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2013-07-03up
2013参院選を前に~今、私が言いたいこと~
共産党と社民党は
「憲法のこと」も「原発のこと」も
本当はどうでもいいのではないか?
藤原博
なんてことを書くと、マガ9読者の多くからお叱りを受けるかもしれないが、参院選を約1ヵ月後に控えたいま、本当にそんなことを思ってしまう。と 同時に、「いまさら共産党と社民党のことを書いても仕方ない、か」という諦めもあるが、脱原発・護憲派の私としては、参院選を前に両党にどうしても一言いいたくなってしまうのだ。
私のイライラを端的に言えば「どうして政策も主張もほぼ同じなのに、共産・社民はいつまでたっても選挙で共闘しないのか」ということだ。たとえば、参院選福島選挙区の立候補予定者の顔ぶれを見てほしい(※候補者はこの原稿を書いている時点のもの)。
森雅子(自民党)
金子恵美(民主党)
岩渕友(共産党)
遠藤陽子(社民党)
酒井秀光(幸福実現党)
今回から福島は議席が一つ減り、改選1議席をこの5人で争うことになる。原発という尺度で見れば、推進=自民、幸福、脱原発=民主、共産、社民となる。自民党の森は聞かれれば「自分は原発推進ではない」と言うだろうが、再稼働や輸出を推し進める安倍内閣の現役閣僚なのだから「推進派」としてよいだろう。
ほかでもない福島県なのだから、たとえば「脱原発」という旗印のもと共産、社民、民主が選挙協力をして候補者を一人に絞り込み、原発推進か脱原発かを選挙の争点にすれば、圧倒的に優位と言われる自民党の森に対して相当いい勝負ができるのではないか……。でも、そんな動きは全くないようだ。
党内に原発推進・脱原発の両派を抱える民主党はこの際置くとしても、このまま行けば「脱原発」という全く同じ主張をする共産と社民が、自民党候補の森を相手に分裂して闘い、脱原発の票を奪い合うことになるわけだ。6月6日付『福島民報』1面トップで福島選挙区のことが取り上げられていたが、こんなふうに書かれている。
「共産、社民両党は『原発ゼロ』を、それぞれ訴える。改憲にはともに反対の立場だ。それだけに独自色を打ち出すことに苦慮している。」
そりゃそうだ。両党がとくに重視する原発や憲法において主張が同じなのだから、独自色を出すことなんて無理な話。原発、憲法に限らず社会保障や福祉、経済政策など両党の主張はほぼ同じなのに、なんで票を奪い合うのか、なんで選挙協力ができないのか。
●参院選自民大勝で原発再稼働・改憲の流れが加速
参院選で自民党が勝てば、原発再稼働へ向けた動きは加速するだろう。昨年の衆院選では野党が分裂したおかげで、自民党は連立を組む公明党と合わせて衆院で3分の2以上の議席を確保した。今度の選挙の結果、参院でも自民党を中心とした勢力が3分の2を確保することになれば、ほとぼりが冷めたかのよう に見える「96条改定」をはじめ、改憲の動きも進むだろう。
安倍首相が最近おとなしい(?)ことから「自民党は憲法改定をあきらめた」と言う人もいるが、安倍首相は自分が政権トップにいる間に必ず改憲に向けて動きだすと思う。安倍内閣がいつまで続くかわからないが、自民党は衆院の任期満了まで政権の座に留まるだろうから、共産・社民にとって最も大事なテー マである「憲法」に関しては今後3年間、自民党主導で確実に事が進むことになる。3年もの時間があれば、本丸の9条まで話が進む可能性も大きいし、仮に9条改定が実現しなくとも、その道筋をつけるための時間は十分にある。
公明党に「歯止め役」を期待する人もいるが、私は全くそんなことは思わない。通信傍受法や国旗・国歌法のときの寝返り方を見れば、この党は「与党でいるため」にはどんな妥協もするからだ。
つまり、少なくとも参院選後の約3年間は、現憲法が施行されて以来、もっとも改憲が現実味を帯びる期間といえ、護憲を掲げる共産・社民両党にとって最大の危機が到来することになる。それだけ今度の参院選は今までにない大事な選挙だと思うのだが、選挙協力を模索しない両党にはそんな危機感はないのだろうか。
●2006年に共闘を明言した共産・社民は、この7年間何をしていたのか?
