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Kanataの「コスタリカ通信」#004 コスタリカの女性省

Kanata 大学を休学して2010年2月から1年の予定でコスタリカに滞在。日本の大学では国際学部に所属し、戦後日本の国際関係を中心に勉強をしている。大学の有志と憲法9条を考えるフリーペーパー「Piece of peace」を作成し3000部配布した。

コスタリカ地図

 もう3月もそろそろ終わりに近づいていますが、わたしが語学クラスを受講しているコスタリカ大学では3月から新年度がスタートしました。それまで、品数が少なかった食堂のメニューが充実したり、図書館が遅くまで開いているようになったりとだいぶ変化がありました。構内にいる学生も一気に増えて、最初の1週間はコンサートなども行われていました。
 先日、初めてこちらの映画館に行ってきました。日本もそうですが、こちらも水曜日はとても安く映画を観ることができて、2人で観に行けば1人の値段です。わたしが行った映画館では椅子が揺り椅子のようになっていて驚きました。映画館でやっていたのは、ハリウッドのディズニー映画『Alicia en el país de Maravilla(アリス・イン・ワンダーランド)』で、ジョニー・デップが出ている3D映画です。映画自体はほとんど言葉が分からずあまり理解できなかったのですが、ちょっとしたシーンでも面白ければ大爆笑し、映画が終わったらほとんどの人がエンドロールを観ずに帰っていく、こちらの人たちの様子が分かって面白かったです。

フィエスタが行われているパルケ・ナシオナル(国立公園)の様子。

 また、週末にちょっとしたフィエスタが街の中心部のいくつかの公園で催されていたので行ってきました。こちらの人たちがココナッツから作ったアクセサリーや伝統的なネルドリップの道具などの工芸品を売っていたり、子どもたちのための大きな遊具が設置されていたり、音楽が演奏されていたり、そのそばでサルサを踊っている人達がいたりしました。年末の大きなカーニバルの時に使う衣装も飾ってあって、とても華やかでした。

子どもたちのための大きな遊具。すぐ隣では新体操の発表が行われていた。

 先回のコラムで少し触れた女性省について書きたいと思います。2年前のスタディツアーでの訪問で女性省の方にもお話を伺う機会がありました。
 10年ほど前に女性省として創設され、女性と男性が平等な権利を行使することができる社会にしていくことをミッションとしています。おもに、国民の半分いる女性の社会進出や女性への意識の変革のために活動をしています。

年末に行われるカーニバルの衣装のひとつ。とても華やか。

 まだまだ男性権威主義の思想が強く残る中南米において、コスタリカでは国教としてカトリックがあるため、ほとんどの中絶が認められていないということもあり、父親のいない子どもが多くいるそうです。2002年に生まれた新生児のうち、約50%が婚外子であったという統計もあるそうです。この状況を改善するために2001年制定されたのが、責任親権法と呼ばれるものです。認知をしない父親と話し合いを行わせ、それでも解決しない場合は国費でDNA鑑定を行い、子どもに名字と養育費を与える事を定めた法律です。ラテンアメリカにおいて初めての、子どもに必ず父親と母親を持たせるためのものですが、申請に対してなかなか調査が進まないことや、申請をすることで暴力をふるわれることを恐れた女性が申請しづらいことなどが問題として存在するようです。2年前に女性省を訪問した際には、FTA(自由貿易協定)が認められたことでさらに拡大する格差により被害を受けるのは女性であると考えているようでした。
 第1回のコラムでも触れましたが、5年ほど前の女性国会議員比率の比較についての新聞記事で、上位10位以内にコスタリカが入っていると書かれていたように国会議員の女性の比率が高いです。具体的には今回2月に行われた選挙では、総議員57名のうち22名が女性で、約39%が女性議員です。列国議会同盟によれば、この割合は184カ国中10位に位置します。これは、比例代表制を採用している国会や各種議員選挙において候補者の4割以上を女性にしなければならない制度が存在していることが影響しています。このため国民の意識によって女性が選ばれているとは言えないかもしれませんが、この制度により女性議員が増えることで、女性が社会に認められていくための意識の変革につなげていくことも大きな目的のようです。

音楽も演奏されていて、ここにも多くの人が集まっていた。

 責任親権法のほかにも女性省の働きで、1996年に制定された反DV法や企業に対して働く女性社員の割合を評価し認証を与える制度など、制度としては充実してきていると言えるかもしれませんが、本当に変革が必要なのは国民の意識のようです。女性の権利を認める社会をつくるためには男性の意識の変革に加え、女性の意識の変革が特に重要だと女性省の方はおっしゃっていました。今回の女性大統領の誕生がそのまま家庭や社会の意識変革につながるというのはなかなか難しいかもしれませんが、少しずつでもこの国が変わっていることの表れなのかもしれません。

 バスの乗り方も少しずつ覚えてきたのですが、バス停で待っていても「乗るぞ!」という主張をしなければ通り過ぎられてしまうので、先日もお金を用意して財布に目をやっている瞬間にバスが行ってしまいました。まだまだ慣れないことも多くありますが、もうすぐでこちらに着いてから2カ月経つのでもう少しうまくバスに乗れるようになりたいと思うこのごろです。 では、また! ¡Hasta luego!

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ちなみに、文中にあった女性国会議員比率調査、
日本は7.1%で98位だったそう。
「男性権威主義の思想が強く残る」のは、
中南米だけではない?
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