が行われた。以後、政府が認めていない思想や政治的態度を罰しようとすることを「マッカーシズム」と言うようになった。


 私は、徴兵もそれに代わる社会奉仕活動の義務づけにも反対です。思想信条や意見を無理やり言わされることがあってはならないと思います。

 私たちの社会の現実をみれば、国内に大きな格差が生まれています。社会的なハンディキャップを背負った人々が増えると同時に、(ドイツのような)多文化社会では、文化摩擦、移民の増大、国境を越えた犯罪の流入、そしてテロリズムなどの脅威の方が大きい。冷戦後のいま、他国からの攻撃にさらされる危険はむしろ小さくなっているのです。

 軍隊が志願兵だけで十分な力をもてるのであれば、徴兵制はいりません。2002年秋に旧東ドイツを襲った洪水被害に対して、すばらしい活躍を見せてくれたのはプロの兵士と兵役に就いた若者たちでした。

 旧ユーゴスラビアのコソボやアフガニスタンへのドイツ兵士の派遣をみるに、平和の確保や人道支援のためとはいえ、彼らの役割はいったいどこまで広げられるのか問わずにはいられません。国内の人道的な活動と違って、外国で彼らは命を賭けることになります。
それは「自衛軍」ではないでしょう。人は命のリスクを負って自らを守ることがありますが、それは危機に遭遇したときであって、自ら危険地域に踏み込むときではない。そう思うからこそ、日本がイラクに戦力を送ることは理解できないのです。私たちの国の兵士がアフガニスタンに派遣されることと同じように。
日本もドイツも、憲法が歯止めになってくれたからこそ平和でいられた
 私はタリバンやサダム・フセインが「いい人」だとは思いません。でも、タリバンやフセインがドイツやドイツ人を攻撃していないのに、アフガニスタンやイラクでドイツ兵が犠牲になる必要があるのでしょうか。ドイツ政府は自国の軍隊を「国防軍」と規定している基本法87条aに反してはならないし、日本政府は憲法9条に反するようなことをしてはならないと思うのです。

 戦後のドイツと日本は、敗戦国として軍事的には受身な立場にありました。自分たちの意志で軍事力を強くすることはできませんでした。ですから、急に「ドイツや日本はヨーロッパや東アジアで軍事的な責任を負うべき」などという普通のドイツ人や日本人はいないでしょう。もし、ドイツや日本が戦後、憲法上の制約を受けていなかったら、とっくに軍隊をもち、アメリカに依存しない代わりにグローバルな脅威にやられていたかもしれません。

 「紛争地域に平和をもたらすため」という言葉を何度も聞かされるのはもういい。いつも誰かの後ろ盾を頼むのもやめよう。私たちはそのような問題を自ら解決すべきなのです。
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