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この人に聞きたい
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松崎菊也さんに聞いた(その1)

たまには時世を笑い飛ばせ
政治、経済、社会から文化、スポーツ、
芸能まで独特の視点で風刺する戯作者の松崎菊也さん。
憲法問題、安倍内閣、そして護憲派への要望などを
2週にわたってお話しいただきます。
松崎優子さん
まつざき・きくや 戯作者
1953年、大分県別府市生まれ。劇団民芸の演出家を経て、85年にコントグループ、キャラバンを結成。日本テレビ系「お笑いスター誕生」での優勝や、NHK「新人演芸コンクール」で最優秀賞を受賞するなどテレビを中心に活躍。88年、社会風刺コントグループ「ザ・ニュースペーパー」に参加。99年独立。
現在、風刺コントの台本を書きつつ政治風刺ライブを展開。
ほかに、『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでコラムを執筆。著書に『一瞬の沈黙』『巷は勘違いに満ちている』『男が捨てられた夜』(いずれも三五館)、『コメディアン』(実業之日本社)、『松崎菊也のひとり天誅!』(毎日新聞社)など。
まずはともあれ「松崎菊也流世相いろはがるた」をご覧下さい。
松崎  もうお正月からけっこう日が経ってしまったけど、まだ1月だからいいかなと思って、今日は「2007年 松崎菊也流 世相いろはがるた」を作ってきました。毎年、ラジオで発表しているんですけど、少し『マガジン9条』用にアレンジしました。憲法改正を声高に言う安倍内閣の今後をはじめ、スポーツ界、芸能界の話題なんかも交えたものなんだけど、発表しちゃっていいですか?
編集部  もちろんです。どうぞ、どうぞ。
松崎  それでは、「い」から順番に。
いぶきも歩けば疑惑に当たる
松崎  昨年末から安倍内閣の閣僚の疑惑がいろいろと噴出しているけど、なかでも伊吹文明文部科学大臣はひどすぎる! 子どもの教育に直接関わる文部科学省のトップがですよ、事務所経費の問題で疑惑を持たれて、しかもあんな開き直りをするなんて、おかしいよね。あんないい加減な大人がいちゃあ、世のお父さんお母さんは子どもを叱ることなんてできませんよ。伊吹大臣以外にも中川昭一自民党政調会長とか、松岡利勝農水相とか、疑惑がボロボロ出てきているけど、改めて安倍総理の人事センスのなさが露呈したよね。だって、「族議員の中の族議員」と言われ、いろんな噂もあった松岡氏を「農水行政に詳しいから」という理由で大臣にするなんてね。「犯罪に詳しいから」という理由で……。
編集部  泥棒を刑事にするようなものですか?
松崎  言うね、あなたも。でも、野党にも民主党の小沢(一郎)代表をはじめ似たような政治資金をめぐる疑惑がありますからね。本来なら安倍政権を追及する恰好のネタなんですけど、自分の党にも疑惑の議員がいるから批判の矛先が鈍いこと。だから自民党からすれば「い いちろうも歩けば疑惑に当たる」になるんでしょうね
論を待たずに、憲法改正
松崎  マガジン9条の読者には説明いりませんね。参院選では憲法改正を争点にするなんて安倍首相は言ってるけど、とにかく「改憲するぞ!」って掛け声だけで、国民への説明は不十分すぎます。さぞかし連立組む公明党も困ってるんじゃないですか。一応(ほんとに一応だけど)、護憲の政党ですからね公明党は。
編集部  民主党も別の意味で困りますよね。
松崎  そうそう、あそこは右から左までの寄せ集め政党だから、憲法が参院選の争点になったらまとまりないのがバレちゃう。それでは困るからと別の争点を作ろうとしているけど、ま、自民も民主もどっちもどっちというのが憲法問題ではよく表れていますね。
 そんじゃ、次からトントンとテンポアップしていきましょうか。
 
反対しても賛成なら
自民党に帰っていいのかい
憎まれっ子 世にはばかる 首領様
ほわいとからーえぐぜんぷしょんって
横文字で説明した気になるなよ政府
ヘタの横文字好き安倍シンゾ〜
飛んでもすぐ落ちるテポドン2号
庁から省へ次は徴兵制
   
松崎  防衛庁の昇格問題も『マガジン9条』読者の関心が、高い話でしょ。庁から省に変わるって話が、いつの間にか自衛隊の海外派遣を今までの付随的任務から本来任務に格上げするってことに摩り替えられていて、しかも野党民主党も「反対する話じゃない」とアッサリ賛成してしまうんだから、まったくねえ…。徴兵制だって、「そんなことはありえない」って自民党の議員たちは今は言っているけど、「徴兵制」という名前じゃない、なんだかカタカナの訳分からない法律を作って、実質的には徴兵制をサラリと導入するなんてこと、ありえますよ。怖い話です。
  リトアニアってどこにあるんだか
世界史習ってないからしらねえだろ高校生
ぬれぞうきんって、雑巾の縫い方も、
家庭科習ってないからしらねえだろ高校生
ルクセンブルクってどこにあんだか
地理習ってないからしらねえだろ高校生
オマーンだってどこにあんだか
地理習ってないからしらねえだろ高校生
松崎  でも、台湾がどこにあるかは、校長先生は知ってるぞ。下見に行ったからな、こないだ(笑)。

割れ鍋に綴じ蓋か?
今年もダメだなジャイアンツ
かたっぱしからひとんちの選手引き抜いた
バチが当たったんだジャイアンツ
   
松崎  ちなみに別バージョンで「割れナベツネに綴じ蓋」っていうのもあります。

   
よんなんの旅費払いなさいよ東京都知事。
タウンミーティングやめるから教育基本法
変えましたってか冗談じゃねえぞ。
連帯責任はないのか文部科学省?
そのまんま東って宮崎だったんだ?
   
