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2011-04-27up

「マガ9学校 第7回」

2011年4月16日(土)15:00〜17:30
@カタログハウス本社地下2階セミナーホール

今は戦後か戦前か? オウム以降の日本社会を再検証する+3・11以降の日本はどうなる?

森達也さん×保坂展人さん

当初は、阪神淡路大震災とオウム地下鉄サリン事件が起こった1995年から16年が経ち、私たちをとりまく空気や社会がどのように変わってきたか、を検証する企画を考えておりました。しかし3月11日、予定していた公演日の前日に、さらに大きなパラダイム変化を余儀なくされる天災と人災が日本に降りかかってきたのです。ということで一部予定を変更し、今なお現在進行形である地震・津波・原発事故についてもどう向き合うのか、というお話も加えて、進行していきました。

森達也●もり・たつや(映画監督・作家)1998年、オウム真理教の荒木浩を主人公とするドキュメンタリー映画「A」を公開、各国映画祭に出品し、海外でも高い評価を受ける。2001年、続編「A2」が、山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞。著書に『死刑』(朝日出版社)、『ぼくの歌・みんなの歌』(講談社)、『視点をずらす思考術』(講談社現代新書)、『神さまってなに?』(河出書房新社)、『きみが選んだ死刑のスイッチ』(理論社)など多数。近著に「A3」(集英社インターナショナル)がある。

保坂展人●ほさか・のぶと(前衆議院議員)1996年、衆議院議員に初当選し3期務める。国会質問が500回を超える"国会の質問王" として有名だが、盗聴法、共謀罪、裁判員制度、死刑制度についての質問も数多く行ってきた。国会議員在職中は死刑廃止を推進する議員連盟」(会長・亀井静香衆議院議員)の事務局長を務めていた。2010年11月DVD「八ッ場ダムはなぜ止まらないのか」(ほんの木)を制作。ブログ「保坂展人のどこどこ日記」とツイッター@hosakanobutoで連日発信中。

***

 第一部は、保坂展人さんと森達也さんのお二人によるトークセッション。まず、「(世田谷区長選挙への)決意表明を」と森さんが開口一番切り出されました。会場からは「えーっ?」という声が聞かれたほど、急遽決まった立候補について、保坂さんからは「(以前から要請はあったのだけれど)3.11が起きた事によってじっくりと考えた。震災が起きてから、杉並区長と被災地支援を連携してやってきたが、朝議会で決めたら、午後にはもうトラックが南相馬に出ていく、というのを目の当たりにして、自治体のあるべき姿というか役割の大きさが見えてきた。とにかく自分自身もどかしい思いもあり、支援者が推してくれるのであればと出ることを決めた」と翌日の告示を前に保坂さんから報告。(結果はみなさんご存知の通り、脱原発を掲げる区長の誕生ということで、新聞にも大きくとりあげられました。)

 続いて、それぞれが体験した「3.11」当日とその後について個人的な体験が語られました。森さんは「テレビで1週間被災地の映像を見続けた後、軽い鬱状態に入りましたが、友人の映画監督の誘いで、10年ぶりにカメラを持って被災地に入った」と。森監督による作品の完成が待たれます。
 また今回の講演の本題の『A3』を書いた動機についても語られました。『A3』は、昨年11月に出版された麻原彰晃の足跡を辿ったノンフィクション。オウム事件がなぜ起きたのか、それが何もわかっていないのに、裁判は結審し幹部や麻原の死刑は確定してしまいました。死刑囚になってしまったら何も聞く事ができなくなります。森さんは「一刻も早くオウムを消滅させることをこの社会は強く望んでいる。これを一言にすれば、『何でもいいから早く吊せ』ということになる。なぜそんな社会になってしまっているのか、それでいいのか、と森さんは静かに訴えます。ちなみに『A3』が書評で取り上げられることは、ほとんどなかったのだそうです。

 第二部は、冒頭、保坂さんが制作したドキュメント作品『八ッ場ダムはなぜ止まらないのか』を7分ほど観た後、原発問題にも詳しく、森さん、保坂さん両氏とも親しい、鈴木耕さんにも入ってもらって三人によるトークセッションが行われました。例えば、国策で一度決めたものを「止める」ことの難しさ。政権交代をしてもそれは変わらない。そこに横たわる、利権や補助金、関係団体との癒着構造、地元の雇用問題などなど。ダムの建設と原発には非常に似た問題が横たわっています。またメディアとスポンサーには癒着関係があるのか、ないのか、についても議論がなされました。会場に来ていたテレビ朝日の川村晃司さんも飛び入りで発言されました。

