【スタッフコラム】
福島原発さいたま訴訟報告(7)
福島原発さいたま訴訟を支援する会
北浦恵美
福島原発さいたま訴訟、次回期日は4月13日午後3時から、第10回目の期日が開かれます。
1月27日の第9回期日では、皆様のおかげで傍聴席がほぼ満席となりました。本当にありがとうございました。
第9回期日では、東電設計(株)が2008年4月に作成した、福島第一原発における15m超の津波高を予測した検討結果を弁護団が入手し、本裁判で証拠提出しました。「津波は予測不可能だった」と言い張る東電が提出を拒み、これまで公開されていなかった文書です。
この文書をもとに原告弁護団は、震災の3年前に、東電側が福島第一原発での15m超の津波と非常用電源等の水没を予測し、「津波対策は不可避」と認識していたにもかかわらず対策を怠ってきたこと、国も適切に監督権限を行使しなかったことを、厳しく追及しました。
最近の原発関連裁判で、私たちを勇気づける判決が続けて出されました。
2月18日には、福島原発事故で福島県郡山市から京都市内に自主避難した家族が、仕事を失った上に精神疾患を発症したとして、東電を相手どった損害賠償請求訴訟で、京都地裁(三木昌之裁判長)は、計約3,000万円の支払いを東電に命じました。「自主避難者」に対する東電の賠償責任が認められた初めての判決です。
そして、3月9日には大津地裁が、高浜原発3、4号機について、関西電力に運転停止を命じる仮処分の決定を下しました。
事故の災禍の甚大さに真撃に向き合うことを求め、原因究明が未だなされていないのに、安全対策が十分になされたとは言い難い、とし、原因究明を徹底的に行うことが不可欠と指摘しました。判決文は言います。
福島第一原子力発電所事故によって我が国にもたらされた災禍は、甚大であり、原子力発電所の持つ危険性が具体化した。(中略)単に発電の効率性をもって、これらの甚大な災禍と引き換えにすべき事情であるとは言い難い。
(中略)福島第一原子力発電所事故の原因究明は、建屋内での調査が進んでおらず、今なお道半ばの状況であり、津波を主たる原因として特定し得たとしてよいのかも不明である。
その災禍の甚大さに真撃に向き合い、二度と同様の事故発生を防ぐとの見地から安全確保対策を講ずるには、原因究明を徹底的に行うことが不可欠である。(中略)災害が起こる度に『想定を超える』災害であったと繰り返されてきた過ちに真撃に向き合うならば(中略)、対策の見落としにより過酷事故が生じたとしても、致命的な状態に陥らないようにすることができるとの思想に立って、新規制基準を策定すべきものと考える。債務者の保全段階における主張及び疎明の程度では、新規制基準及び本件各原発に係る設置変更許可が、直ちに公共の安寧の基礎となると考えることをためらわざるを得ない。
翻って、原発事故発生から5年が経ち、国や東電は、事故の被害を過小評価することに躍起になっているように見えます。
未曾有の原発事故による被害は、一人ひとりの被害者の人生を大きく狂わせ、今なお苦しめています。裁判所と国や東電がこの被害に真摯に向き合うことを求めます。そして私たち自身も。
毎回の裁判の傍聴にぜひご参加ください。満席の傍聴席が、原告と弁護団を勇気づけます。
次回期日は4月13日(水)午後3時からです。どうぞ皆様、傍聴に足をお運びくださいますようお願いいたします。
最後に、「政府は、原発避難者を消滅させようとしている」。この現状を鋭く指摘した2冊の本を紹介します。
●『原発棄民 フクシマ5年後の真実』日野行介著(毎日新聞出版)
●『ルポ 母子避難――消されゆく原発事故被害者』吉田 千亜著(岩波新書)
どちらも避難者の声をすくいあげ、可視化させています。ぜひご一読ください。
〈福島原発さいたま訴訟第10回口頭弁論及び報告集会〉
とき:4月13日(水) 午後3時開廷 さいたま地裁101号法廷
※傍聴券が配られる予定です。午後2時半までにさいたま地裁B棟前においでください。※裁判終了後弁護団主催の報告集会があります。
場所:埼玉総合法律事務所3階会議室
内容:口頭弁論期日の説明、原告側の主張の概要
〈これまでの関連コラム〉
→ 2017/03/15 福島原発さいたま訴訟報告(10)
→ 2016/08/03 福島原発さいたま訴訟報告(9)
→ 2016/04/06 福島原発さいたま訴訟報告(8)
→ 2016/04/06 福島原発さいたま訴訟報告(7)
→ 2016/01/20 福島原発さいたま訴訟報告(6)
→ 2015/11/18 福島原発さいたま訴訟報告(5)
→ 2015/06/24 福島原発さいたま訴訟報告(4)
→ 2015/06/24 福島原発さいたま訴訟報告(3)
→ 2015/04/15 福島原発さいたま訴訟報告(2)
→ 2015/02/11 福島原発さいたま訴訟報告(1)
→ 2014/11/26 福島原発さいたま訴訟に思うこと
→ 2014/05/28 福島原発さいたま訴訟、第1回期日とその支援のこと