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2013-07-23up

佐藤潤一の「カエルの公式」

第30回

土用の丑の日が「絶滅危惧種を食べる日」に? —タイムリーな情報発信の重要性

 こんにちは!

 参院選の選挙結果についてたくさん書きたいこともあるのですが、今日はあえて、月曜日(7月22日)にあった「土用の丑の日」に関連して、海洋生態系保護の緊急性とタイムリーな情報発信の重要性について書きたいと思います。

 なぜなら、それぐらいウナギの減少が深刻だからです…。

日本で消費されるウナギの99%が絶滅危惧種

 月曜日にウナギ食べましたか?
 実は、そのウナギ、絶滅危惧種です。

 「えっー!」

 世界の2%足らずの日本の人口ですが、なんと国内だけで世界生産量の70%を超えるウナギを消費しています。そしてその消費されているウナギの実に99%以上が、絶滅危惧種に指定されているという状態なのです。

 その中でも年を通じて消費量が跳ね上がるのが、夏の「土用の丑の日」(今年は7月22日と8月3日の2日あります)。以前は、貴重なものとして大事に食べられていたウナギも、いまやスーパーやレストランチェーン、そしてコンビニでも格安かつ大量に販売されてしまっています。

 その増え続ける需要を満たそうと、世界各地でウナギの乱獲が続けられ、どんどん減ってしまったというわけです。

 このウナギの減少で困っているのはウナギだけではありません。
 老舗のウナギ屋さんも、仕入れ価格の高騰で、薄利多売のウナギ商法を進めるスーパーやレストランチェーンに押されて、閉店の危機だと言います。

絶滅危惧種、みんなで販売すれば怖くない?

 そこで、グリーンピースは大手スーパー5社(イオン、西友、ダイエー、ユニー、イトーヨーカドー)に「土用の丑の日」にあたってウナギの調達方針について聞いてみました。

 こちらがその調査結果。

 スーパーの回答をみると、残念ながら各社とも、ウナギの資源状態の回復に向けた効果的な取り組みを行っていないことがわかります。さらにウナギの食文化や持続可能な海の生態系を重視した調達方針の策定もなく、絶滅危惧種であると知りながら、短期的利益を優先するために販売を継続しているようです。

 「絶滅危惧種、みんなで販売すれば怖くない」という感じです。

タイムリーだからこそニュースになる

 ウナギが減っているのは、水産資源減少を顕著に示す一つの例に過ぎません。たとえウナギを救えたとしても、現状のままでは海洋生態系は悲惨な状態になってしまいます。

 グリーンピースの海洋保護の目的も、ウナギだけを救うことではなく、さまざまな種を守ることで海洋全体の生態系を保護することです。しかし、世界中で大きな話題になっている海洋生態系の破壊についても、まだまだ日本ではあまり知られていません。

 そこでグリーンピースは、普段ニュースになりにくい水産資源減少の話題について、「土用の丑の日」というイベントを使ってニュースにしようと考えたわけです。

 既述したウナギの調達方針を聞く企業へのアンケート。これもタイムリーな話題を提供するということで「土用の丑の日」前の先週中に発表するとともに、農林水産省の記者クラブで発表・説明しました。

 すると、「土用の丑の日」関連のニュースを書こうとしていた記者さんが、タイムリーな記事として発信してくれる確率がググッと高まります。

 結果として、以下のような記事でグリーンピースの調査やコメントが紹介されました(リンクは2013年7月23日現在のものです)。

「絶滅危機の欧州ウナギ、スーパー大手3社が販売」 
(産経新聞 7月21日)

「蒲焼き恋しく、ナスで鶏で… ウナギ高騰、苦肉の策」
(朝日新聞 7月19日)

「不透明なウナギ取引の実態」
(ナショナルジオグラフィック 7月22日)

「ウナギの次はマグロが消える」
(WEDGE 7月22日)

普段からイベントカレンダーを気にしてみる

 「社会問題を多くの人に知ってもらいたい」と思っても、テレビや新聞などでなかなかニュースとして紹介してもらえないことってありますよね。

 そういう時には、そもそもニュースになりそうなイベントや催事を事前にチェックしておいて、自分たちが訴えたい内容と関連付けられないかを考えておくことをお勧めします。

 「どんなイベントがあるのかな?」という方は、例えば、広報担当者が使う「PR手帳」という本を購入してみてはいかがでしょうか。この手帳にはその年にニュースになりそうなイベントや販売促進に使えそうな催事が掲載されています。

「PR手帳 2013―広報・マスコミハンドブック」
(日本パブリック・リレーションズ協会)

 「買うのは…」という方は、以下のサイトに掲載されているような「年間販促カレンダー」を利用すると良いと思います。企業がこのようなカレンダーを販促に利用するように、市民も社会問題のPRに使っていきましょう。

「販売促進・催事カレンダー12ヶ月」
(一般社団法人日本POPサミット協会)

海洋保護のためにあなたにできること

 繰り返しますが、ウナギの減少は本当に深刻です。

 「スーパーがウナギの大量仕入れで価格を抑えようと努力している」というようなニュースを見ると、「絶滅危惧種の大量仕入れ」ってまずいでしょと思いませんか? 売れ残ってしまった絶滅危惧種のウナギも大量に廃棄されてしまうのでしょうか? 

 日本の文化を守りたいと思うからこそ、「土用の丑の日」が国をあげて絶滅危惧種を食べる日になっている現状を変えませんか?あなたにもできることがあります。詳しくは以下のサイトをご覧ください。

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いろんなものが、便利に安価に手に入るようになった現代。
それ自体は悪いことではないけれど、
何もかもが余るほど大量に、
どこの店にでも並んでいなければならないわけではないはず。
大事にしたい季節の行事だからこそ、
ずっと続けていけるような方策を考えたいです。

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佐藤潤一さんプロフィール

さとう じゅんいち グリーンピース・ジャパン事務局長。1977年生まれ。アメリカのコロラド州フォート・ルイス大学在学中に、NGO「リザルツ」の活動に参加し、貧困問題に取り組む。また、メキシコ・チワワ州で1年間先住民族のタラウマラ人と生活をともにし、貧困問題と環境問題の関係を研究。帰国後の2001年、NGO「グリーンピース・ジャパン」のスタッフに。2010年より現職。twitter はこちら→@gpjSato