 第三部は会場からの質疑応答です。残念ながら保坂さんは世田谷区の街頭演説にもどるためここで離席。森さんと鈴木さんが会場から寄せられた質問に答えました。1996年におきた阪神淡路大震災とオウムサリン事件、そしてその後にじわじわと広がっていった「ある空気」。それから16年、2011年3月11日におこった大震災と大津波という天災、そして福島第一原発事故という人災。今ここでわき出してきている問題は、何なのか、どう立ち向かうのか? 答えはまだ見えませんが、いくつかの重要な視点が提示されました。

 少し盛りだくさんすぎた内容になってしまったため、当初予定されていた裁判員制度については、ほとんど触れることができませんでした。市民による死刑判決も出ており、この件についてはまた改めて、議論の場をもうけたいと思います。

この講演の模様は、後日DVDになります。

参加者の声

アンケートに書いてくださった感想の一部を掲載いたします。(敬称略)

天災→人災→恐怖を感じる→「同調圧力」という話が面白かったです。
(塩田正資)

示唆に富む内容でした。点(今回の震災)にとどまらず、過去から続く日本の構造的問題についての視点を頂きました。
(匿名希望)

いろいろ興味深かったですが、特に今起きていることを歴史の流れの中で見ることができた点が良かったです。ありがとうございました。
(川名真理)

森さんの著書を読んでいてご本人の話を聞いてみたいと思い、参加しました。なんとなく日々感じている社会の中のおかしさについて、少し具体的に頭の中が整理された気がしました。又、保坂さんとの対談によってよりそれが深まったと思います。
(匿名希望)

聞くこと、見ること、考えることを通して有意義な時間を過ごせました。
(佐々木隆文)

知らないことが知れて良かった。森さんの大事件・事故後にあらわれる"同調圧力"のこと、"思考停止"のことや、保坂さんの死刑問題をめぐる話、鈴木さんの東電とメディアの癒着に関する話が、特に興味深かったです。3月いっぱいは、私もメディアの連日の報道で、ウツ状態でした。今改めて、落ち着いて今回のこと、今後のことを考えたいという思いが強くなっています。
(匿名希望)

改めてオウムの事件について振り返ることの重要性を感じた。あの事件は一体何だったのか、その後社会はどう変化していったのか、これは「あの時の」ものではなく、今とつながっているのだ、という認識で考えていきたい。
(川端康正)

今回の震災で、既存の大手メディアの報道限界や政、官、学を巻き込んだ原子力産業の負の部分が露呈した。そうした事を全て含んで指摘して頂けた会だった。またオウム事件から死刑賛否に対する日本人の妙な連帯感、忘却観を改めて考えさせられた。
(匿名希望)

少し前、日本人の「もったいない」精神が美徳として海外から評価されたことがありました。しかし、その「もったいない」がともすれば惰性につながるということにこの講座を通して気づかされました。今あるものにしがみつくことで未来を失ってしまう可能性について真剣に考えるべきだと思います。
(匿名希望)

震災後の自粛ムードにも、メディアから流される説教くさいメッセージにも違和感を持っていましたが、その原因が見えてきたと思います。こんな同調圧力や原発についてくりかえされる「安全」な言葉も信用できない、と思いました。来て良かったです。
(匿名希望)

テーマが多すぎたかもしれません。震災が起きたため仕方なかったと思いますが。もう少し一つのテーマをじっくり聞きたかったから。でもとてもおもしろく、時間があっという間でした。
(匿名希望)

3.11震災後、原発のことも含めていろいろな考え方を聞きたかったので、タイムリーでした。
(遠藤知美)

『A3』とも共通すると思ったのですが、3.11後の社会の変化の行き先がどうなるのか気になります。このテーマで今後も森さんの発言を楽しみにしています。保坂さんのご活躍、期待しています。
(匿名希望)

今日のテーマを語るには、2時間半ではあまりにも少なすぎます。24時間ぐらいのイベントで、多角的に語る必要があるのではないかと思います。今日の講座は、それはそれで意味のある場であったと思いますが。
(匿名希望)

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