【スタッフコラム】
福島原発さいたま訴訟報告(4)
福島原発さいたま訴訟を支援する会
北浦恵美
福島原発さいたま訴訟は、第1回期日から1年が経ち、これまで6回の口頭弁論期日が行われました。次回は、9月2日午後2時半から、第7回目の期日が開かれます。
この間、裁判を支援する会として傍聴席を満席にする、という第一の役割を果たすべく、傍聴を呼びかけさせていただいています。皆様のご協力のおかげで、なんとか毎回、法廷の傍聴人席は、ほぼいっぱいになっています。
どうして、傍聴人席がいっぱいになることにこだわるのか、満席の法廷に行かれたことがある方はお分かりになるでしょうか。傍聴人で埋め尽くされた法廷は、本当に緊張した重い空気が流れ、普段の法廷とは全く異なる場となります。張り詰めた空気が肌に感じられます。そこで語られる、突然暮らしを奪われた原告の苦しみ、悲しみ、怒り。東電と国の責任を追及する原告側弁護団。それを無表情で受ける東電・国の代理人たち。そして、真ん中の高い位置に座る裁判官たち。傍聴人はそれらをすべて見て、そして、裁判所が自らの正義に誠実に向き合うことを求めます。裁判所は、きっとその無言の力を感じているはずです。
この1年の間、自主避難者に対する住宅の無償提供の打ち切り方針、「帰宅困難区域」を除く地域の避難指示解除方針、避難慰謝料の打ち切り方針など、政府は相次ぐ被害者切り捨て方針を発表。さらに、川内原発も再稼働されてしまいました。
すべて決して許されることではありません。未曾有の福島原発事故はいまだ収束さえしておらず、事故の原因究明も責任追及も未だなされていません。それなのに、時だけが過ぎていき、政府は事故を忘れたかのようです。原発事故と放射能汚染によって命を奪われ、ふるさとを、仕事を奪われ、避難を強いられている皆さんの怒りはいかばかりでしょうか。避難者の方々は、今、怒りと悲しみとこれからの生活への不安・困窮に襲われています。
そんな中、裁判に立ち上がった13世帯46人の方々と弁護団の闘いは、一縷の希望を与えてくれます。法廷では国や東電と対等に闘い、一人ひとりの被害に向き合い、「こんなことが許されていいはずはない」という当たり前のことを訴え、事故の責任を追及する丁寧な主張を積み重ねています。万が一にも災害を起こさないことを求められるはずの原発の安全対策を怠り、その結果、取り返しのつかない原発災害を引き起こしたこと。裁判では、国と東電らの原発事故に対する極めて重大な責任を一つひとつ丁寧に論証しています。
8月25日には、第3次の追加提訴が行われ、原告がさらに増えました。福島の事故によって埼玉に避難をされている方は、5500名を超えると報告されています。この訴訟のことを少しでも多くの方に知っていただき、共に、おかしなことはおかしい、と声を上げていければ、と思います。
第6回期日においては、東電が津波予想をわざと低く設定していた欺瞞について論証する力のこもった第11・12準備書面と、東電が電源喪失を防ぐ対策(SBO対策)を怠っていたことを指摘する第13準備書面が陳述されました。
東電は福島原発で想定される津波を5~6mとし、「今回のような大津波は予見できなかった」と主張しています。しかし、そんなことが事実ではないことは、他の裁判や福島原発告訴団の強制起訴に至るまでの審議のなかでも、どんどん明らかにされてきています。1997年の「太平洋沿岸部地震津波防災計画手法調査報告書」の知見によれば、7~14mの津波を想定すべきであったのに、東電は、様々な詭弁を弄して新しい知見を排除し、低い津波想定にとどめました。そのような高い津波を想定すると対策に大変な費用がかかるためであった、と弁護団は指摘しています。費用を縮小させることを多くの人命より優先させ、自らが作り上げた安全神話に自らを縛りつけていた東電と国の無責任さがこの事故を引き起こしたのは明らかです。
この裁判後に行われた報告集会では、傍聴に参加された母子避難を強いられている方が心境を話してくださいました。第3次の追加提訴に加わろうとされている方です。
◆◆◆
最初はとにかく忘れたいと思って、考えないようにしていた。避難する、しないの意見の食い違いから、うまくいかなくなり離婚。外にも出られなくなった。でも、支援してくれる方やいろんな方の話を聞いて、私は何も悪いことしていない。黙っていちゃいけない。子どもたちを守るために声をあげていこう。そう思って、お話しすることを始めました。◆◆◆
子どもたちを守るために、と語られる言葉の一つひとつが、苦しくつらい経験の重みを持って心に迫りました。この裁判が被害を受けた方々への力となれたら、と願います。
次回期日は、9月2日(水)午後2時半からです。
※次回以降の期日も決まりました。
・11月25日(水)午後3時~
・2016年1月27日(水)午後3時~
福島原発さいたま訴訟 第7回
口頭弁論及び報告集会&支援する会年次総会
とき:9月2日(水) 午後2時半開廷 さいたま地裁101号法廷
ぜひ傍聴にご参加ください!
※傍聴券が配られる予定です。2時までにさいたま地裁B棟前においでください。※裁判終了後、弁護団主催の報告集会と結成後1年を迎えた支援する会の年次総会があります。
場所:埼玉総合法律事務所3階会議室
内容:口頭弁論期日の説明、原告側の主張の概要★支援する会年次総会
昨年6月の第1回期日に支援する会を結成してから早1年。報告集会と合わせて、支援する会の年次総会を行います。1年間の経過報告、会計報告、これからの活動方針について話し合います。ぜひ、ご参加ください。
〈これまでの関連コラム〉
→ 2017/03/15 福島原発さいたま訴訟報告(10)
→ 2016/08/03 福島原発さいたま訴訟報告(9)
→ 2016/04/06 福島原発さいたま訴訟報告(8)
→ 2016/04/06 福島原発さいたま訴訟報告(7)
→ 2016/01/20 福島原発さいたま訴訟報告(6)
→ 2015/11/18 福島原発さいたま訴訟報告(5)
→ 2015/08/26 福島原発さいたま訴訟報告(4)
→ 2015/06/24 福島原発さいたま訴訟報告(3)
→ 2015/04/15 福島原発さいたま訴訟報告(2)
→ 2015/02/11 福島原発さいたま訴訟報告(1)
→ 2014/11/26 福島原発さいたま訴訟に思うこと
→ 2014/05/28 福島原発さいたま訴訟、第1回期日とその支援のこと