- 特別企画 -

【スタッフコラム】

福島原発さいたま訴訟報告(5)

福島原発さいたま訴訟を支援する会
北浦恵美

 これまでずっと報告させていただいている福島原発さいたま訴訟ですが、次回は11月25日午後3時から、第8回目の期日が開かれます。
 8月25日には、区域外避難の方を中心に7世帯22人の方が追加提訴をしました。これまでと合わせて原告は20世帯68人となりました。

 子ども2人といわき市から自主避難されてきた若いお母さんは「やり場のない怒りと悔しさを抱え、母子で避難して日々の暮らしを支えるのに必死という、生活に追われた月日を過ごしてきました。ある日、張り詰めていた糸が切れたように、一歩も外へ出られないようになってしまいました。それから様々な出会いがあり、私は何も悪いことはしていない、と思えるようになり、このやり場のない怒りと悔しさを訴えるために、訴訟に参加することにしました」と話します。

 郡山市から家族6人で自主避難されているSさんも、こう言います。「最初は国がなんとかしてくれる、国を信じよう、と思っていました。しかし一向に事態は進展しません。国は『話を聞いた』と言うけれど、それはあくまで『聞いた』だけ。政策に反映されないし、相手にもされません。『除染したから安全』というけれど、放射線量はぜんぜん下がっていない。何が起こるかわからない今の福島で暮らすことは不可能。たとえ力及ばず負けたとしても、裁判を通して声を上げるしかない、と覚悟を決めました」。

 福島県と国は自主避難者への支援打ち切りを相次いで表明しています。やり場のない怒りと苦しい状況が厳しさを増すなかで、新たに訴訟に参加された方々の心の底からの叫びに揺さぶられます。
 日々の暮らしの中で、否応なく向き合わされる苦しい避難の現実。これまでの暮らしを突然奪われた苦しみ、悔しさ、理不尽さ。言葉で言い尽くすことはできないでしょう。それだけの被害をもたらした原発事故。全ての被害者に、まず、正当な賠償をすること、それさえも行われていない現状であることを、私たちは決して許してはならない。

 次回期日では、追加提訴をされた原告の方の陳述が予定されています。ぜひ、皆様、傍聴においでください。

◆◆◆

 9月2日の第7回期日においては、東電の過失の審理の必要性を指摘する第14準備書面と、国が国内外の事故事例に全く学ぶことなく、漫然と安全神話を維持し続けた怠慢が今回の事故を引き起こした責任を厳しく追及する第15準備書面が陳述されました。
 また、求釈明で、東電が福島原発の津波を15.7m と予想していた事実に関する資料の提出を求めました。

 東電は、これまで「無過失責任」で賠償をするのだからとして、原告側からの数々の東電の過失を指摘する主張に対してほとんど認否をしてきていません。
 しかし、原発の安全性よりも、自らの利益・効率のみを優先させてきた国と東電がこの事故を引き起こしたことから、その「故意過失」の程度は、賠償額の算定にも大きく影響を及ぼすものです。この点についても原告弁護団が法廷の場で厳しく追及しました。これらに対し、東電は「現時点では資料の提出は必要ない」、過失の主張についても「必要だと判断した時点で主張をする場合もある」などと、のらりくらりの回答をしてきました。

 このような東電の態度を許してはならないはずの裁判長は、「では、次回を」とするのみで、疑問を感じざるを得ない訴訟指揮でした。他県の訴訟でも、東電は最後になって過失の反論の主張をしてきたということですが、裁判長にはそのようなことを許さない真摯な訴訟指揮をとることが求められます。

 続けて行われた報告集会では、傍聴に参加された方々から、「東電や国の責任は明らかなのに」ということから様々な質問があり、弁護団からは、これまでもこれからも、津波が予見できたこと、事故を防ぐ対策を怠っていたことなどを厳しく追及していくことについて丁寧に説明があり、理解が深まりました。

 次回期日は、
・11月25日(水)午後3時~

 次々回も決まっています。
・1月27日(水)午後3時~

 どうぞよろしくお願いいたします。


〈福島原発さいたま訴訟第7回口頭弁論及び報告集会〉

とき:11月25日(水) 午後3時開廷  さいたま地裁101号法廷

追加提訴された原告の方の陳述が予定されています。ぜひ傍聴にご参加ください! 
※傍聴券が配られる予定です。午後2時半までにさいたま地裁B棟前においでください。

※裁判終了後、弁護団主催の報告集会があります。
場所:埼玉総合法律事務所3階会議室
内容:口頭弁論期日の説明、原告側の主張の概要

〈これまでの関連コラム〉
→ 2017/03/15 福島原発さいたま訴訟報告(10)
→ 2016/08/03 福島原発さいたま訴訟報告(9)
→ 2016/04/06 福島原発さいたま訴訟報告(8)
→ 2016/04/06 福島原発さいたま訴訟報告(7)
→ 2016/01/20 福島原発さいたま訴訟報告(6)
→ 2015/08/26 福島原発さいたま訴訟報告(5)
→ 2015/06/24 福島原発さいたま訴訟報告(4)
→ 2015/06/24 福島原発さいたま訴訟報告(3)
→ 2015/04/15 福島原発さいたま訴訟報告(2)
→ 2015/02/11 福島原発さいたま訴訟報告(1)
→ 2014/11/26 福島原発さいたま訴訟に思うこと
→ 2014/05/28 福島原発さいたま訴訟、第1回期日とその支援のこと

 

  

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