松崎  こういうことが統一地方選の焦点になる国なんだって、自戒を込めてね。

   
つかい捨ても議員の宿命だ、佐藤クン
ネコババに佐藤エイサク
   
松崎  お分かりだと思いますが、最初の佐藤は「ゆかり議員」(自民党)で、あとの佐藤は「前福島県知事」ね。

   
泣きっ面に大増税。
楽隠居したくてもできねえ団塊世代
無理に隠居すれば生活費なくなる
   
松崎  今は誰も言わないけど、7月の参院選が終わればね、消費税アップほか増税の話は確実に出てきます。今後は団塊世代の退職ラッシュもあるし、景気がよくなったなんて喜んでる場合じゃないですよ、ほんと。そこんとこよ〜く考えて参院選では投票しないといけません。

馬の耳に念仏、安倍の耳に護憲
松崎  説明の必要ありませんね。

いい子ちゃんになるのは無理がある亀田
能あるタカはハトを無視する
お〜い、まだやるのか魁皇?
悔いを残すなよ〜千代大海
やってません、なにもやってません、
外務省。
   
松崎   そんで、ここから先は不祥事編です。

   
まだやるか松岡
けしからんぞ伊吹
不倫してたんだって?本間
こまったもんだよ山拓
エラいことしてくれたな佐田!
天罰じゃ不二家!
   
松崎   政治家だけじゃないね天罰は。では、続いて後半戦。

あら知らないの、KATUNの亀梨?
おじさんに聞くなよ!
サラサラした髪がかわいいのよ〜、
だからおじさんはどうせ髪がないよ!
昨日の紅白にどうしてKATUNが
出ないの、だからおじさん知らないよ!
松崎   これ、わたくしの本音(笑)。

  悠々自適、国会議員の老後
目には目をイラクの仲間割れ
見て見ぬ振りのブッシュ政権
知らん顔の日本政府
遠慮してるのね、アメリカに。
松崎  で、やっぱり最後は安倍首相で。
ひどいんじゃないの
安倍シンゾ〜。
もしもし? 安倍シンゾ〜?
せめてなんか言えよ、
安倍シンゾ〜。
すぐ外遊で逃げるんだな〜
安倍シンゾ〜。
ん〜、やっぱ秋までもたねえぞ。
憲法は努力目標なんだから、「時代に合わないから変える」なんていう政治家の理屈はおかしいんですよ。
松崎  と、まあ、ざっと「世相かるた」を紹介しましたが、このコーナーは憲法の話をする場所でしたね(笑)。憲法について、わくたし思うのですけどね、憲法9条はもちろん変える必要ありません。だって憲法って「努力目標」なわけで、それを「時代に合わなくなったから変える」なんて政治家が言うのはおかしいですよ。憲法が時代に合わなくなったのではなくて、オマエたちが憲法に合わなくなっただけなんだって! だったら「アメリカと一緒に戦争したい自分たちにとっては9条は都合が悪いので変えたいんですよ」となぜはっきり言わない。
 それから自民党の議員は「自主憲法を制定すべきだ!」なんてよく言うけど、いいものであれば誰が作ったものでもいいわけで、アメリカの押し付けかどうかだなんて関係ありません。この国の政治家はそこが分かってないんですよ。それに自民党を中心にした人たちが自分たち寄りの考え方で作ろうとしている憲法は、「努力目標」にはなり得ないですよ。
編集部  松崎さんは、政治・経済・社会そのほかあらゆるジャンルについてコメントされたり原稿を書かれたりしていますが、9条そのものについてはあまり言及されていないような気がしますが、何か理由があるのですか?
松崎  とても簡潔だもの。加える必要も引く必要も感じないからね。「戦争をしない」「軍隊を持たない」ということが「努力目標」なのです。いいじゃないの。だからいちいち理屈こねることはないということなんですよ。9条を変えないといけないようになし崩し的にしてきたのは歴代内閣であり、政治家であるわけですよね。自民党だけではないですよ。むしろ社会党が「自衛隊は合憲だ」と言ってしまったことは、やはり今から考えるとあまりにも大きな出来事でしたね。
編集部  村山富市総理のもと自民・社会・さきがけで連立政権を作っていたころですよね。
松崎  そう。あのとき、「あ〜ついに言っちゃった。こりゃ、もうダメだなこの国は」って思いましたよ。さっきも言いましたけど、憲法は「努力目標」なんだから、それを「現実路線」だのなんだのと言って、変えてはいけないんですよ。だから自衛隊は違憲だと言い続けるべきだったんですよね。あの変質がこの国がダメになるきっかけでしたね。最後の砦を失ったというか。そういう意味では、今日の状況を作ったのは自民党を中心とする保守勢力であることは間違いないですが、社会党をはじめとする護憲側の責任も大きいですよ。
 あのときのことを今さら言っても仕方ないかもしれないんですけど、実は護憲側に関しては色々と注文があるんですよ。憲法を変えないという意味では私も護憲派で、小泉、安倍と政権が続くなかで9条は絶対変えちゃいかんという気持ちは強まっています。だからこそ、いわゆる護憲派の方々に対しては言いたいことがあるんです。ま、これについては次週じっくり話しましょうか。
つづく・・・
「うまいっ!」と思わずヒザをたたきたくなる「世相いろはがるた」は、
是非、声に出してお読みください。
次回は、「護憲派の方々に言いたいこと」をじっくりお聞きします。
  
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