これから数回に分けて、憲法改正手続法について考えてみましょう。国民投票制度のあり方については、第14回〜第16回で触れているので、今回は、もう少し具体的な問題点を見ていくことにします。
最初に96条の改憲手続をおさらいしておきます。憲法改正は、まず、国会の各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会がこれを発議して国民に提案します。このあたりの手続は国会法の改正によって行われることになります。
次に特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を得ることによって国民に承認され改正が成立します。この手続を規定するものが国民投票法です。国会法の改正とあわせて、憲法改正手続法ということにします。
最後に天皇が、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布します。現在の憲法と一体をなすことが前提ですから、新たに新憲法を制定することはここでは想定されていません。
さて、こうした改憲手続は、法律改正よりも厳格になっています。こうした憲法を硬性憲法といいます。法律改正と同じ手続で改正できる憲法を軟性憲法といいますが、これでは、憲法に反する法律を簡単に作れてしまい(憲法の方を改正すればいいからです)、すべての法規範の中で最高の効力を持つという憲法の最高法規性が失われてしまいます。
つまり、軟性憲法では、国会も含めてすべての国家権力に対する歯止めとしての憲法の存在意義を失わせてしまうことになるのです。日本国憲法は硬性憲法を採用して、よほど積極的かつ説得的な根拠がないと改正してはいけないことにしました。これは憲法制定当時の主権者の意思です。
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