共産党は小泉政権時の2006年1月、憲法改悪反対のための社民党との共闘について話し合いを進めることを明言した。当時の『しんぶん赤旗』(1月24日付)には志位和夫委員長のこんなコメントが載っている。
「いま、国会に議席をもつ政党のなかで、憲法改悪反対と九条擁護をつらぬいている政党は、日本共産党と社会民主党です。この両党の共闘関係が成立するならば、憲法擁護闘争の発展にとって積極的な貢献になることは間違いありません」
これに対して、共闘を持ちかけられた社民党の福島瑞穂党首のコメントはこうだ。
「自分たちには院内外での両党の共闘についてのためらいは一切ありません。障害はありません」
また、同記事には共産党からの社民党への共闘申し入れ文の全文が載っているが、その冒頭にはこんなことが書いてある。
「自民党が、昨年の党大会で『新憲法草案』を決定するなど、憲法九条を焦点とした憲法改定の動きとのたたかいは、新たな重要な段階をむかえています。憲法改悪に反対し、その平和原則にそむくくわだてを許さないという一点で、国民的な共同を広げる努力が、いよいよ大切になっています。」
これ、いまと全く同じ状況ではないのか。あれから7年、共産・社民の共闘について、国政選挙における本格的な動きを私は聞いたことがない。
●「よほどの何か」が起きても自民党の大勝は揺るがない
今度の参院選は、「よほどの何か」が起きない限り自民の大勝は間違いないと言われているが、私は「よほどの何か」が起きても、自民大勝は揺るがないと思っている。特に全国に31ある改選議席が一つの「1人区」では自民党がほぼ独占するのではないかと思う。
仮に「よほどの何か」が「株の大暴落」だとする。「アベノミクスなんてウソっぱちだ。よし自民党には入れないぞ」とAさん、Bさん、Cさんが思ったとしても、たとえば上記の福島選挙区の場合は誰に投票したらいいのか。安倍政権の経済政策に対して民主、共産、社民は批判しているのだから(幸福の主張は知らない)、反自民票は分散するだろう。
あるいは、実際に起きてほしくはないが、「よほどの何か」が「再びの原発事故」だったとする。やはり福島選挙区の例で見た場合、「原発推進の自民と幸福には入れないぞ」とAさん、Bさん、Cさんが思ったとしても、脱原発票は民主、共産、社民へと分散する。
「よほどの何か」が起こったとしても、反自民票が分散することで、特に1人区では、堅い基礎票を持つ自民候補が辛勝する--そんなことになるのではないだろうか。
と、ここまで共産、社民のことを中心に書いてきたが、民主党、みんなの党、生活の党、みどりの風など「脱原発」を掲げる野党はたくさんある。しか し、こちらも報道で知る限りは、民主党とみんなの党が1人区で候補者調整をしたり、生活の党と社民党が一部で協力をしたりしているが、大規模な野党間の選挙協力はない。
東京選挙区から出馬することを表明した山本太郎氏は5月下旬に都内で開かれた集会で、「反TPP」「脱原発」を旗印に野党各党が結集し、「統一比例名簿」を作るべきだと共産党・社民党・生活の党に提案した。しかし、反応は次のとおり。
生活の党・森ゆう子参院議員「私の新潟選挙区はすでに社民、共産、民主、生活と出揃っている。調整はもう不可能。国民の混乱も招く」
共産党・笠井亮衆院議員「比例は政党選挙。結局、選挙が終わったらまたバラバラになるのでは、選んだ政党と選んだ議員が違う中身になる」
社民党・福島みずほ参院議員「政党で選ばれた人間は、その党が無くならない限り別の党に行けない。選挙後、バラバラになろうというのは無理。参院選まで40日を切った。統一名簿を作るというのは、政党を作るのと一緒。簡単に作った党というものは、簡単に壊れる」
どれも、まさしく「正論」である。しかし、山本氏の「どこに票を入れていいかわからない人の目印を作りたい」「(反TPP、脱原発を掲げる議員を)一議席でも減らさないことのためにどうしたらいいか考えてほしい」との言葉に私は大いに共感する(発言はIWJ Independent Web Journalより引用)。
だいたい、憲法をはじめ政策不一致だらけの自民公明両党が「与党でいること」を最大の目標にくっついているのだから、統一比例名簿は無理だとしても、野党側にだってもう少し大規模な選挙協力ができないはずはない。それができないのは、組織の論理やタテマエ、見栄、メンツ、しがらみを優先しているからではないのか。なんだかんだいってそれらを優先するということは、「原発のこと」や「憲法のこと」なんて、本当はどーでもいいのでは? と言われても仕方ないのではないだろうか。
野党各党、なかでも脱原発・護憲ほか政策でほぼ一致する共産・社民両党が「戦後最大の政治の危機なのだから、お互いの面子も組織の論理も捨てて、とにかく共闘しよう」と、どうしてならないのか。本当に不思議である。
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